3ー32【だからこそ欲する2】
◇だからこそ欲する2◇三人称視点
彼には協力者がいた、しかし転生させた女神ではない。
彼の傍らに寄り添い、一時も離れず、その生き様を見続けてきた存在だ。
姿を持たず、彼にしか存在を確認することが出来ない……未知の存在。
【女神ヴィナス】、またの名を――アフロディーテ。
地球でも有名な、本当の神……真実の神。
主神レネスグリエイトを仮初の主神と知る、唯一の神だ。
しかし彼女は既に身体を失い、霊体となってこの異世界、【レドゥーム・アギラーセ】へと顕現した。
彼女が見つけた存在こそ、アリベルディ・ライグザール。
精霊の情報、身体能力の向上や魔力の強化、能力のレベルアップ……様々な手伝いをし、彼を至神者へと押し上げた。
神の戦争で肉体を失った彼女は、魂となって【レドゥーム・アギラーセ】を守護していた。そんな時に、女神が誕生した……レネスグリエイトが創りし、神工の女神たちだ。
怒りが沸々と燃え上がり、偽物を滅する為に、手段を選ばず行動をした。
その結果が、数千年の時を超えた……ライグザールとの出会いだ。
このまま行けば、精霊を解放し、神を滅する手段をも手に入れられる。
しかし、至神者は世界に一人……神に成れる存在に、同存在は許されないのだ。
ミオ・スクルーズの出現が、二人の計画を狂わせた。
彼はライグザールの長年の時間を、悠々と超えた。
たかが十数年で至神者となり、そして今……もっとも神に近い、いや――既に神と成っていると言えるだろう。
それはライグザールとヴィナスにとって、邪魔者以外の何者でもなかった。
精霊女王も、本来ならあの時に解放されるはずだった……それなのに、女王は封印空間の中に留まり、解放はお預けとなった。
それは、至神者が二人いたからだったのだ。
肉体を乗り換える事が出来るライグザールも、現在の身体に限界が来ている。
【操魂】の唯一の弱点。それが、長い寿命を持てないという点だった。例え天族であろうとも、長くて六十年……早ければ三十年で死に至る。
ライグザールは上手くやった。
例え結婚できない場合でも、外に子を作り、その子供に乗り移る。
強引な辻褄合わせも、貴族なら簡単だ。
そうして何代もの子孫たちを、一人で操ってきたのだった。
そして次の代は……アレックス・ライグザール。
彼を探し、【死葬兵】を差し向ける。
強制的に【精霊心通】を施した【死葬兵】は、更に強力な手駒となって活躍するだろう。
ライグザールが大臣時代の最後の仕事として落とした小国……その戦力も少なくはない。志願兵も増え、続々と精霊も顕現している。
更には帝国。
皇帝バルザック・セル・オラシオン・サディオーラスには何か思惑があるらしいが、そんなものはライグザールには関係ない。
【叢雲】として皇帝に接触し、そして銃器を授けた。
今も、きっと東を攻め落とす算段を企てているはずだ。その瞬間も、近いだろう。




