2ー16【帝国、その真意1】
◇帝国、その真意1◇三人称視点
皇女セリスフィアを抱えて能力を発動する寸前、ゼクスの背に衝撃が走った。
一瞬の衝撃、張り裂けるような痛み。熱を持つ身体……小さな破裂音。
痛みを無視し、ゼクスは【瞬光】を発動した。
何処まで飛べばいい、何処まで逃げれば皇女は安全か。
それだけを考え、無心で能力を使いまくった。
その結果、本来は一週間かかる距離を、ものの数秒で到達した訳だが……
「ゼクスっ!ゼクスっ!!」
倒れる青年に声を掛ける。
父との問題もあるだろう。そこに追い打ちで、信頼できる部下が重症だ……普段は気丈で明るい皇女の瞳に滲む涙、押し寄せる様々な感情で、セリスの情緒は爆発寸前だった。
「……」
意識を手放したのか、ゼクスは動かない。
焦るセリスが揺らすが、その都度出血が増える。
「っ……だ、駄目っ!冷静に、冷静になるのよ……!」
自分の血濡れた手を握り、ドレスをビリビリと破って出血部分を押さえる。
「あまりにも突然過ぎて、私らしくなかった。ごめんゼクス、無駄な血を流させたわ……」
冷静さを取り戻すことが出来れば、セリスは【アルテア】トップに入る知恵の持ち主だ。例え寸前にそれを父に否定されたとしても、培ってきたものは偽物ではない。
「……【AROSSA】起動!」
破ったドレスの下、太腿に巻かれたレザーベルト。
以前は【オリジン・オーブ】を着けていた所だ。
そこには黄色の【AROSSA】が。
セリスはそれを手に取り、今一番連絡をしなければならない人物に向けて、コールをする。
「お願い……早く出てっ」
求めるのは治療。出血を防いで、弾丸を取り出さねばならない。
知恵がなければ無理な事も、その力があれば覆す事が出来る。
『――セリスか?どした急――』
「ミオ!!今直ぐ私のところに来てっ!!」
『だわぁっ、いきなり大声だすな!!ビックリしただろが!』
「どうでもいい!!それより早く……えと、ここは!」
らしくない言動と声の怒気に、ミオも勘付いたのか。
『何があった。今は確か、帝都にいるんだよな?』
「そうよ!だけど違うの、ここがどこだか……分からないわっ!」
ゼクスが【瞬光】で移動した距離を考えれば、近い場所だと思うだろう。だがそこが見当違い。
ここは帝都周辺ではない……ここは。
「……でん、か。ここ、は……中央付近、です……」
「ちゅ、中央!?この一瞬で……あ、そうか。だから魔力の消費が……」
『おいセリスっ、何がなんだか分からないけど、俺は何処へ行けばいいんだ!?』
通話先のミオも多少の予測はできたのか、走っているのだろう息の荒さが感じられた。
「中央のエリア!エリアはエリアでもエリアルレーネ様じゃなくて!」
『分ぁってるわ!!中央だな……【転移】じゃ行けない、でも――丁度いい!!』
「え?」
その意味と、その行動の速さに声を出した。
しかし……セリスが驚いた瞬間に、その雷光は天へ駆け巡り、真昼の空に煌めく【微精霊】が収束され落下。
「――嘘でしょ……??」
セリスの目の前に落ちた稲妻は……白い姿を形作り。
「お待たせ」
空気中の【微精霊】を吸収した、白い精霊がそこに存在した。




