1ー19【クロスヴァーデンの系譜4】
◇クロスヴァーデンの系譜4◇
荷物をウィンスタリア様の自室へ運ぶ。中身なんだろう、コレ。
因みにウィンスタリア様とは、【救世の女神】の事だ。
【テスラアルモニア公国】に崇拝される、見た目幼女の女神様。
「おお!――お疲れだったぞ〜ニュウ!これでアレが楽しめるぞっ」
「アレ?」
この箱の中身の事か?
結構重かったけど、これ何なんだ?
聞いてもいいものなのかな。ニイフ陛下からの献上品って事だけど。
「何なんです?これ」
クラウ姉さんが速攻で聞いてしまった。
まぁいいんだけどさ、もう少し慎重にだな……しかしよく聞いた、俺も気になってたんだ。
「はっはっは!これはだなぁ……【ガレット】と言う遊戯盤だぞ!」
いや普通に答えるんかい。
「遊戯盤?チェスとか将棋みたいな感じですか?」
「似たような物だな!!」
ボードゲームって事か。
ん?この箱全部?
おいおい。どんだけの規模の遊びなんだよ。
「ウィンスタリア様、エリアルレーネ様の在所はいかがでしょうか……」
クラウ姉さんは興味がないようだ。自分から聞いたくせになぁ。
でもそう言えば前世から、多趣味ではないって言ってたな。
ゲームやアニメの知識もないって言ってたし、そういった娯楽は嗜んでないんだろうな。
俺?俺は興味がある。めちゃくちゃある。
将棋は知らんが、チェスは遊んだことがあるし……陣取りのようなタクティクスゲームは好きだった。トレカも多少は触っていたな。買って開けないタイプ……ああ、前世の押し入れには、宝の山になっている可能性も。
ウィンスタリア様は姉さんの質問に。
「ん、エリアか?アイズと共に懺悔室に行ったぞ?」
「……ざ、懺悔」
アイズとは、俺とクラウ姉さんをこの世界に転生させてくれた女神の愛称だ。
正式な名は【豊穣神アイズレーン】。ポンコツで残念で、ちょっとアホな女神だ。
ただし、超絶美声で美人……所謂、残念美人だ。
「ありがとうございますウィンスタリア様、じゃあ行きましょミオ」
そそくさと礼を言い行こうとするクラウ姉さん。
「あ、うん……」
ねぇ【ガレット】が気になるんだが。
いやしかし、エリアルレーネ様から話を聞かなければいけないのも事実だし、くぅ……もどかしい。
「ほら行くわよ……って!名残惜しそうにしてんじゃないの!」
「わ、分かってるから引っ張るなっ。行く、行くよ!」
首根っこを引き摺られるようにして、俺は部屋を後に。
ニュウさんが可哀想なものを見る目で手を振っていたが……俺を見てました?
◇
「それにしても、アイズは何をしたのかしらね」
「さぁね。懺悔室とかさ、行ったことないし」
懺悔したい事はあるけどな。
山程あるよそんなの。言わないだけでさ、大体の人間がそうだろう。
懺悔室、実は聖堂の直ぐ側だったりする。
つまりは二度手間、エリアルレーネ様は目の前に居たらしい。
ニュウさんの手伝いしたから良いんだけどさ。
「こんこん」
口で言ってるよこの姉。
わざとなんだろうけど、幼女感が凄いよそのムーブ。
「――はーーい」
「あ、いた」
「失礼します、エリアルレーネ様」
クラウ姉さんはドアを開ける。
すると中から焦ったように、「あ!ちょっと待って!!待ちなさい!!待てぇぇぇ!!」とアイズの叫び声。
これは速攻で開けましょう。
「「あ」」
「うぅ……待てって言ったのにぃぃ」
「いらっしゃい二人共、どうかしましたか?」
唖然とする姉弟。
笑顔の女神、そしてその下……エリアルレーネ様の尻に敷かれる女神。
とんでもない現場に出くわしたなぁ、これまた。
「何してんだよアイズ……いや、何しでかしたんだよ」
「……」
俺は呆れつつも問いかける。
クラウ姉さんは絶句。開いた口が塞がらないとはこの事だ。
そしてその女神様、俺たち二人を転生してくれた女神は顔を赤くして。
「ち!違うのよ二人共、まず聞きなさい!これには深い訳がっ」
その体勢のまま弁明を始めるのか、凄い根性だなお前。
恥じも矜持もないような姿勢のまま、アイズはエリアルレーネ様の尻に敷かれながら続ける。続けるの?
「――そう!これはプレイなの!!」
「「……」」
いやもう、お前喋るなって。
逆に俺たちが恥ずかしいから。
「アイズ……貴女という神は」
エリアルレーネ様まで頭を抱えてしまったぞおい。
自分の妹神の醜態に恥ずかしくなったのか、エリアルレーネは腰を上げた。
一体、何があったって言うんだよ……もう、既に疲れたんだが?




