1ー30【気にし過ぎても駄目1】
◇気にし過ぎても駄目1◇
アイズに渡されたノートをテーブルに置く。
俺はそれを手に取り開いた。アイズの言う通り、一頁目だけしか文字は書かれていなかった。
しかし日本の筆記体だ……もしかして先代アイズレーンは、日本人?もしくは転生者?
視線をノートとアイズ、双方に繰り返すと。
アイズは百面相をして、先代に託されたという何かを考えていた。
面白い顔だなお前。
「このノートに書かれてたのは、先代の憤りだな。あの神ってのはおそらく主神、その主神に言われて、エリアルレーネ様たちに隠れて転生の儀式をした……誰かに会いたがっていて、それを餌に主神に言われてたとかかな」
「あの爺がぁぁぁ!?」
声デカ……俺は知らないっての。
「確か、創作活動にしか興味のない神様だったよな」
「そうね、たっっっくさんの異世界を創ったわよ。この世界を含めてもね」
両手を広げて、アイズは嫌味を言うように。
そして放置される。結果、成長もせず停滞を何百、何千年と繰り返すしか無い世界が誕生だ。この世界も同じ、四千年……だったな。
きっと何もされずに滅びた異世界は、数え切れない程あるんだろう。
「そんな放任主義の神が、女神になにを命じてたんだろうな……」
「あたしが知るわけ無いでしょ!」
俺の耳元で怒るアイズ。
「怒るなよ!それよりお前は思い出せっつの!」
「――無理だぁぁぁぁぁあっ無理ぃぃぃ!!」
土下座でもするのかと思わせる勢いで床に座るアイズ。
これは本当に分からないんだろうけど、託された何かはきっとあるはずだ。
「お前だって主神に隠れて色々とやってただろ、先代も同じような事――」
それこそ、先代が隠れて転生を……
「ん、隠れて?」
「は?なによその顔――いたぁい!いたたたたっ!」
自分は関係ないと言ったような顔に、苛ついてしまった。
思い切り頬をつねる、引っ張る。たてたてよこよこまるかいてちょん。
「ひぃ!ほっぺ取れるわぁぁぁ!痛いでしょーーーがぁ!」
びょん!と弾んだアイズの頬。
擦りながら俺に文句を言う。
「お前なぁ。先代は隠れて転生の儀式をしてた、お前もしてるだろ……俺とクラウ姉さんの転生を」
「はぁ?確かにしてるけど、別に隠してなんか……――あ、ああああ!!」
そう。お前の考えているのは、隠蔽部分だ。
俺とクラウ姉さんを転生させたのは記録に残っている。
だけど、俺の一部分……能力の付与は隠されていた。
その方法というか術というか。
「俺の転生の特典を隠したんだろ?その方法って、先代が転生の儀式を隠したのと似てないか?」
アイズは顎に手を当て。
「そ、そうね。あたしは書類っていうか……データっていうか?それを自室に隠して、破棄しただけだけど」
そう言えばコイツ、本来破棄されるはずの転生者のデータを隠し持ってたんだったよな。でもバレなかった、直前までは。
主神にバレたのは、実はバレたんじゃなくて、見逃されただけじゃないのか?
主神レネスグリエイトはきっと、いや確実に……始めからアイズが隠蔽を行うという行為を知っていたんじゃないだろうか。
ああ……絶対そうだ。
「バレてたんだよきっと。主神は全て、女神の行動を」
「ま、まさか……あの創作にしか興味のない爺が?」
裏の顔って奴かな。
本心を隠し、自分の目的のために女神を利用する。
その目的までは分からないが、先代アイズレーンの憤りと怒りを見るに、そうとう陰湿な真似をしてそうだがな。
「他の女神の行動もバレてる可能性はある。エリアルレーネ様もウィンスタリア様も、イエシアスも……」
今直ぐに答えを出すのは難しいな。
根本的な事として、俺はレネスグリエイトを知らない。
無能なフリをする主神の考える事なんて、想像もつかないよ。
「あたしたち、全員思うツボってこと?」
「あくまで可能性、だけどな」
先代アイズレーンも、当代イエシアスも。
だからウィンスタリア様やエリアルレーネ様も、もしかしたら個人的に主神とのやり取りがあるのかも知れない。
そしてそれぞれに役目を与え、自らの手を使わずに事を成した。
陰湿な神様のしそうな事だが……目的は?
考えても考えても、この異世界に悪影響を及ぼす想像しか出来ない。
そんな最悪の未来を迎えない為に、俺はやるしかないんだ……やるしか。




