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1ー12【増えた精霊たち2】



◇増えた精霊たち2◇


 【アルテア】帝国領――【イズアーレ】。

 多くは帝国の人たちが住まう区画であり、かつて俺の生まれた村、【豊穣の村アイズレーン】に住んでいた人たちや、【トリラテッサ】の移住者がメインに、帝国の軍人たちの宿舎なんかもある場所だ。


 そして俺の両親、スクルーズ家の夫婦と末っ子のコハクも住んでいる区画。

 そんな全く関係ない説明をしていながらも、俺は隣の白い少女に声を掛ける。


「フレイ。最近はどうだ?」


「え、何急に。普通だけど?」


 俺の横を歩く精霊――フレイウィ・キュア。

 白い髪は糸のようで、肌は新雪のよう。

 服装は白いワンピース。靴も真っ白だ。

 この子がこの容姿になったのは、元になった憑代(よりしろ)が、白の【オリジン・オーブ】だからだ。つまり存在そのものが【オリジン・オーブ】と同等のレベルという事であり、ミーティアやアイシア、セリスにリア、そしれシャーロットとはまた別の価値を持っているんだ。


「そ、そうか。ならいいんだが」


「え、何なの本当に。ミオおかしくない?」


 怪しむような視線を向けてくるフレイ。


 こちとら気にかけてんだよ色々と!

 それでなくても、治療をする事がこの精霊の生きがいになってる……最近はそれすらもないからな、平気かなって思うだろ?


「だってさぁ、願望はいいのか?」


「あ〜そゆことね。確かに喧嘩は毎日起きてるけど……でもキュアはミオの命令がないと治癒はしないよ?」


 あっけらかんと言い放つ。

 それだと、お前は俺の命令がないと……願望が叶えられなくて消滅しちまうだろうが。


「それは……前も言っただろ?フレイの思うがままに、願望は叶えていいって」


 指示待ちエルフ(ジェイル)どころではない。

 精霊は基本的に、契約相手の命令がなければ行動をしない。それは理解している。

 死の間際や、契約を望むとき以外は、本当に契約主に従うんだ。それが……精霊の本質だと言う。


「う〜んと、そう言われても〜……えへへ」


 そういう事ばかりを言う。むしろそれしか言わない。

 これはフレイウィ・キュアだけに限らず、他の精霊も同じ。

 戦闘系の精霊は戦いを望むし、奉仕精霊や日常精霊もその名に用いた願望を持つ。


 精霊が解放された当初、【アルテア】に訪れたのは奉仕精霊が多かった。

 大工や土木などの工事系、掃除洗濯や食事を作ってくれる……そんな精霊たちが、大勢増えていたんだ。


「だけどさ。そうしないと生きられないだろ?」


「うん。でもさ、それが精霊だからね。契約主はご主人様……だからその命令が、絶対で至高……(たっと)(うやま)われるもの……」


 両手を胸の前で組んで、フレイは(うる)んだ目で俺を見る。

 あーはい。それが至高なのね。

 けれどな、わざと怪我をさせる訳にもいかないだよ。


「……どうすっかな、この問題」


 訓練で怪我をするのはあるが、願望が追いつくだろうか。

 この二年の間に、フレイウィ・キュアが願望を叶えたのは二十三回。

 約一月に一回だ。


「安心して、急に死んだりはしないよ。それに……」


「それに?」


 フレイは優しげな目で俺を見て。


「だって。怪我はしないほうがいいでしょ?」


 優しい子なんだ、この子は。

 だから余計に、消えては欲しくない。


「フレイ……」


 しかしそれでは、【治癒の精霊】の願いは叶わない。

 精霊は契約者の願望を叶える。そして対価に魔力を得て生きていく。

 願望が叶わなければ、魔力を得られなければ……消滅という、死が待っている。


 去年、それが叶わず消滅を目の当たりにした精霊も居た。

 契約者を重んじる精霊は、基本的に契約者の命令にしか従わない。

 その結果……彼は消滅した。契約者は冒険者で、既に死亡してしまっていたからだ。


「ったく、そんな笑顔で言うなよな」


「えへへ〜」


 この子を消滅させないためには、精霊の中でのルールも必要になるだろう。

 時にそれは(かせ)になり、時にそれは命を救うものとなる。


 彼女たち精霊も、今やこの異世界の一部。

 この世界を守ると決めた俺の、守護するべき存在なんだから。


「あーもう分かったよ。でも、俺の指示は聞けよ?怪我をしてる人を見かけたら俺に言う事、そうすれば俺が命令する……「傷を癒せ」って。それでいいな?」


「……うん」


 本当に分かってるのか?お前の問題なんだぞ?

 俺は後頭部を掻きながら思案する。


 そうなると必要になるな……連絡手段が。

 個人個人で連絡を用いることが出来る端末、この世界でいう【ルーマ】のような道具。


 俺たち転生者が言うならば、そう――携帯端末だ。


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