2ー41【アーゼルの都・危惧】
◇アーゼルの都・危惧◇アレックス視点
自分が研鑽を続けてきたと、努力をしてきたんだと、自分の歴史を疑うことはなかった。例え親の七光だろうと、上の失脚からの成り上がりだろうと、それでも努力は惜しまなかったつもりだ……そう、つもりだったんだ。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
刃毀れした剣は、数回の攻撃で折れてしまうはずだ。
これでも、【奇跡】を掛けられた兵士たちの情報だけは持っている。
だから弱点……それを頼りに!!
僕の剣技は、お世辞にも達観したものではない。
基本に忠実で、繰り返し行われてきた馴染みのある王国剣技。
ガッ――!!
「くっ、硬い!!」
動こうとしない化け物……【死葬兵】は左腕を差し出して、僕の剣を防いだ。
「……」
「この強度、余程の実力者が実験台になっていたのか!」
何故この【死葬兵】が動かないのか。
その答えは、肉薄してようやく気づく事ができた。
「その靄から完全に出てくるまで……動けないようだな!!これなら、よし!カルカ、一気に叩くぞ!!」
「は、はい!」
動けないのなら、そのまま押し通すまでだ!
この【死葬兵】がどんなに強力な力を持っていようと、発揮できなければ意味などなさない!
ガッ――ガガッ!
二度目の攻撃、そしてカルカの攻撃も硬い皮膚を通らない。
弱点は腕で隠れた腹部。心臓とは別に、【死石】と呼ばれる核がある場所だ。
人間で言うみぞおち、そこは他の場所に比べても柔らかいはずだ。
「うおぉぉぉ!」
腕の下に入り込み、動き出す前に仕留めてやる。
「カルカ!やるんだぁぁぁぁ!」
【死葬兵】の腕を持ち上げるようにし、カルカへアシストをする。
丸見えの弱点部……一撃で終わらせるんだ!
「はい!!――やぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドッ……とめり込む粗末な剣。
そうさ、弱点さえ捉えられれば、【奇跡】の賜物……【死葬兵】ですら怖くはないんだ。
何が恐怖だ、何が人外の力だ……結局は、人間の――
ドガッ――!!
「――かはっ!」
「うぐぁっっ!!」
ドサッ。
何が起きたのか、分からなかった。
カルカが弱点を的確に捉え、剣が突き刺さった所までは見た……しかし、今僕は【死葬兵】から離れた場所に落ちた。
「何が……げほっ……」
カルカも別の場所に吹き飛ばされている。
「――団長!!」
「ディ、ディルトンか。守るんだ……レフィルをっ」
聞こえてきた声は、小屋にいたはずのディルトンだ。
この騒ぎを察知したのだろう。しかし、こちらに来るよりも優先する事があるだろう。
「そんな事言ってたら、死んじまいやすよ!!」
【死葬兵】も動き出す。
腹部に刺したはずの剣がない……傷すらも。
まずい、このままではレフィルが……
「?」
ズン、ズン、ズン。
地響きを鳴らして、こちらへ来る【死葬兵】。
【死葬兵】が小屋へ向かわない……だと?
どうしてこちらに来る、どうして聖女レフィルを無視する……気付いているはずだ。この化け物は、「ミツケタ」と言ったじゃないか。
「ディルトン……聖女レフィルを連れて……逃げろ」
「で、ですが!」
「いいから行けぇ!!」
目的はレフィルなんだ。
彼女さえ生きていれば、【奇跡】があれば。
だから行けディルトン、お前が彼女を連れて、逃げろ!
「……くっ、了解です!!」
ああもう……分からないよ。
この状況、僕には何がなんだか……まるで検討もつかない。
「……イキテイルナ」
僕に、言ったのか。
「どういうつもりだ……」
「ウツワサエアレバイイ、ソレダケデ、キサマノカチハアル」
なんだと?器?価値?
僕に何の価値があると言うんだ、こんな哀れな僕に、いったいなんの。




