2ー32【湯船の女神は自己中で1】
◇湯船の女神は自己中で1◇アイシア視点
今頃、イエシアス様とウィンスタリア様が向かっているはず。
あたしたちがこうしていて、良いのだろうか。
カポーン――
「……はぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」
豪快な、尚且つ高齢男性のような声が反響する。
そんな声を上げる女神、アイズレーン。
あたしが近い将来、成るはずだった……【豊穣の女神】。
「凄く豪快ですね、貸し切りだからいいですけど」
同じ湯船の中で、そんな言葉をかけるあたし。
そして天井を見上げて気の緩んだ声を出すのが、アイズレーン……アイズさんだ。
「なら言うんじゃないわよ……滅入るじゃない、やる気が」
何に対してのやる気なのだろう。
今日だって、基本的にだらけていたし、食べて寝て、笑って寝て、こうしてお風呂でくつろいでいる……なんて幸せなのだろうか。
「行かなくてよかったんですか?」
「どこに〜?」
分かってて聞き返しているんだろうけど、いやらしいんだから。
視線も合わせようとしないし。
「他の女神様の所です。お三方、集まっている頃ですけど」
アイズさんも、他の二人……イエシアス様とウィンスタリア様の二人と同じ場所にいた。知らないはずがないのに、どうしてこんな行動をしているんだろう。
「あっそ。あたしは別にいなくていいのよ、それに、アイシアだってここにいるじゃない」
「誰かさんに無理やり首根っこを掴まれて阻止されたので」
「誰でしょね〜」
誰でしょうね、本当に。
冗談を言っても受け流す、誤魔化す、冗談で返す。
行きたくなかった理由があるとすれば、仲がよろしく無いイエシアス様だけど……よく考えたら【四神教会】では普通に一緒にいるしなぁ。
話す内容だとしたら……
「アイシア」
「……え、あ、はい?」
考えようとした矢先、その紫の瞳があたしを射抜いた。
ゾッとするような圧力が込められた、異様な雰囲気を乗せた視線。
まだ返事をしただけなのに、喉がゴクリと鳴ってしまった。
「あんたは、全力でオルディアナをやっときなさい。下手にあたしたちと同じ行動をしていたら、あたしたちのような擬物になっちゃうわよ?」
「それって、どうい――」
ザバァァァァ……ン。
「う意味……げほっ、げほっ!」
子供のような行いに、あたしは怒りよりも先に呆れが先行した。
びしょ濡れの髪、顔もお湯で濡れて、口の中にまで入ってしまった。
「どういう意味も何も、毒されるって事よ。それでなくてもあんた、あたしに成ろうとした前科があるんだからね」
「……なんですか、それ」
前科って、確か犯罪歴の事だったわよね。
幼い頃に、ミオとクラウさんが話していた記憶がある。
あたしがやろうとした事って、犯罪だったの……?
ジト目で睨むあたしに、アイズさんは榛色の髪に染み込んだ水分を絞り出しながら言う。
「この世界で誕生した神は、唯一の可能性を秘めた存在なのよ。だからあたしたち……主神に創られた神と一緒にいたら、思想まで偏っちゃうわ。話し合いの場なら尚更ね」
「!……だから、あたしを連れ出して?」
「まぁ別に、そこまで配慮する必要は感じられないんだけど、一応ね」
それで自分も話を聞けないとなれば、後でゴネませんか?
特にイエシアス様あたりに、突っかかりそうで……止めるのは、絶賛あたしなんですけど。




