1ー32【気にし過ぎても駄目3】
◇気にし過ぎても駄目3◇
今日の昼、【帝国精鋭部隊・カルマ】のロイドさんから貰った古文書。
そして古き帝国と言われた、数千年前の皇族の話……それがダンドルフ・クロスヴァーデン、そしてミーティアの先祖の可能性。
ミーティアの特徴的な青い髪は、約四千年前当時――送還師と呼ばれた少女の、言わばご先祖様の先祖返りだという事。
「……それじゃあ、二年前にお父様が言っていたのは」
「おおかた事実、っぽいな」
この事はエリアルレーネ様から聞いたことだし、アイズからも確証を得ている。
事実なんだろう。クロスヴァーデン家の血筋に関しては。
「そう……それが私を狙う理由なのかな?」
「可能性はある。送還師……ってのに心当たりは?」
「ないわ。今、初めて聞いたし」
その青い髪を梳いながら、ミーティアは考えているようだ。
物憂げな視線は、手の平に掛かる清流のような髪に……
「その力は、強制的に送り帰す力なんだそうだ。その力があれば、転生者すらも元いた世界に帰らせる事ができる」
「え……それって、かなり」
「ああ。俺たち転生者にとっては、即死にも等しい力だな……特に、この世界で大切な人たちが出来た、俺のような……さ」
だけど分からない事もある。
元の世界がある転生者だが、きっと身体は消滅……火葬されてるだろうから、戻ると言っても何処へ……となる。
ミーティアの手に乗る青い髪に触れ、そのあと頭……髪の毛に触れて撫でる。
優しくゆっくりと、愛情を込めて。
もしも元の世界へ帰されても、俺は必ずこの世界へ戻ってくる……絶対だ。
「も、もし私が……その力を持っていたら……」
怯えるようにして、俺に縋るミーティア。
怖いんだ。もしもその送還の力があって……俺たちを帰してしまったら。
だから、言ってあげなくては。
「大丈夫だ。そうさせない為に調べていたんだし……例えそうだとしても、俺はティアを渡しはしない。安心して……ティア」
「ミオ……」
娘であるミーティアを執拗に狙うのなら、今すぐにでもぶっ倒すところだが、あの二人は二年も動きを見せない。
何かを企んでいる可能性が大部分を占めるだろうが、それでも猶予はある。
「うん、だからティアは気にしなくても……」
俺は言葉を止め、ミーティアは不安そうに眉を寄せた。
「?」
いや……「気にしなくてもいい」は違う気がする。
それなら調べた事をひた隠しにすればいいし、教えないままでよかった。
俺は、彼女と共に進むと約束した。何があっても、この思いは偽りじゃない。
「ごめんティア。気にしなくてもいい……って言おうとしたけど、やっぱり駄目だよな」
ハッとするミーティア。
俺が考えた事を察したんだろう。
そしてミーティアも、その決意は揺らがない。
「……ええ。それだけは、ミオに言われても私……断ると思う」
ああ……やっぱりミーティアはしっかりしてる。
俺なんかが気を回すより、よっぽど自分の未来に向き合ってるんだ。
だから俺は、その向き合う姿勢を何よりも、誰よりも指し示す……道標にならなければ。
「ああ、だよな。だから二人で向き合おう。例え困難な道でも、二人でなら」
「そうね……信じるわ、ミオを。皆を」
その通りだ。【アルテア】の未来に誰かが欠ける事を、俺は望まない。
ミーティアだってそのはず。クラウ姉さんやアイシア、セリスにルーファウスだって。
話を終わりへ進める。
日が完全に昇り、夕食兼朝食を済ませてカーテンを開ける。
五十階の【アセンシオンタワー】に太陽の日差しが直撃している。
今日はいつもより暑くなりそうだ。
「ダンドルフ・クロスヴァーデンの考えは、【クロスヴァーデン商会】の動きを見ても分かる……銃器を販売して、金も戦力も増やす。それは実際に上手くいってるし、【コメット商会】が負けこんでる理由はそこだしな」
「そうね。何か対策を講ずる必要はあると、商会内でも話してはいたけど……中々ね」
なるほど、それで眠るのが遅かったのか。
クロスヴァーデンの事も、女神の事も考える必要があるけど、何か俺が出来る事はないだろうか。
「クロスヴァーデンとライグザール、あの二人もいずれ動き出すはずだ。【リードンセルク女王国】の領地も、少しずつ奪われてるらしいからな」
【リードンセルク女王国】の【王都カルセダ】があった北部。
その領土は今……北国の小国等に落とされている。
ライグザールが取り込んだ、小国にだ。
「銃器……お父様がそれを売って、資金にしているのね」
「その通りだ。そしてその武器は非常に強力……一発で簡単に、誰でも人を殺せる。それも遠くから、鎧も兜も余裕で貫通するからな」
俺もミーティアも、外を見ながら思案する。
戦争の道具は異常に売れる。しかも高値で。
世界で一番儲かるのは武器商人だと誰かも言っていたが……実際に体感すると、よく分かるんだよな……




