記憶9 無謀な挑戦の死
頼斗は帯広の元へ人質になるために歩きだした。
「バーカ、誰が素直に従うかよ」
頼斗はいきなり走り出す。
「この餓鬼が!」
帯広はドラグノフを撃つ。
タン
しかし、狙いは全然違うところで、天井に当たる。
そして、頼斗は帯広にタックルする。
「ごはっ!」
帯広はタックルされたときにドラグノフの引き金を引いた。
タン
パリィン
天井の照明が割れる。
美咲が帯広のドラグノフを奪おうとする。
もみ合いになっている最中に引き金が引かれる。
タン
弾は人質だった女性をかすめて壁に当たる。
「ひぃっ!」
女性はその場に座る。
「いい加減にしやがれ!」
帯広は頼斗を投げ飛ばす。
「がはっ!」
頼斗は展望台の強化ガラスに叩きつけられる。
「お前もだ!」
同じようにして美咲も投げ飛ばされる。
「なめやがって・・・!殺す!」
帯広は立ち上がって頼斗に銃口を向ける。
(・・・死んだなこりゃ・・・)
タァン
(・・・あれ?痛くない)
すると、頼斗に何かが覆い被さる。
それは、美咲だった。
「おい!西川!?」
頼斗は美咲を起こそうとすると、手に何かがベットリとつく。
頼斗が手を見ると手は真っ赤に染まっていた。
「取り押さえろ!」
帯広に展望台にいる人たちが飛び掛かる。
「美咲!」
亜理砂が駆け寄ってくる。
美咲からは血が流れ出ている。
「どいて!止血する!」
和花が駆け寄ってきて撃たれた背中を押さえている。
「斎藤くん!どいて!邪魔よ!」
頼斗はその場を退く。
帯広は手錠をかけられて押さえつけられている。
頼斗の服は血で汚れている。
「へっ・・・お前があんなことしなきゃその娘も死ななかったのになぁ」
「黙りなさい!」
優衣がドラグノフの銃口を帯広に向ける。
「お・・・俺が・・・」
「斎藤くん・・・貴方のせいじゃないのよ」
優衣が優しく肩を叩く。
「美咲!美咲!しっかりして!」
「くっ・・・ここじゃまともな治療ができないわ!」
「かはっ・・・」
美咲が血を吐く。
そして、亜理砂が握っていた美咲の手が力なく床に倒れる。
「美咲?・・・美咲!返事をして!」
和花が脈を確認する。
次に目を開き、ライトを当てる。
そして、首を横に降る。
「う・・・嘘でしょ・・・」
「残念だけど・・・」
「いやぁぁぁぁ!」
亜理砂の目から涙が溢れてくる。
頼斗はそれを漠然と眺めていた。
亜理砂はまだ涙が溢れている目で頼斗を睨む。
「どうして斎藤さんはこんなときに涙も流さないんですか!」
「・・・」
頼斗は答えることが出来なかった。
「斎藤さんが止めてれば・・・!」
「・・・そうかもな」
「・・・あそこで無理矢理でも便乗せずに止めていればこんなことにはならなかったかもしれない」
「わかっていて止めなかったんですか!?」
「・・・分かってたことかもな」
「っ!!」
頼斗は亜理砂の怒りに火をつけた。
亜理砂はポケットからカッターナイフを取り出す。
「それでもあなたは人間ですか!?」
「・・・残念だけど人間なんだ」
その言葉は亜理砂の怒りに油を注いだ。
「殺す!」
亜理砂はカッターナイフの刃を出すと頼斗に向かって走り出した。
「わぁぁぁぁぁぁ!」
しかし、頼斗は一歩も動かない。
ドス
カッターナイフは頼斗の腹に刺さる。
「・・・何で・・・どうして避けなかったの」
亜理砂がカッターナイフから手を離すと、カッターナイフは頼斗の腹に刺さったままだった。
無言でそれを頼斗は引き抜く。
そして、カッターナイフを投げ捨てる。
「それでお前の心の傷が癒えるならこんなもん痛くもねぇ」
「うわぁぁぁん!」
亜理砂はその場に泣き崩れる。
和花と優衣が駆け寄ってくる。
「お腹大丈夫?」
「これぐらい・・・大丈夫・・・ですよ・・・」
バタッ
頼斗はその場で気を失った。
「・・・・・・あれ?ここは?」
頼斗が目を覚ます。
側には亜理砂が座っていた。
「和花さん!目を覚ましました!」
「そう。見た感じ大丈夫そうね」
頼斗の腹に包帯がぐるぐる巻きにされていた。
「消毒もしたし、破傷風の心配は無いわね」
「斎藤さん・・・すいませんでした!」
亜理砂がペコペコ謝っている。
「良いよ別に」
すると、優衣がいきなり頼斗の手を引いて階段まで連れてきた。
「何ですか?」
ドスッ
優衣はいきなり刺された腹を殴った。
「いっ!!」
頼斗はその場で倒れて腹を押さえてもがく。
「何すんだよ!」
優衣は頼斗の胸ぐらを無理矢理つかんで起こす。
「何すんだじゃない!そんなことをしてたら命がいくつあっても足りないよ!」
「な・・・何だよ急に・・・」
「いい?そんなことをしてたら周りにも被害が及ぶ!現にも今回ので一人亡くなってるのよ!」
「・・・それは・・・そうだけど、あそこで俺が行かなかったらもっと人が死んでたかも知れねぇんだぞ!」
優衣は乱暴に胸ぐらを離すと、頼斗に背中を向けた。
「あんたのその考え・・・近いうちに後悔することになるわよ」
優衣は展望台に戻っていった。
題名でネタバレだったかもしれません。すいません。




