1ー33【気にし過ぎても駄目4】
◇気にし過ぎても駄目4◇
外の【アルテア】の街並み……いや村並み?が活気を見せ始める。
まだ朝も早いが、人々は行動を開始する。
特に各農家や、店を切り盛りする人々……働く人たちだ。【アルテア】の経済を回してくれる、無くてはならないありがたい存在だ。
「むむっ……流石に誰かを特定するのは難しいな」
「ふふふっ、砂粒のようね」
人がゴミの……あぶねぇ!あの名台詞を口にする所だった。
ミーティアに軽蔑されちゃうっての。
「あれティア……準備か?」
「え?そうだけど、なんで?」
着替えに、ストレッチ……軽めのメイクをして。
昨日も殆ど寝てないんじゃ。
「いや……疲れてないか?たまには他の人に任せても、例えばジルさんとかジェイルとかさ」
ミーティアが着るのは仕事着である、濃紺のドレスだ。
ドレスと言うには大げさかもだが、この世界では私服に当たる。
昔の貴族が着歩いているような物を、簡素にした感じだな。
ミーティアのは戦闘も出来るように、スカートが着脱可能になっているらしく、ガチで戦う時はミニスカートへと切り替わる。素晴らしい御御足を見られるよ。
まぁ、戦闘中に見る余裕なんてないけど。
「疲れはミオもあるでしょう?お互い様よ。それに……今日搬入される品を確認しないとね」
「品?なんかあったっけ?」
あれ、俺は聞いてなかったな。
聞き逃したとか、スルーとかしちゃったかな?
「……昨日突然ね。営業終了間際だったから、私しか把握してないのよ」
ああ、だからか。
【コメット商会】で最後まで仕事をしてるのは、いつもミーティアだからな。
頑張り過ぎな気もするが、制限させるのも野暮だ。
「それで、その品ってのは?」
「多分、早朝には運ぶと言っていたから、【アセンシオンタワー】の近くに馬車が来ているはずよ。行ってみる?」
「そーだな……うん。俺も行くよ」
二人でほぼ徹夜。
それでも行動をする。今を全力で、未来に進むために。
二人で外に出ると、予想外に大きな馬車が【アセンシオンタワー】の正面に待機していた。馬車に紋章……この紋章は、確か公国のものだ。確か……
「これはスパタ家の家紋だな、この“馬を掴もうとする巨大な手”は」
「そうなの。交渉相手は、ネイル・スパタ嬢よ……」
今や【ルーガーディアン】の一人で、一度は敵対した公国の貴族。
ルーファウス・オル・コルセスカの頼れる部下で、長身の女性。
因みに彼女はまだ十八歳だが、【アルテア】の女性陣では一番の高身長だ、ジルさんよりデカい。
「――ミ、ミオ様!?」
馬車から降りてくる女性。
そんなに驚かなくてもいいではないか、ネイル嬢。
「どうもネイル嬢。俺も同席してもいいかな?それとも、交渉の邪魔かな?」
「い、いえ、そんな事は当然ありませんが……お忙しいのでは?ルーさま、ではなく……ルーファウス様がそう仰っていたので」
ネイル嬢は少々焦り気味に、俺とミーティアに視線を送る。
これルーファウスに言われてるな、俺に負担掛けるなって……そこまで気にしなくていいのになぁ。
「平気ですよ。だから問題なしです……今日の俺は、彼女の付き添いですしね」
視線でミーティアを見る。
ネイル嬢もそれを確認して少し安堵した……かな?
「そ、それならよろしいのですが……」
いや、まだ心配そうだな……まったく、面白いなルーファウス。
こんな子たちに慕われて、モテモテだもんな。でもこんなんでクラウ姉さんと上手くいくのかねぇ。
「ではネイル・スパタ様、搬入の手続き……その交渉と行きましょう」
「ええ。商品を見てから、というのが約束でしたからね」
そういう事だったか。
もう運んでいるのに契約とは……と思ってたんだ。
と、なると……品物が厄介なのか、それとも。
「はい、では塔の中に。広間を使えるように手配していますから、そちらにお運びください」
「かしこまりました。では……」
パンパン――とネイル嬢が手を叩くと、馬車の荷台から続々と、男衆が荷物を持って出てくる。
(ん……随分と小さい箱だけど、この馬車じゃなくてもよくないか?)
大型の馬車には不釣り合いな、女性でも簡単に持てそうな小さな木箱。
魔力反応がある……梱包されてるな、中身。
「平気よミオ。中を見たら、きっとミオも気に入ると思うわよ?」
「俺が?」
なんだろう。
ミーティアが有益な取引と決断して交渉するんだ……不安はないが。
もしかしてこれが、【クロスヴァーデン商会】に対抗する一手なのだろうか。




