1ー11【増えた精霊たち1】
◇増えた精霊たち1◇
来訪者の二人に配慮するなら、模擬戦はこれにて終了だ。
「――二人共!模擬戦終了だ、今日の勝ちは一発当てたティアなっ」
「よし!」
ミーティアは小さくガッツポーズをした、控えめなやつ。
「え〜、まだ動けるのに〜」
仕方が無いだろう、俺も流石に二つ同時に受け答えできないって。
「どうせまた来週やるんだろ?これくらいにしておけって」
「まぁね。で、ミーティア……少しは気が紛れた?」
セリスは腹を擦りながら、満足気に言う。
ミーティアも中々に清々しい顔をしていた。
「ええ……ありがとうセリス。でも、毎回ミオにちょっかい出すのはそろそろやめにしない?私も、気が気じゃいられないわ」
二人は模擬戦を終えて話し始めた。
ここからは別シフト……お客様に対応させてもらう。
「――待たせたなフレイ、カミュも。どうしたんだ?」
俺の隣で待機していた二人。
色々と白い方は、俺の契約精霊で……【治癒の精霊】、フレイウィ・キュアだ。
「ううん。キュアはカミュの付き添いだから、こっちに聞いて」
「そうなのか?」
背の低い方に視線を送る。
フレイウィ・キュアの影に隠れ、ちらりと顔を出す。
「……あ、はい」
相変わらず声が小さい。
そして控えめで、間を持って話す癖がある。
この子はカミュ・テレジアドール。
転生者ではないが、転生者の遺伝子を持つ超人……人間族の上位種だ。
因みに俺やクラウ姉さんは天上人。天族という種族の上位種にあたる。
「なにか用だったか?」
予定を思い出す。
ウィズがいなくなってからは、少し大変なスケジュール管理。
秘書的な存在を雇おうかと考え中だ。
「……その」
「怪我人の治療だよ」
結局言うのか、フレイよ。
自主性をなんとかとか、言うべきか?
しかし、それを言っている場合でもないのか……
「怪我人?えっと……何か問題でも起きたのか?」
こちらには何も聞こえて来てないな。
もし大きな問題があれば、俺の他にも権限を持つ人物は大勢増えたんだ、だから他の誰か(例えば【ルーガーディアン】)に言ってもいいんだが……
俺の考えを理解してか、白い少女はフラフラと左右に揺れながら。
「ううん、普通の喧嘩。でも……精霊絡みでね」
「……はい、そうなんです」
なるほど。精霊絡みか……これは、この二年で最も増えた問題の一つだ。
俺は腕組みをして「う〜ん」と考える。
結論は出ているんだ。その理由も多いから。
「取り合いか?」
「そ」
「……はい」
聞いた瞬間、俺は一瞬だけしかめっ面だ。
精霊の取り合い……それが頻繁に起きる。
「フレイがいても駄目だったのか。厄介なタイプ?」
「……あ、いえ。そ、そこまででは無いんです……でも、その」
カミュの頬が赤くなる。耳まで赤い。
いや……これはまさか、性絡みかよ面倒くさい。
「わ、分かった。もういいよ言わなくて……悪いなカミュ、そんな現場に行かせて」
誰だ責任者!こんな幼気な少女を、大人の問題に駆らせて!
【ユニバース】のメンバーであるカミュだが、彼女は最年少だ。
問題山積みの【アルテア】には男女の問題も多く存在するが……こんな子供にさせてはいけない。ここは俺が謝っておかなくては。
「……すみません」
小さな声で、恥ずかしそうに何度も頭を下げるカミュ。
この子、出会った当初は感情を中々出さない子だったんだが、最近は思春期と言うか何と言うか、前の人形っぽい感じと比べたら、凄く女の子らしくなった。
「いや、いいんだって。配慮はこちらがするべきだった」
それに、精霊の問題は全員で……この世界全体で解決しなくてはならない。
「フレイ。問題が起きた場所は?」
「ん。【イズアーレ】の噴水公園」
帝国領か。
噴水公園は昨年に出来たばかりの新しい子供の遊び場。
おいおい……そんな所で男女の問題を起こすなよ!!大問題だからなまったく!
「――ったく。仕方ねぇな……フレイ、案内してくれ。カミュは【ユニバース】本部に戻っていいから。悪いな、変な任務に駆り出して」
「うん」
「あ……はぃ」
手を上げて笑顔を見せるフレイに、少し残念そうなカミュ。
えと、これはどっちだ。俺の期待に答えられなかったからか、それとも男女の問題を見たかった?……言わずもがな、前者だろうな。




