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激闘!第六駐屯地!(6) カルロス vs. ゲルゲ

 城壁の上に立つジ・O()のボディ……いや、カルロスのO()ヤジの体が激しい振動で揺れていた。

 というのも、横目で見る城壁の一角に巨大ガンタルトの体が突っ込んでいたのである。

 しかも、こともあろうかその巨体が第六駐屯地の城壁をまっすぐに裂き割っていくではないか!


 その衝撃で巻き起こる砂煙は瞬く間にカルロスをも包み込んだ。

「ちっ、デカ物が、やってくれる……さすがにパワーがダンチか……」

 額に手を当て、とびかう砂の粒を避けながらカルロスは低いうなり声をあげていた。


 だが、ついにドーンという音ともに先ほどまで足元の石畳から伝わっていた激しい振動がピタリと止まったのだ。

 徐々に晴れていく砂煙。

 その切れ間からうっすらと日の光が元の活力を取り戻し始めていた。

 そんな時である。

 わずかに開くカルロスの視界の隅に、突然、一条の白い刺突が走ったのだ。

「なにっ⁉」

 反射的に身をかわすカルロス。

 身に着けていた金属鎧がガシャリと激しい音をたてて傾いた。

 しかし、その動きは重い鎧をまとった巨体とは思えないほど、素早い動きであった。


 身をひるがえし低く構えをとるカルロスが厳しい顔つきで空を見上げている。

 ぽたり……ぽたり……

 力を籠める足先に小さき彼岸花が次々と赤き花を咲き散らし始めていた。

 それは頬から滴り落ちる血のしずく。

 先ほど空から舞い降りてきた白い刺突が、カルロスの頬に一筋の傷跡をひいていたのである。


 カルロスの見上げるその先……光輝く太陽を背に一つの影が浮かんでいた。

 この影は……もしかして、人なのか?

 だがその背には蝙蝠のような大きな羽が二つ生えていた。


 この人型は空を飛ぶ魔物が進化した魔人の姿。

 だが、魔人とは進化前の魔物の素質を色濃く残すのが常なのだ。

 それが進化したてとあれば、その形はほとんど魔物と同じなのである。

 想像してほしい。

 オタマジャクシがカエルに変わるときを。

 その姿を一夜にして変えるだろうか?

 否!

 足が出て、手が伸びて、しっぽがなくなり、その姿を次第にカエルへと変えていくのである。

 魔物の進化もこれと同じである。

 生気の宿る人の脳や心臓を食えば食うほど次第に人の形へと進化していく。


 そう、目の前に浮かぶその魔人は、魔物というより人に近しい。

 羽が生えているという点以外は、すでにほとんど人と区別がつかないほどなのである。

 そこまで進化した魔人……

 おそらく、魔人の上位身分、どこぞの魔人騎士に仕える神民魔人でまず間違いないだろう。


 この魔人、名前を「ゲルゲ」

 先ほどからケタケタと笑うその声が、妙に耳障りである。

 そんな声がゆっくりと、カルロスの前に降りてくる。

 そして、赤らめた頬を両手で押さえ、腰をフリフリ身もだえしはじめたのだ。

「私って超ラッキー♡ だって……神民の指揮官ちゃん♡早速みつけたんだも~ん♡」


 ⁉

 カルロスは、その言葉に反応した。

 ――神民の指揮官? この魔人は自分のことを神民と見抜いたというのか?

 確かにその体の中に宿る生気の量は神民になればかなり多い。

 だが、人間において神民も奴隷も同じ人型なのである。

 そう、見た目は全く変わりない。

 低能な魔物にとって、神民だろうが奴隷だろうが目の前に人間がいれば同じ脳や心臓をもつ獲物なのだ。

 神民だからと言って選り好みする必要などないのである。


 だが、目の前の魔人は確実に神民だけを狙っている様子。

 それは、この戦闘において神民の役割を理解している証拠なのだ。

 ――こいつもしかしたら通常の神民魔人ではないのかもしれない……おそらく、自分と同じく幹部クラスといったところ

 だが、それでも、カルロスは落ち着いていた。

 ならば、おそらく……

「どうやら、お前が空魔の群れを率いていたのだな……」 

 そう、魔物は自分よりも強い魔物に従うのが絶対の掟。

 あれほどの数のコカコッコーとワイワイバーン。

 死すら恐れずに特攻をかけてくるには、やつらの背後にもっと巨大な恐怖があったはずなのだ。

 もしかしたら……それが……こいつなのかもしれない……

 そんなゲルゲを見るカルロスはにやりと笑う。

 ――ならば……こいつを潰せば……空からの攻撃は止まるはず……

 そう思うカルロスは右手に持っていた黄金弓を左手に持ち替えると、背中から一つの大きな盾を外して構えた。

 盾の周りには無数の刃が円を描くように取り囲む。

 その大きさはちょうどマンホールの蓋を一回り大きしたようなサイズ。

 だが、その重厚さはマンホールのそれを軽く超えていた。

 その盾を円刃の盾という。攻守ともに優れたハイレアクラスの武具である。


 だが、次の瞬間、あれほどケタケタと笑っていた緑の双眸がギラリと光ったかと思うと、目の前にいたはずのゲルゲの姿が消えたのだ。


 ――ちっ! 早い!

 ゲルゲのスピードに一瞬遅れるカルロスの視線。

 だが、カルロスも第六の駐屯地の守備隊長。

 並みの神民兵ではない。

 嬉しそうにとびかかってくるゲルゲの一挙手一投足をすぐさましっかりと補足しなおすと、反撃のチャンスを瞬時にうかがった。


「それでは♡ 神民の指揮官ちゃん、潰させていただきま~す♡」

 白き爪がカルロスの眼前に迫る。

 次の瞬間!

 ガキーンという金属音と共に火花を激しく散らす白爪と大盾。

 どうやら、ゲルゲの初撃は円刃の盾でさえぎられていた。


 だが、ゲルゲの攻撃はそれで終わりではなかった。

 打撃による反動を使って体を大きく反転させると、羽を広げて宙に浮く。

 そして、その落下の勢いを乗算し、左右の爪を交互に打ち出しはじめたのだ。


 カルロスの構える円刃の盾からけたたましい金属音がひっきりなしに鳴り響く。

 だが、その盾はびくともしない。

 そう、ただ無駄にゲルゲの体力を消耗しているだけだったのだ。

 四方八方に飛び散る無数の火花。

 その火花の陰でカルロスはまったく微動だにせず、ゲルゲの動きを観察し続けていた。


「はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡」 

 少々疲れたのか、肩で息をするゲルゲが後ろに下がった。

「意外に硬いのね♡ でも、ワタシ、硬いのは大好きよぉ♡」

 そして、まじまじと両の手の爪を視線を落としたのだ。

 そこには、少々ボロボロになったネイルがあった。

 先ほどまできれいに指先にデコレートされていたかつて人気映画のキャラクター、白いモフモフのギズモちゃんが……いまや、紫のグチャツルな夜のグレムリンへと変わり果てていた。

「これ……♡ 結構……お気に入りだったのに……♡」

 モフモフギズモって、どんなネイルのデコレーションですかwww

 全ての指にモフモフがついていたら、キーボードなんか叩くとき邪魔でしょうがないでしょうが!

 ましてや、料理で包丁を使うときなんか指先が見えなくて危なっかしい!

 いやいや、これが今、魔人世界では流行っているんです!

 大体、私のような♡スーパーエリートな女性?は料理などしないのです♡

 まして、キーボード? そんなものは下僕にでも打たせておけばいいのです♡

 って、作者は女性じゃないから……知りません……だから、クレームを入れないようにwww


 はぁ~と大きくため息をつくゲルゲ。

 だが、これでも数多の人間を食らい知恵を進化させてきた魔人である。

 だからこそ!

 常にポジティブシンキング!

「でも、これはこれイカしてるぅぅ♡」

 デ♪デ♪デ♪デん♪デでン♪

 デ♪デ♪デ♪デん♪デでン♪

 デン♪デッデッ♪デデデ♪デデンデ ♪フゥ↑♡ フゥ↑♡

 なぜかご機嫌のゲルゲは、鼻歌に合わせるかのように前にだらんとたらしたグチャグツルになった指を左右にスイングし始めていた。

 というか、このテーマ曲……読者のみんな、知ってるのかよwww

 知っている人! 手を挙げて!

 そら見ろ……誰も手を上げんじゃないかwww

 さすがにちょっと古すぎるだろwwww


「お前の相手をしているほど、私は暇ではない」

 だが、カルロスは盾の脇から強い視線がのぞかせる。

 そして、立て続けに叫ぶのだ。

開血解放(かいけつかいほう)!」

 ベルトの両脇に装着されていスマホぐらいの二つのユニット。

 その魔血ユニットが甲高い起動音を立てる。

 キュィーーーーン! という音ともにユニットの上部から黒い影が一気に吹き上がった。

 その勢い良く伸びる影はまるで水の表面を伝うかのように体全体に広がり、たちまちカルロスそのものを覆いつくすのだ。

「神経接続!」

 ユニットにセットされた魔血タンクから大量の魔血がその黒き影へと供給されていく。

 それとともに黒く覆われた体からは蒸気が激しく立ち上る。


 風にたなびく白き水蒸気。

 その白き流れの間から、時折、黒光りした体が見え隠れ。

 次第に晴れていく開血解放の熱気。

 その後には、黒きカメを模した鎧をまといし魔装騎兵カルロスの姿があった。


 それを見るゲルゲは、

「うちのカメちゃんはやられちゃったみたいだけど♡、こちらのカメちゃんはどうかしら♡」

 そう言い終わると上空に高く舞い上がり、宙を舞う一匹のコカコッコーの首根っこをつかみ取ったのだ。

 そして、次の瞬間、その首を鋭い爪の一撃で跳ね飛ばしたのである。

 ぎょぇぇええ!

 短い断末魔をあげて落ちていくコカコッコーの首。

 ゲルゲの手に残った体からは魔血が噴水のようにふき出していた。


 その様子を見上げるカルロス。

「言っておくが、ここは聖人世界のフィールド内! 魔獣回帰は使えんぞ!」

 当然に、この第六駐屯地は聖人世界のフィールド内に建っている。

 魔人たちが持つ神民スキル魔獣回帰は当然使うことはできないのだ。

 そう、できないはずなのだ……

 ――ならば、奴は何をするきだ……

 いやな気配を感じたカルロスは、一歩、足を引き警戒を厳にする。


「あのね♡ 神民ちゃん♡ 別に魔獣回帰だけが全てというわけじゃないのよぉ♡」

 という、ゲルゲは手に持つコカコッコーの体を頭上に高く持ち上げた。

 切れた首から流れ出す紫色の魔血。

 それドバドバとゲルゲの頭に流れ落ちていく。

「きゃぁ♡水よ♡水ぅ~♡」

 って、それは魔血だろうがwww


「だからどうしたというのだ!」

「あら♡ 知らないの♡ グレムリンって水をかけると分裂できるのよ♡」


 ぐえぇぇぇぇぇぇえ♡

 ゲルゲの叫び声とともに体中に広がる無数のあばた。

 しかも、そのあばたがこぶし大の大きさへとどんどん成長していくではないか。

 中にはその成長に耐え切れず紫色の体液を噴出しているものもある始末。

 サカキ腹イグえぇぇぇぇぇぇえ♡

 次の瞬間、ゲルゲの体がはじけとんだ。

 そう、水風船のようにパンとである。

 ……

 ……

 ……おーい……

 ……先ほどまでのあばたは何なんだんだよwww

 普通、グレムリンといえば大きくなった瘤から芽キャベツみたいなギズモの子供が生まれるんじゃなかったのかよwww


 だが、カルロスの表情は驚きに満ちていた。

「なに⁉」


 見上げる空には体の真ん中から真っ二つに割れたゲルゲの姿。

 それはまるでマ○ンガーZのアシュラ男爵。

 だが、残念ながら、その真っ二つに分かれた体はどちらもオカマなのである。

 しかし、そんなことは驚きには値しない!

 そう、その二つに分かれた体の断面からは、はみ出た内臓やら脳みそやらがボテボテと垂れ落ちていたのである。

 念のために言っておくが横割りではない! 縦割りだ! 縦割り!

 何? 想像できない……

 仕方ない……そんなアナタには私からささやかな助言をさしあげようwww

 「真っ二つ アックスジャイアント」でググってみ♡

 女の人が真っ二つに縦割りになっている画像が出てくるからwww

 まさにこんな感じ!

 ちなみに、横割りになっている画像はオッサンだからね!

 しかも、こともあろうかその断面がうねってるのwww

 キモっ! きしょ!

 15禁や! 15禁!

 こんなんでは運営に発禁扱いにされてまうわ! こわっ!

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