2ー17【帝国、その真意2】
◇帝国、その真意2◇三人称視点
【治療の精霊】フレイウィ・キュア。
【アルテア】の管理者、ミオ・スクルーズの契約精霊であり、現在魔法、もしくは精霊術という形で傷を癒やすことが出来る術を持つ、数少ない存在だ。
数少ない……という理由としては、【アルテア】以外の場所に、回復の力を持つ精霊が存在しているかも知れないからだ。
そんな、今最もセリスが求めていた力を持つ精霊が、目の前に降臨した。
「や。待たせたね」
「フ、フレイウィ・キュア……?どうしてここが、ミオは!?」
白い稲妻となって落下してきたフレイウィ・キュアは、呑気にも眠そうな表情でしゃがむ。背に穴を開けたゼクスを診ながら言う。
「もうすぐ来るよ、近くにいたんだよね実は。だからキュアだけを飛ばしたんだよ、精霊の特徴を活かして、ね」
「精霊の特徴……?」
「そ。あ、ミオには魔力を通じて伝えられてるから大丈夫……安心して、この人はキュアが助けるから」
契約者のミオよりも早く到着したフレイウィ・キュアに、セリスは困惑をしながらも並んでしゃがみ、ゼクスの介抱をする。
「……これ、ミオが言ってた銃ってやつでしょ。凄いね、こんな風に傷になるんだ」
「か、感心してないでっ」
フレイウィ・キュアは「わかってるわかってる」とセリスを宥めつつ、ゼクスの服の背部を魔力で切った。スッと刃物のように綺麗に切れ、傷口が露わになる。
「厄介だよ、矢の傷とはぜんぜん違うし……それに、これは魔力だ」
「魔力!?そ、そんなの……現代医療じゃ敵わないじゃない!!」
セリスは焦っている。
ここは異世界。そもそも現代医療では計り知れないものが山ほどあるのに、だ。
「弾?は取らないとだよね、傷だけならすぐ直せるけど……」
麻酔もなしに、フレイウィ・キュアは傷口をグリッとする。
ゼクスがビクン――と反応するが、声は出ない。
既に感覚が麻痺を始めているのだ、フレイウィ・キュアの魔力によって。
「あーミオ、そろそろ来てくれないとダメだね」
「だ、駄目って!!」
精霊が言う駄目……は、治療を諦めた言葉ではない。
これ以上の進展をするには、どうしても弾丸の摘出が必要という意味だ。
しかしフレイウィ・キュアの説明不足とセリスの焦りから、話は噛み合うことがない。
「ん――来た」
空に虹が走る。雷が閃く。
【極光】と【紫電】の光は、真昼の空で弾けて、そしてセリスの前に降り立つ。
いつもと違う格好、まるでお忍びで何処かを旅していたかのような、そんな格好で。
「悪い、遅れた……」
そう言いながら、ミオ・スクルーズはしゃがみ込んでゼクスの様子を見る。
「ミ、ミオお願い、ゼクスを!」
焦りを隠せなくなったセリスは縋るように。
「分かってる、いいから落ち着けって」
ミオはゆっくりとしながらも、冷静に患部を見て思い出す。
「……そういう事か。傷の具合から考えて、腹部まで到達しているだろうから、位置はここら辺か……都合がいい、魔力反応だ。これなら【感知】で弾丸の位置が割り出せる……」
ミオは直ぐに位置を割り出し、手を当てて調整。
そして一言。
「ちょっと痛いぞゼクスさん!我慢しろよ!!――【無限永劫】!」
一瞬だけ顔を歪めるゼクス。
そしてプッ――と、見えないレベルにまで細く長くされた弾丸が、ゼクスの身体から伸びてきた。ミオはそれをゆっくりと引き抜き、契約精霊フレイウィ・キュアに。
「今だフレイ、一気に治してやれ!!」
「りょーかい、【キュア】!」
待っていたと言うように、フレイウィ・キュアは光を発生させて、その背の傷を癒やす。こうして、ゼクス・ファルゼラシィの命は守られたのだった。




