1ー34【反撃の口火1】
◇反撃の口火1◇
搬入の手伝いをしようとしたらネイル嬢に静止され、チェックをするミーティアの手伝いをしようとしたら「駄目よ〜」と軽くあしらわれた……どうして。
だからもう何もしない。別にいじけた訳ではなく、何もしないのが今日の仕事なのだ。
「それにしても、小さい箱だとは思ったけど……数は思いの外あるんだな」
俺の感想にネイル嬢が。
「はい、このサイズの小箱が、計七十三箱あります」
結構だな。
これをミーティアは買い取り、販売する手立てがあると言う事か。
「ネイル様、搬入作業完了したしました!」
「ご苦労さま!全員休憩していてちょうだい。午後からは【スタリーア】に行きますからね」
「「「はっ!!」」」
スパタ家の部下たちだろうが、凄いやる気に満ちている。
公国領である【スタリーア】。そこで次の作業か……防衛組織の着任だったかな。
そう言えばルーファウスが「近々、部隊の人員増加をするつもりです」とか言ってたな……ネイル嬢の部下たちの事だったか。
「働き者だね」
横に立つネイル嬢。
それにしても大きいな、俺と並んでもそう変わらないじゃないか。
「あの時、愚行を犯した父が島流しされ、それでもスパタ家に着いてきてくれた者たちです。頼もしいですよ」
公国の貴族、スパタ家。
ルーファウスを打倒しようと攻めてきたが、当時の当主であるツァンド・スパタ伯爵の無能っぷりときたら、開いた口が塞がらないかと思う程だった。
しかしその娘のネイル嬢は、本当に父娘なのかと疑いたくなる程に有能だった。
「この塔の有用性に気付き、ルーファウスの才を認め、父親に隠れて俺たちに交渉を求めたんだ……この未来は君の手柄だよ、マジで凄いと思う」
「……そ、そんな。わ、私なんてまだまだ」
照れてるな照れるな。
女性としては高身長だが、俺の方がまだ多少デカいからな。
あまり高い視線から言われたことが無いのかも。だから照れてるんだろう。
「ミィオ〜……そんなに女性に近付いて話したら駄目よ?」
ミーティアにグイッ――と引っ張られた。
「ぅおっと。あれ、そんなに近かった?ごめんネイル嬢」
それは失敬を。
ついつい、感覚がおかしくなるんだよな。
「い、いえ。私は平気ですよ、ミーティア様。それよりも、品の確認をお願い出来ますでしょうか」
顔はまだ赤いが、それよりも仕事を優先するネイル嬢。
うむ……出来る女だ。
「そ、そうですね。では拝見させていただきます……ミオも、手伝ってくれる?」
「ん、おう!」
やっと出番だ。
「ではこちらから、開けますね」
「どうぞ」
俺もミーティアの隣に並んで、その小箱を開けるのを見守る。
いったい何が入っているのか……気配からするに、魔法の道具っぽいが。
「……わぁ」
「おお!これって」
ミーティアが開けた小箱の中には、丁寧に布で包まれた結晶が入っていた。
見覚えがある。これはミーティアの片腕、ジルさんや帝国の軍人、ライネ・ゾルタールなどがよく使っていた……【ルーマ】だ。
「【ルーマ】のコア、通信魔法を刻むクリスタルね」
「まさか……こ、この箱全部ってことか!?」
しかも、ライネが使用していた【ルーマ】のコアよりも小さい。
箱の中には、包まれたものが四つ。
全部が同じだとすれば、四の七十三で……二百九十二個!!?
「ティア……まさかこの【ルーマ】のコアを」
俺の視線を受け、ミーティアはそれはもうドヤ顔で。
「ええ。その通りよっ」
可愛いかよ。
この世界の連絡手段というものは、非常に少ない。
大型の【ルーマ】は、エルフ族で一つ、帝国の帝都に一つ。
それ以外にもあるだろうが、小型の物ですら非常に少ないんだ。
それ以外だと、もう早馬や伝書鳩……例外を言うなら、【オリジン・オーブ】を所持する女性たちとウィズだけだ。
「――公国の地下で、この結晶が大量に採掘されまして。ルーファウス様にお伝えしたところ、ミーティア様に交渉してみては、と」
「ルーファウスが……流石だな」
「そうね、そこで思いついたのよ。世界でも非常に少ない連絡手段……それが出来る【ルーマ】を生産すれば、銃器を売り始めたお父様……いえ、【クロスヴァーデン商会】に対抗できるかもって」
なるほど、上手く行けば確かに売れるだろう。
だけど、この結晶を【ルーマ】に加工するの……どうやんの?




