1ー28【復讐の先に2】
◇復讐の先に2◇
夜が更けて来て、自然と出そうになる欠伸を噛み殺す。
もうこんな時間なのか。時間的にそろそろ帰らないとだが……まだ話しておかないといけない事もあるな。
「アイズ。お前は先代の思想というか……何かを引き継いだりしてないのか?」
「はぁ?引き継ぐとか言われてもね、あたしが女神になったのは、先代が消えてからよ?会った事もないのよ」
お手上げポーズでムシャムシャと口を動かす。
この時間にそんな甘い果物を……太るぞ。いや、女神は体型とか変わらないのか。
「それでも何か、なんでも良いんだよ。何かないか?」
俺はアイズをジッ――と見て、真剣に問う。
少しでもヒントが欲しい。イエシアスに聞いた事と、ミリでも繋がりを見つけられたらいいんだ。
「い……あたしにまで色目使ってんじゃないわよ、色ガキッ」
「んな!そんなつもりはねぇよ!勝手に赤面したんだろお前が……!」
普通に照れてんじゃねぇよ!
あと、俺は真剣にお願いをしただけだが!?
なんで色目を使った事になるんだよ!心外だ!!
「ふんっ……ま、まぁ顔だけは良いしね!あたしは元の顔を知ってるからなんとも言えないけど!」
「――おい言ってはならない事を!」
そこまで悪い顔じゃなかったはずだぞ前世の俺。
ただ痩せこけて、無駄に身長がデカくて枯れ木のような男だっただけだ。
「先代、先代ねぇ……先代……かぁ。何かあったかしら」
無視しやがったコイツ。
でも考えてはくれてる、仕方ないな……許そう。
「あたしが女神になった時、先代の部屋をそのまま使ったのよね……」
「部屋?じゃあ荷物とかも?」
「いんや、荷物は全部……ぁ」
ん?何かあったか?
「どした?」
「いやちょっと待って。あたしが女神の力として使えたシステム……今思えば、ちょっと特殊だったなって」
「特殊?エリアルレーネ様とかと違うのか?」
「……少しね。イエシアスとかウィンスタリアは、前世が前世だけに戦闘系……エリアルレーネは継承型だけど……あの力って、まさか……!」
アイズは突然行動を開始した。
ここに来た時に俺が片付けた部屋を、再び散らかす勢いで。
「な、なんなんだよ!あーもう!折角片付けたのに!!」
ガサゴソ、ガサゴソ。
ガチャガチャ、ポイポイ……捨てんな!
「――神界から持ってきた荷物には、そのまま先代の道具も少しだけ残ってたのよ。しかも隠されるように残ってたやつ!壁の中にね!」
それは怪しすぎだろ!
もしかして先代アイズレーンは、他の女神や主神に見つからないようにしたのか。
「結構重要じゃねぇの!?それはっ」
「見られちゃいけないエッチなものだと思ってたのよ!」
先代アイズレーンにスケベ疑惑持ってやがったコイツ。
「――あ、ああああ!あったーーーーー!!」
「それはっ!?」
それは、ノートだった。
神の道具でもなんでも無い、一冊のノート。
文房具屋に売ってそうな、大学ノートだ。か、神の世界にもあるんだな……
「これ、先代の部屋から出てきたノートなの。壁の中から……日記とかさ、そういうのだと思ったし、プライバシー心外かと思って見なかったけど、もしかしたら」
あるかも知れない。
「よし、神罰落ちる覚悟で見せて貰うぞ!」
「えー、罰は嫌なんですけど!!」
「るせっ!それどころじゃねぇ!ほら、早く見てみるぞ!」
アイズを急かし、その古びたノートを捲らせる。
「わ、分かったわよ……ち、近いわね……」
(昔はなんともなかったのに……これが主神に近づいた結果?イエシアスが落ちたのも、これが原因?あーもう、胸が痛いわ)
慎重に、顔の赤いアイズはページを捲った。
しかし、その一頁を見た俺とアイズは。
「「!!」」
「……うわぁ……」
「なんじゃこりゃ」
アイズはドン引き。
俺も困惑。
それは、乱暴に書き殴られた真っ黒な一頁。
先代アイズレーンの負の歴史。何かを変えようと奔走し、しかし上手く行かなく、歴史の中へ消えていった女神の、悲しくも激動の記録だ。




