3ー26【新しい試み1】
◇新しい試み1◇ミオ視点
ガタン――!!
「ん〜……どしたのミオ、急に立ち上がって」
「い、いや……」
唐突に椅子から立ち上がった俺に、精霊のフレイウィ・キュアが首を傾げて言う。
なんだか急に、小っ恥ずかしい感覚が襲ってきた。
自分の知らない所で、何か凄く大事な話が行われていたような、そんな蚊帳の外案件……き、気のせいか??
「――ふぅ、はい終わり。今日はこんなものでいいよね、じゃあキュアは戻るから」
「あ、ちょっ!待っ……」
スゥゥゥゥ……とフレイは俺の中に消えていく。
最近特に増えたな、フレイが【精霊心通】状態になるの。
フレイは今日、【ヌル】に治癒の力を込めてくれていた。
その数、数百。千に近い数の【ヌル】を作ってくれたんだ……ありがたいよ。
一番必要な【ヌル】の力は、やはり回復の力だからな。
『最近はこっちの方が落ち着くからね〜』
「そうかい……ならいいけども」
俺は焦った気持ちを撫で下ろして、フレイが丹精込めて完成させてくれた【ヌル】を見る。お?……なんだか、色が違う。
『それ、中級の治癒が出来る【ヌル】だよ』
「マジか!?」
今までの【ヌル】は初級の治癒魔法しか使えなかった。
【AROSSA】に設置する数には限りがあるから、戦略に応じてその都度変えなければならない。
そうなれば自ずと、威力や回復力が高い【ヌル】が求められる……ゲームと同じだな。
『でも魔力の消費は高いよ。キュアが使った方が効果もでるし』
「それはそうだけどな。でもそれでいいんだよ、フレイは俺の精霊だし。誰かが危機に陥った時、他の誰かが回復術を使えればいいんだから」
フレイは『むぅ』と俺の中で唸る。
傷を癒やす事が生きがいの精霊だからな……文句を言いたいのも理解は出来るんだが、やはり個人で使えた方が楽だ。
それでフレイが要らないとか言ってるんじゃないし。
「さてと!それじゃあ今後は、他の精霊にも頼んで見ようかっ」
【ヌル】の増産は急務だ。
戦いを見越せば、千個でも足りない。
まぁつまり【AROSSA】も足りない訳だが……制作は他の人にも任せられるようになったし、俺の仕事は新型の考案に移ったんだ。
俺は【アセンシオンタワー】の四十五階に向かう。
そこは沢山の精霊が生活する、集合住宅的な階層だ。
最近は、【アルテア】に精霊も更に増えてきている。このまま行けば、階層は増やさなければならないだろうな。【エンパイアスペース】や【クイーンズオブスペース】、【プリンシパリティスペース】のように……十階層くらいか?
あーでもそうなれば、管理者室をもっと上層にずらさないとだなぁ。




