エピローグ1ー2【正式発表2】
◇正式発表2◇
その後も試行錯誤は繰り返され、問題点の洗い出しや意見の交換、それらを取り入れ再設計をし……そうしてとうとう、【AROSSA】第一世代は完成した。
そしてこの場には、ミオとミーティア、そしてセリスとルーファウスが居た。
「もしもし?聞こえる、クラウ」
『バッチリ聞こえるわ、【ルーマ】よりも音質いいわよ』
現在、計七十台目の試作機で通話機能をチェック中である。
通話をするのはミーティア。そして通話口ではクラウが、公国領【スタリーア】から通話をしていた。
「よかった。それじゃあ、【Mスティック】の減りはどう?クラウ」
『ちょっと待って……――うん、前回よりも抑えられてるわ。これなら通話だけでも十時間はいけそうよ』
「通話で十時間はちょっと……」
クラウの例えに苦笑いしながら、ミーティアが対面にいるミオにサインを出す。
オーケーと、成功だと。
その言葉を聞いたセリスが笑っているが、ルーファウスは少し嬉しそうだった。
その結果に――ミオは軽くガッツポーズをし、ミーティアも通話を切った。
そして数分後にクラウが戻ってきて……開口一番は。
「いい感じ?」
と、ミオに問う。
「ああ。これで【ルーマ】に関しても、改良した【Mスティック】にしても万端だよ」
残る問題点も少なくなってきた。
今回の機体にはカメラ搭載はできなかったが、投影魔法の道具を使えば代用は出来ると判断し、将来的には実装すると想定して見送った。
「それじゃあ後は、【Aキューブ】に能力を封じ込める……だけど。どうするの?こう言っては何だけど、これ……ミオにしか出来ないでしょ?」
「そうね、転生者の人たちから能力を奪うわけにもいかないし……ミオ、どうする?」
セリスとミーティアが、心配そうに言う。
「うーん。本当はウィズが居てくれれば、能力解放について相談するんだけど……それも難しいからな。やれる範囲で、少しずつ創っていこうかなって思ってるけど」
【創作】で、擬似能力も創れる事は分かっている。
それを応用すれば、転生の特典ではない、この世界の誰でもが習得できる範囲の能力なら、ミオ一人でも量産は可能だった。
「あーウィズね……この前聞いたけど、【ラウ大陸】?にいるんだっけ。なんでそうなったのよ、いったい」
クラウが疑問を述べる。
それにミーティアが答え。
「二年前……【ステラダ】で私のお父様と戦って、その後に何かあったんでしょうけど……どうすれば【ラウ大陸】まで」
その場にいたセリスも。
「あそこには、えっと誰だっけ転生者の……あーそうだ、コーサルだったわね。彼もいたけど、もしかして彼も一緒なんじゃない?」
三人の女性の言葉に、ルーファウスは考え込むようにして言う。
「【ラウ大陸】は、【サクレー港】から出ても船で一月はかかります。確か……噂では【ラウ大陸】はこの東大陸よりも果てなく広いらしく、そして魔物も非常に強力だと……そう考えれば、どうですかミオ君」
魔物の強さに、距離を考えての問題だ。
「うーん、そうだな。例えば、ダンドルフ・クロスヴァーデンによって、【ラウ大陸】の端っこまで追いやられてたら……どうだ?」
「どうだ……って。どうやって、ですか?」
「……それは知らん」
ミオとルーファウスの会話に、肩を竦める女性陣。
しかしミオは続けて言う。
「だけど、有り得ない話じゃないと思うんだ。アリベルディ・ライグザールは……俺と同じで神域に到達しているらしいし。だから、同じ存在というか……主神に近い存在のウィズを危険視していたとか……でもまぁ、戦ってたのはダンドルフ・クロスヴァーデンなんだけどさ……」
「その二人の間で情報が共有されていたのなら可能でしょうけど」
「父なら、もしかしたらそれを察した可能性も否めないわ……それに、あの場に居た【死葬兵】も、凄い力だったから」
クラウとミーティアが述べる。
「なら有り得るって事だ。前にヨルド・ギルシャが言ってたな……昔にミーティアを傷付けた【リューズ騎士団】の男、そいつがその強力な【死葬兵】だって」
それは、過去にミオが能力――【破壊】で攻撃し、腕を完全消失させた男だ。名を――ザルヴィネ・レイモーン。
「そうね。私の足を……」
ミーティアはしゃがみ、そっと右足に触れる。
ミーティアに重傷を負わせ、死にも等しい思いをさせた男。
ミオは怒りを覚えるも……その仲間である男、レイモンド・コーサルとの約束を思い出す。
「でも、だ。ウィズには、コーサルって名前の赤メッシュがついてるはず……味方とは言い難いけど、現状を考えれば敵でもないと思う。少なくともあの男は、俺と戦うことを望んでたからな」
だから逆に信じられる。
ウィズとあの男が一緒にいるのなら、必ず二人で行動を共にするはずだと。
「だから、俺は待つ。ウィズは必ず【アルテア】に来るさ……【サクレー港】には、【ユニバース】から誰かを派遣して監視はしてもらうけど。基本的にEYE'Sであるセリスたちにはこの【アルテア】に居てもらいたい」
「ええ、そのつもりよ。定期的に帝都に帰らないとだけど……ま、色々考えてるしー」
「?」
セリスの意味深な言葉に疑問と不審感を抱きながらも、ミオは言う。
「ま、まずは【アルテア】の発展と、【AROSSA】の普及を最優先とする。ウィズはその後だ……皆も、協力頼むっ!!」
【アルテア】主要メンバーへ向けて、ミオは頭を下げた。
「ええ、分かってる」
「うん、一緒にね」
「オーケー、頑張りましょう」
「お任せを、お役に立ってみせます」
クラウ、ミーティア、セリス、ルーファウス。
ここにいる女神以外の主要メンバー。
それぞれ思いはあるだろうが、向かうべき場所はミオと同じ。
「まずは【Aキューブ】と【ヌル】の量産。能力を封じ込めるのは俺が……【ヌル】は精霊たちに協力してもらって作成。誕生したばかりの精霊や、迷いの精霊は速やかに保護してくれ。そうしたら、【アセンシオンタワー】からの放送で【アルテア】全体に正式発表をする」
そして、この会議から三日後の正午。
【アセンシオンタワー】からの放送で正式に、この【アルテア】での、【AROSSA】の第一世代が販売される事になる。




