1ー31【気にし過ぎても駄目2】
◇気にし過ぎても駄目2◇
これからアイズには、先代から引き継いだらしい何かを思い出して貰う、もしくは気付いて貰うとして、時間も更けてきたから俺もそろそろ帰らなければ。
窓を見れば……若干の明るさが。
「――もうこんな時間かよ。話してるのと考えてるので、そうとう時間経過したな」
「あんた、一人で考え込んでる時間のほうが長かったわよ。あたしもあたしで思い出そうとしてたし……別にいいけどさ」
アイズは呑気に食事をしていた。
いやだからさ、深夜から食い始めてもう朝だぞ。流石に食い過ぎなんだよ。
でも、はぁ……もう朝か。
ミーティア、どうしてるかな。
「もう寝てるだろうな……」
窓の外を見ながらボソリと呟く。
しかし耳聡いアイズは。
「ミーティアね、寝てんじゃないのぉ?」
「……」
ミーティアを狙っているアリベルディ・ライグザールが、先代アイズレーンの手で何度も転生している。
少なくとも五回だ。そして、その時点で神域……俺と同じ。
つまり、実力も同等……いや、多分まだ俺が下回ってるはず。
だから、早急に。
「アイズ。真剣なお願いになるけど……」
「――分かってるわ」
俺の言葉を静止するように口にし、アイズは続ける。
「あたしも、今回は本気で考える。先代に託されてるらしい何か……あたしはきっと無意識に使ってるんでしょうね。だから探ってみるわ……それでいい?」
「ああ。頼むな」
そうして俺は、アイズの私室を出る事にした。
軽く挨拶をして、まだ寝ないらしいアイズの横顔を最後に視野い入れ、【四神教会】から外に出ると、薄っすらと日が昇り始めていた。
「なんて中途半端な時間なんだ」
これなら一夜を明かしたほうが楽だったかも知れない。
そんな思いも抱えつつ、俺は【転移】で【アセンシオンタワー】の五十階層へ……管理者室の入口までテレポートすると、静か〜に扉を開けた。
「……ただいま」
ミーティアは流石に寝てるだろうし、起こす訳にもいかない。
な、なんだろうこの感覚。朝帰りする駄目な彼氏的な……そんな気分だ。決して違うというのに。
こっそりと音を立てないようにリビングへ向かう。
「あれ、これって」
リビングテーブルに、布の掛けられた物が置かれていた。
これは、もしかして俺の分の……夕食だったんじゃ。
サッ――と布を外すと、そこにはパンがあった。
そして空の器も。
「からっぽ?」
その言葉と同時に、寝室から。
「ミオ?……ああやっぱり。お帰りなさい」
ミーティアが起きてきて、優しく微笑んでくれた。
「あ、ティア……ごめんな、起こしちゃったか」
最近新調したパジャマを身に纏い、その上から羽織をかけて。
少しだけ眠そうに、こちらへやってくる。
「ううん、私もさっきベットに入ったところなの。あ、少し待ってて」
「ん、あー無理しなくてもいいって」
ミーティアは空の器を持ち、台所へ向かう。
俺も後を追うと、スープを温め始めてくれた。
「ごめんな。こんなに遅くなって」
横に立ち、彼女の肩に手を置き謝罪する。少し抱き寄せるようにし。
しかしミーティアは、お玉で鍋を混ぜながら笑い。
「ふふっ……別に浮気したわけじゃないでしょ?なぁに?それともしてきたの?だからこんなに優しくするのぉ?」
「し、しないしないし!!してないし!」
からかい気味に小首を傾げて言うミーティア。
しないよ?本当にしないから。
「分かってるわよ……きっと、今日も皆のために頑張っていたんでしょう……?知ってるから、大丈夫」
「ティア……ホント、いい女だな」
隣から後に回り、そっと彼女を抱き締めた。
抱き締めずにはいられなかった。
「もう、火を使ってるのよ?危ないから」
「うん。ありがとな」
温めたスープに、冷めてしまったパン。
それと野菜サラダ。もう朝に近いが、かなり遅めの夕食だ……いや、朝食かな?
リビングで二人、隣同士に座る。
ミーティアが温めてくれたってだけで、なんだか美味しい気がする。いや、実際美味い。
一匙|すくい、口へ運ぶ。
染み渡る……身体の奥底まで。
「美味いなぁ。疲れも吹き飛ぶよ」
「お疲れみたいだもんね。今日は……えっと、調べ物でしょう?」
「……うん。チビ姉に聞いた?」
「まぁ……ね?」
小さく「ごめんね」と言うミーティア。
別に悪いことじゃないさ。クラウ姉さんにも、軽く伝えておいてと言っておいたし、眠たそうにしてたのに伝えてくれたって事だしな。
「色々調べたよ……その、君に関する事も」
「うん、聞いた。ごめんねミオ……負担だったでしょう?」
俺は首を横へ数回。
「そんな事はないよ。調べなくてはいけないと思ってからな……それに、ティアに黙って調べたんだし、謝るのは俺の方さ……ごめん」
「ううん、いいの。でも……それを今、言うって事は、私にも教えてもいいと言う事なのよね?」
俺の手に自分の手を重ね、真剣に、そして少しだけうるっとした瞳で俺を見据える。俺も答えないと駄目だよな。真剣に、真摯に。
「ああ……今日あったこと、教えるよ」
もう朝だ。それでも伝えるのが速いに越したことはないし、ミーティアが望んでいるのなら、それに答えなければ。




