2ー20【帝国、その真意5】
◇帝国、その真意5◇
残されたユキナリと、その母ミリティ・ファルファーレ。
そう言えば……ユキナリの母親も転生者だったな、確か予言が出来るんじゃなかったか?
俺もだいぶ昔に聞いた話だけど、それが確かなら、皇帝にも必要な力のはずだ。
それをセリスも思ったのか、俺に述べる。
「でも……ミリティ……ユキナリのお母様は、【神告】という能力を所持しているわ。昔から、その能力で帝国に助力をしてきた……だから」
やはり、ならばそう簡単には殺さないはずだ。
「簡単には殺さない、か」
それなら、まだ時間に猶予はある。
問題は、その母親の能力だ。予言する能力……今思えば、ユキナリの馬鹿が言っていた“断罪者”も“天使”も、俺とクラウ姉さんの事だったんだろうし。
数々の予言を的中させて来たとなれば、【アルテア】を狙う皇帝の武器にもなる。
セリスは、過去の自分の周辺関係を思い返したのか、情けなさそうに。
「今にして思えば、私はエリアルレーネ様がいたから自由だった。エリアルレーネ様が、父を抑えていてくれたんでしょうね……情けない話だわ、いつか父の代わりに国を纏めるだなんて、馬鹿みたいなっ!」
拳を握り膝を叩く。
その拳に、涙を落として。
「そんな事はない。俺だって、ルーファウスが公国の代表になって、セリスが帝国の代表、そしてシャーロットの奴を見つけてさ、この三人が将来、三国を纏めてくれるって思ってた……今回の件は、俺の見積もりの甘さだな」
「そんな事」
「それに……皇帝が俺に手紙を何十通も寄越していたのは、俺を帝都にこさせないためだったんだよ、きっと」
多分、本当の事だ。
シャーロットはまだ難しいかも知れないが、セリスは近い内に女帝になると、本気で考えていたんだからな。
「まさか、父がそんな考えを……?」
「ああ、俺の性格を予測した……もしくは、既に予言を受けていた?いや、なんにせよ、俺はセリスの味方だ、安心してくれ」
「ミオ……そんな風に、言ってくれるのね」
セリスは、きっと帝国との良好が全てだと思ってたんだろう。
でも俺は組織で見ていない。セリスもルーファウスも、シャーロットもだ。
確かに国ではある。公国代表のルーファウスに、女王国の前女王シャーロット、そして帝国皇女セリスフィア。
その中心に存在する【アルテア】。
だからこそ、俺から三人を見限る事は――決して無い。
「当たり前だ。セリスだって、もう俺の大切な……」
「大切な?」
「――友人だ」
「……ふふっ。そうよね?」
薄っすらと涙を溜めて、セリスは微笑んだ。
そしてその夜は、フレイがゼクスさんを看てくれた事で安心したのか、セリスは泥のように眠った。
因みに俺は一睡もせず、考え事と警備、そして深夜の帝国内を飛び回った。
魔力は充分、体力も平気だ。だがまだその時ではない。
皇帝がユキナリの母親の能力をアテにしているのなら、その息子を処分するとは考え難い。むしろユキナリを利用して、能力を使用させる可能性の方があると思う。
早い内にゼクスさんを【アルテア】に送って、それから帝都へ侵入する。
その前に、まずは小さな事から解決していこう。




