1ー17【クロスヴァーデンの系譜2】
◇クロスヴァーデンの系譜2◇
食事を終え、食器を洗い場に持っていく。
大食堂は基本フリーだ。だから食事を終えたら片付けは専用の置き場に持っていくのだ。経費も削減できるし、皿洗いの負担も少しは減るだろ?
ルールを守らない人もいるけどな。貴族とかは……基本メイドがやってくれるし。
俺は席に戻り、テーブルの上に置かれた古い本に【無限永劫】をかける。
まずは頑丈に、破れないように補強だ。
「表紙はボロボロだ、マ〜ジで古いんだろうなコレ……河川敷に捨てられたエロ本思い出すわ」
元の状態を知らない以上、完全な修復は出来ない。
本を修繕する知識があれば別だが、専門過ぎてな。
「中は……あぁもうくっついてる。【無限永劫】をかけつつ一頁ずつ見てくしか無いなこれ」
ベリベリ。
あーもう、汚れだけだったら落とせるのに。
「あ!【創作】で同じの創れば……いやでも中身知らないと再現できねぇか……くっそ、ウィズがいれば解析できんのに!」
面倒臭さは否めないが、ダンドルフ・クロスヴァーデンの言う帝国……【サディオーラス帝国】ではない別の国の可能性を知るチャンスだ。
それに、ミーティアが一番気にしているからな……自分のルーツ、系譜を。
「……」
時間経過。
「……」
更に時間経過。
「……」
そうして小一時間が経過した。
パタンと本を閉じ、疲労感のある目も閉じて。
「ふぅ……有益、ではなかったな」
背凭れに体重を預け上を見上げて、閉じた瞼を指で押さえる。目が痛いっつの。
「そもそも古代文字?今の時代と書いてる文字が違いすぎるんだよ……」
しかし裏を返せば、転生者が現れる前の次代の書物と言うこと。
今の時代は多くの転生者が影響してか、この世界の文字はひらがなだ。
最近はこの【アルテア】から、アルファベットも読み書きに含めているけど。
「でも……だ。アリベルディ・ライグザールが言ってた言葉を考えれば」
あの男は二年前、「四千年の停滞」と言った。
賛同者のダンドルフ・クロスヴァーデンが言う「古き皇族」を考えるのなら、そこまで遡る必要があるのかも知れない。
「四千年か……途方もないが。その時代を知ってる人間なんているわけないしなぁ」
そこまで言って、ふと脳裏に出てくる。
人間なんている訳はない。それは当然だ。
だが、それ以外なら……
「っと、確かニイフ陛下で千年……それ以上となると――」
そうだよ、なんで真っ先に出てこなかった。
最適解の人物……いや、神物がいるじゃないか。
「エリアルレーネ様は、寿命が尽きて身体が変わっても、そのまま記憶と力を継承するんだったな。なら、四千年前の時代を知ってても不思議じゃない。ましてやエリアルレーネ様は帝国に崇拝される神……これだ!」
テーブルをバンッ!!と叩いて立ち上がり、早速【四神教会】へ向かおうとする俺。
しかしそんな意気揚々な姿を、後ろから見ていた人物がいた。
「――へぇ、じゃあ私も聞きに行こうかしら」
「ぉわっ!!……け、気配消してくるなよ!!」
その正体は、光学迷彩を解除する小さい姉だった。
【光聖の衣】という、自身を隠す技を使用して背後を取る。
俺の腰に腕を回し、そのまま【転移】でもしろと言いたそうにするクラウ姉さん。
「……別にいいけどもさ」
「でしょ。私も気になるし、知っておくのが複数でもいいでしょ?」
確かに共有は大事だ。
今後を占うクロスヴァーデン家の系譜……ダンドルフ・クロスヴァーデンの言った言葉の意味、そして真意。
一人で抱えるには辛いのも分かる……知るには多い方がいいか。
「助かるけど、いいの?面倒なことだよ、多分だけど」
それは俺の予感だ。
アリベルディ・ライグザールに賛同している時点で、俺たちの敵は確定。
その娘のミーティアを狙う男二人……きっとややこしいに違いない。
でも、それを乗り越えなければ、俺たちに真の平和は訪れないんだ。
「いいのよ。一蓮托生……前世からの縁でしょ、もう何年だと思ってるのよ」
前世……俺の高校時代の同級生。
それがこの姉、クラウ・スクルーズだ。
妙な縁だよ、今生で姉弟に生まれ変わるんだからな……でも、ありがとう。
「サンキュ。じゃあ……行くよ、クラウ姉さん」
「ええ」
腰に回る彼女の腕にそっと触れて、俺は瞬間移動の能力――【転移】を発動した。




