1ー15【増えた精霊たち5】
◇増えた精霊たち5◇
これ以上は精霊同士の方がいいと考え、フレイにあの場を任せて俺は五十階へ。
自室である管理者の部屋に帰ってきた訳だが。
「ふぅ〜〜」
コートを脱ぎ、ソファーに無造作に投げる。
埃も舞わない綺麗な部屋だが、俺の視線は部屋の一角に。
非常に気になる点があった。
それは、女性用の服と小さめの下着だった。
一見幼女の物なのではと心臓が破裂しそうになるが……見覚えがある。
「……」
(クラウ姉さんのだな……)
俺が投げたコートよりも無造作に脱がれた、着替えだった。
脱いで、そのまま放置された服に下着。
「はぁ……ホントに変わらないな。これでルーファウスと上手くいくのかねぇ」
確かルーファウスは綺麗好きだったはずだ。
だからルーファウスの事が大好きな【ルーガーディアン】の女の子たちは、自室を凄まじいほど綺麗にしているらしい。ルーファウスが部屋に行く未来は見えないけどな。
部屋の一角まで行き着替えを片付ける。
いやマジで下着脱ぎたて……ドン引きだよおい。
「ん……シャワーの音。絶賛入浴中……そりゃそうか」
着替えをソファーに置いて、俺は窓へ向かう。
高層マンションも驚くレベルの景色が、そこにはあった。
ネオン街のように煌めく夜景。
星のように光るのは、【アルテア】全土に整備されたインフラ。
電気に水道。学校や病院などの施設だ。
そして、目には見えない精霊……これは後で説明するが、この光そのものが精霊だと思ってくれていい。
「まるで億ションの夜景だよな、見たことねぇけどさ」
電気は魔力で発電出来るように設計し、家主の魔力を注ぐことで、数日間は充電出来る。水道は【豊穣の村アイズレーン】の時と同じ、奈落に流れるように設計している。
公国領は地下が迷路のようになっていて、整えるのに時間がかかったが……それでもこの【アルテア】は、村と宣言しているのに、今やどこの国にも負けない完成された存在になった。
夜景を見ながらしみじみと。
あー……もうすぐ酒が飲める年齢だなぁ。
前世ではあまり嗜まなかったが、今世では楽しめると良いな。
そんな事を想像していると、湯上がりの小さい姉が出てくる。
当たり前のように全裸で。いやマジで……この女。
俺は呆れるように顔を覆った。
「あらミオ。おかえり」
「――おかえり。じゃねぇよ!クラウ姉さん好き勝手し過ぎ、ここ俺の部屋な!?」
この人勝手に入ってるから、不法侵入だから。
「許可は得てるわよ、もう一人の家主のミーティアに」
俺はガックリと肩を落とす。
「……確かにティアの部屋でもあるけども」
タオルで濡れた髪を拭きながら、姉は言う。
「あの子、自分が暴走しないように見張ってて欲しいんですって。もし愛だのどうだの言い出して……ミオに迷惑をかけないように、ってね」
「なんでそんな事、俺はティアの為なら……」
「それがいけないのよ、あの子には。どうするの?もしミーティアが……子供が欲しいとか言い出したら」
「――こ、子供!?それは……まぁいずれは欲しいと思ってるけど」
それよりも、服を着ないかクラウ姉さん。
俺ガン見してるけどいいの??
「女は怖いわよミオ……」
全裸でそんな事を言うあんたのほうが怖いよ俺は。
姉さんはソファーまで行って着替えを持ち、使っていたタオルを俺に投げ「ん」と顎で使う……はいはい、【無限永劫】で服にしろってね。
「……はいよ」
一瞬で服へ変質し、シュッと投げる。
クラウ姉さんは簡単に受け取る。
「あんがと。じゃあ私は戻るから」
マジでシャワー浴びてただけかよ。
自室で入れよまったく。同じのあるんだから。
「はいはい、忠告どうも」
「……軽いわね、まぁいいけど」
そう言って俺がタオルで創ったワンピースを着て、部屋を出る姉。
しかし背中を向けたままに、一言。
「――でも、本当に気をつけなさいよ?」
「え」
その声のトーンが真面目で、真剣な忠告だと瞬時に理解した。
凍るような背筋、頬を流れる汗。
「ミオは家族を求めてる。私もだけどさ……でも、今はまだその時じゃないでしょ?ミーティアだってお父さん――ダンドルフ・クロスヴァーデンの問題があるから、直接は言わないだろうけど、それでも……最善の注意はしなさい、ね?」
「……ああ。分かったよ……姉さん」
最後は優しい声音で、諭すように。
理性を保てず失敗する恋人たちはいくらでも知ってる。
これは転生者として、地球の人間として忠告なのだろう。
パタン……と静かに扉が閉まる。
残された俺は、そっと窓の方へ。
再び夜景を見ながら。
「……」
増え続ける精霊。
大人になって考えることも変わってきて、見据えなければならない未来。
どれもまだまだ進展中の、現在進行系の出来事だ。
俺は、俺たちはどうするべきか、どうすれば最善な未来に成るのか……真剣に考えなくてはならない。そう……この異世界を最高の世界にするために。




