1ー18【クロスヴァーデンの系譜3】
◇クロスヴァーデンの系譜3◇
クラウ姉さんと二人で、女神が生活をしている教会へと【転移】をする。
【四神教会】……この世界に現存する四柱の女神と、そして新たに生まれた女神……【慈愛神オルディアナ】を崇め奉る教会だ。
しかし、四神か……ウィズがいれば六柱なんだよなぁ実は。
「よし、テレポート完了。もう離れていいよ、姉さん」
「ん」
名残惜しそうに、指先でスッと俺の背を撫でる。
くすぐったいよ。
「エリアルレーネ様はどこにいるかな」
転移先は聖堂の隣に設けられた、【転移】専用の入口だ。
つまりは俺専用……あ、ジェイルも居たな。
ジェイルとは、ミーティアの片腕のダークエルフの青年だ。
ジェイル・グランシャリオ。かつてはエルフ族の王子。
今の肩書としては、会長護衛……になるのか?
「神様なら部屋じゃないの?この教会、【感知】が働かないからややこしいのよね」
「まぁね、そういう風に改修したし。だって狙われたら大変だろ?」
面倒くさいが、自衛は大事だ。
「そうかもね。探す手間にはなるけど、それが一番安全だし……助けに行くのも面倒だし」
「だろぉ?」
三国の主要メンバーで決めたルールというか、防衛策だ。
万が一ここの女神様たちが狙われたら、当たり前だが防がなくてはならない。
この世界の人類なら誰でも得る事が出来る能力――【感知】。
魔力や気配を察知する力だ。
それがあるだけで、誰がどこにいるかが多少は分かるし。強力な程、感知できる人物の幅が広がる。
「――裏切りが出る可能性も、否定出来ないしね」
「怖いこと言うなって、その為の論功行賞じゃないか」
論功行賞とは、簡単に言えば頑張ったご褒美だ。
活躍に応じてそれなりの報酬を、【アルテア】では女神直々に与えるという事をしている。
「その行賞を与えられたのが【ユニバース】でしょ?……って、なんで今更説明してんのよ」
ゲシっと足蹴にする。痛いって。
だがそのおかげで、戦力が圧倒的に増えた。
今や俺たちだけじゃない、【Aキューブ】で覚醒した能力者はそれなりに増えているし、精霊と契約をして戦えるようになった人たちも大勢いるんだ。
「念の為だよ、誰かさんが忘れっぽいから」
「失礼ね、それより行くわよ」
姉さんとは言ってないよ。
俺は「はいはい」と返事をして、転移室の扉を開ける。
するとそこには。
「――きゃっ……!」
「……っと!!ビックリしたぁ!」
「ん、なに?」
俺の後ろの姉さんは分からなかったらしい。
見えないよな俺の後ろだと、小さいから。
しかしながら、これが【感知】阻害の悪いところ。
何処に誰がいるかがさっぱり分からん。多少の気配は分かるんだけどさ、こう話の途中とかだと、普通にビックリするから。
「ミ、ミオ様でしたか……驚きましたよ」
ここから出てくるのは俺だけだって。
それにしても……相変わらずの破壊力だな、その凶器。
「驚かせてすいませんニュウさん。任務の途中ですか?」
「あ、はい。ニイフ陛下のご命令で、ウィンスタリア様への献上品を持ってきてたんです」
この人はニュウ・カラソラドールさん。
多分【アルテア】で一の大きなお胸を所持するエルフの女性だ。
エルフ族の女王陛下、ニイフ・イルフィリア・セル・エルフィン様の命令ということは、近衛騎士であるエリリュアさんの指示だな。
この扉の前を通った瞬間に、俺が開けちゃったのか。
「エリリュアさんはいないんですね」
ニュウさんは大きな胸をだゆんと弾ませて答えてくれる。
もうピョンピョンするだけでも反則級の動きだぞ。あと痛くないのか。
「そうなんですよ〜、隊長ったらジェイル様とお出掛けだそうで……」
「ほう」
「へぇ」
ジェイルの奴、なんとも思ってないような言い回しをしてたが、それなりに上手く立ち回ってるじゃないか。
「そんなリアクションになりますよねぇ〜、ニュウは大変なんですけど、隊長の幸せも嬉しいですから」
大変、か。
なるほど理解した。
「それでその大荷物ですか?手伝いますよ、持つの」
視線をニュウさんの後ろへ移すと、大きな箱が四つもあった。
これを一人で運ぶのか。
「私たちもエリアルレーネ様を探してるんです。知りません?」
クラウ姉さんは上を見上げて。
ニュウさんの視線から、クラウ姉さんは映っているのだろうか。
「ウィンスタリア様と一緒だと思いますよ。では、一緒に行きましょ〜!」
「助かります」
「お〜!」と拳を天へ上げるニュウさん。
ブルンと揺れる。クラウ姉さん……その視線やめな。
さぁて、本題はエリアルレーネ様を見つけてから。
それまで、荷物運びを手伝いますかね。




