2ー24【恋人でも幼馴染でもない私3】
◇恋人でも幼馴染でもない私3◇セリス視点
食事を終えるタイミングで、ようやくゼクスが目を覚ましてくれた。
喉が渇いて声がカサカサで、ミオが水を飲ませてくれている。
そして飲み終えたゼクスはミオに。
「……ミオが来てくれるとは、思ってなかったよ……」
「何いってんだよ、来るさ。仲間だろ?」
小さな声のゼクスに、ミオは優しく笑った。
本当にそう思ってくれているのが伝わる。労りの心。
そんな優しい言葉をくれたミオに、ゼクスは苦しそうに。
「殿下を、守ってくれ……ミオ」
しかしミオは、呆れたように。
「馬鹿な事を言ってる暇があれば、早く魔力を回復させるんだ。セリスを守る究極は、俺なんかじゃなくてあんたたち……だろ?」
その言葉に、ゼクスが拳を握る。
悔しそうに、その拳で目元を隠し。
「ち、くしょう……俺が、ついていながら……っ、ぐ、ぅうっ……」
私にも来る言葉だった。
私を守る究極……【帝国精鋭部隊】。
だけど、それはひっくり返されたに等しい。
帝都に残った少ないメンバーに、【アルテア】に在中しているメンバー。
彼らにどう伝えればいい。私は、彼らに何をしてやれる。
「……」
だけど、今確かに出来る事がある。
目の前の部下に、心の底から感謝する事だ。
憚らず涙を見せるゼクスの手を、私は握った。
「でん……か?」
「ゼクス、貴方が悔やむ事はないわ……貴方は私を守ってくれた。背を撃たれても、能力を使う事を止めず、必死に私をここまで連れてきてくれた。感謝しているわ……ありがとう、ゼクス・ファルゼラシィ……私の、頼りになる臣下」
握る力が強くなる。
不甲斐なさ、歯痒さ、無力感。
たった一日、たった一瞬で味わった、私たちの敗北。
「でも俺は、殿下に悲しい思いを……あの時の陛下の考えだって、俺じゃなくてロイドさんがついていれば!」
そんな事はない。
あの時、ゼクスでなければ帝都を脱出は出来なかったはず。
「違うわ。貴方の【瞬光】があったから、私は今ここにいられるの」
皆がいてくれれば乗り越えられる。
「私と共にいてくれたゼクスも、【アルテア】で待ってくれているライネもロイドも、帝都に残されているユキナリも……そして守ってくれているであろう、レデラとルビンも」
レデラ・パラデーサとルビン・フォルナ。
【帝国精鋭部隊・カルマ】のメンバーで、ユキナリを守ってくれているはず。
ここからは、皆で強くなりましょう、私たち……皆で。
「殿下……俺、強く……なります。殿下を守る為に、強く、強く!」
「ええ、そうよね……私も、強くなるわ……もっと!」
そうよ、ここからまた走り出せばいい。
父が何を企んでいようと、ミオを始めとした仲間たちがいれば、私も部下たちも……負けない。これ以上は、絶対に――負けない!!
「――よかったな、ライネ」
「え?」
「はい?」
見上げると、立ち上がったミオが何かを持っていた。
機械的で無骨な、遠くと通信できる……端末。
「今の話、しっかり【AROSSA】で聞いてもらった。ライネとロイドさんにも、な」
『……殿下ぁぁぁぁぁ!私、頑張りますぅぅ!絶対に殿下のお役に……うわぁぁぁぁぁあん!』
『おい落ち着け、泣くなライネ……くっ、思いの外ウザいな……』
【AROSSA】に搭載されているスピーカー(音響魔法道具)から聞こえてくる二人の声。
ミオが聞かせてくれていたのね、私とゼクスの会話を、想いを。




