1ー14【増えた精霊たち4】
◇増えた精霊たち4◇
夕刻、【アセンシオンタワー】へと戻った俺とフレイは塔の四十五階へ。
【吸精の精霊】アブソーブも一緒だ。
「着いた」
昇降機を使用し到着後、フレイが嬉しそうにしながら魔力で開閉する扉へ魔力を注ぐ。いや、俺がやるのに……魔力もったいないだろ。
「――これは!」
アブソーブは部屋の光景に驚いている。
それでなくても大きな目を見開いて、口元にてをあてて。
そして、その光景とは……
「そう、ここにいる皆……精霊だよ、貴女と同じで契約者のいない、ね」
「あぁ……これが全部……仲間、なのね」
同族の仲間。
その部屋は、塔の一階部分を全て使用した特別な部屋だ。
俺かセリス、もしくはルーファウスの許可がなければ入室を許されない部屋。
【アセンシオンタワー】の中でも稀有な、特別な部屋だ。
「皆。また仲間が増えたよ」
フレイが中へ歩いて行って言う。
トテトテと腕を振らない可愛らしい歩き方で進んでいく。
その後ろを俺もついて行く、アブソーブは遠慮気味に。
「ねぇ僕……ここは、牢獄かしら」
魔力を込めた圧……これは怒りだ。
だけどそうか、そうも見えるか。なるほど……先程の驚きはそっちの意味だったんだな。
だが違う、勘違いは止めてくれないか。
「……違うよ。ここは精霊を保護する部屋だ、そう見えたのなら誤解を解きたい」
このアブソーブという精霊。
フレイが言うには中位精霊らしいが。
つまりはフレイウィ・キュアと同レベル。強いんだ。
俺の言葉を聞いて、スッと魔力を抑えてくれるアブソーブ。
「まぁ確かに……無理強いされているようには見えないけれど」
「だろう?貴女のように、契約者を得られなかった人や……契約をそもそも望まない精霊たちが、この部屋にいるんだ」
俺の説明を聞きながら、アブソーブは腕組みをして胸を乗せる。
ほうほう、しかしもう見慣れたんだよ。【アルテア】には凄いのいっぱい居るからな!そりゃあもう毎日見てるんだから!
「この子たちは、どうやって魔力を得ているのかしら?」
そうだ、当然気になるだろう。
それが目下の問題でもあるし、それを見せなければ納得もしないはずだ。
契約をさせないという事は、精霊に死を宣告しているも同義だからな。
「それは、あっちを見てくれ」
「あっち?」
俺は手を部屋の奥へ差し出す。
丁度、フレイがそれを手にし、小さな精霊の子供にあげる所だった。
「……あれはまさか、魔力の塊?それも高純度の、密の濃いものだわ……な、なんて魔力量なの。あれを吸えれば、数ヶ月は……生きられるわ」
アブソーブはゴクリ――と喉を鳴らす。
その通り。フレイが持っているのは【Mキューブ】、そのままだがマジックキューブという、俺の謹製だ。
「昔、【マジカルキューブ】ってアイテムがあってね。それをモデルに俺が創ったんだよ」
「つ、創った!?あんな高純度の魔力の塊を……?」
二年前に【Aキューブ】という、無能力者に覚醒を促すアイテムを創ったのだが、これはその応用版といった物だ。
「そう。だからここにいる精霊たちは、無理に契約相手を探さなくても、生きることだけは出来る。願望は……ゆっくり、そして慎重に探してみないか?」
「……」
二年前に精霊が解放されて、【アルテア】にも大勢の精霊が来訪した。
今の光景のようにな。そしてアブソーブのように、性を主にする精霊も出現しだしたんだ。
「貴女たちのような精霊は、他の国や他の町でも出現している。そしてその多くが、娼館で働き魔力を稼いでいるとか……本人が良くても、聞いてる方はやるせないんだよ……勝手だけどさ」
しかも、その精霊たちは金を欲しないと来た。
だから人たちは雇用する。賃金要らず、タダ働きも同然……しかも精霊たちは皆が皆、美男美女だという好条件。
そして客が増えれば問題も増えて、こういったアブソーブのような精霊を巡って馬鹿な男が争いを起こす……女性版もあるんだけどさ。
「だからさ、そんな事をさせたくないんだよ俺は。せめてこの【アルテア】では、好きな相手が出来て、その人と契約をして欲しい……だめ、かな?アブソーブさん」
俺の言葉にアブソーブは俯き、真剣ながらも暗い顔をする。
そして小さい声で。
「少し、考えさせて」
当然考える事もあるだろう。
これは【アルテア】の我儘でもある。そして押し付けでもある。
「……分かった」
確かに自由を制限するルールではある。
それは俺たち全員が理解している。そして同時に、それに制限をかけなければ、悪い展開が待っているとも予期できるんだ。
だからこの【アセンシオンタワー】で精霊を保護する。
きちんとした契約者が現れるまで、精霊がその相手を選べるようになるまで、守るんだ。




