記憶8 うみほたる島立中央公園時計台
グォーー
和花達の乗った車はゾンビを時々轢きながら中央公園に向かう。
フロントガラスには、血がついておりワイパーを動かしても血が伸びるだけだった。
「ガラス、拭きたいわね」
「事故らないでくださいよ」
「大丈夫、もうすぐだから」
和花の言葉どうりに公園が見えてくる。
車を公園の前の駐車場に停める。
他にも車は数台止まっていた。
「気を付けて進むわよ」
和花、優衣の二人は警棒を伸ばして警戒している。
頼斗は優衣特製の包丁付きパイプを持って、背中にはドラグノフとリュックを担いでいる。
公園は木々が生えており、鳥の鳴き声が聴こえてくる。
「前!」
優衣が指を指す。
その方向にはかなり距離があるが、ゾンビがフラフラと向かってきている。
「どうします?」
頼斗がドラグノフを構える。
「いや、避けて進みましょう」
三人はゾンビを避けるように大回りをして時計台に再び向かった。
しばらく歩くと、時計台の入り口についた。
しかし、時計台の入り口はバリケードで塞がれており、入れそうもない。
「警察です!開けてください!」
和花が叫ぶ。
すると、バリケードの一部が開いて中から男性が出てくる。
「助けですか!?」
「いや・・・そうじゃないんですけどね」
「さ、どうぞ早く入って下さい」
「だから・・・救助じゃ無いんですけど・・・」
男性は全く言葉を受け入れずに中に案内した。
「エレベーターは止まってるんで階段で」
「マジか・・・」
時計台はビル20階相当の高さで、上がるのも一苦労であった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
四人全員の息は上がっていた。
時計台は時計の上に展望台があり、北エリアを見渡すことができるようになっている。
「救助ですか!?」
「助けは何時来るんですか!?」
「増援は!?」
和花、優衣は質問攻めにされる。
「救助じゃ無いです!」
優衣がキッパリと言いはなった。
「増援は・・・?」
「わかりません」
「救助は・・・?」
「わかりません!」
展望台にいた人たちはガッカリする。
すると、先程の男性が話しかけてくる。
「すいません、皆救助を待っているんですよ・・・あ、私は、帯広(おびひろ)と申します」
「私は、田原 和花です。こちらは・・・」
「小笠原 優衣です」
「斎藤 頼斗です」
「よろしく」
帯広は一人一人握手する。
「そちらの少年は・・・」
帯広は頼斗の持っているドラグノフを見て言う。
「緊急時ですので・・・」
「緊急時と言ってもねぇ・・・危険物ですから、こちらで預かっておきます」
「いや・・・私たち警察もついているので・・・」
「こちらにはこちらのルールがあるんですよ。守れないなら出ていってもらいます」
頼斗は大人しくドラグノフを帯広に渡す。
帯広はドラグノフを持って何処かに去った行った。
「私たちは北エリアを見てるから斎藤くんは展望台内ならどこいってても良いよ」
「分かりました」
頼斗は展望台を歩き始めた。
色々な人がいた。老人の夫婦、カップル、大学生等がいた。
頼斗はそのうちの一人のうみ高のセーラー服をきた女子に声をかけられる。
「あの・・・」
「はい?」
「うみ高に通ってますよね」
「そうだけど・・・誰?」
「覚えてませんか?同じ委員会の・・・」
「あぁ!・・・名前覚えてないや・・・」
「佐々木 亜理砂(ささき ありさ)です!」
「・・・悪い、思い出せないや」
「そうですか・・・」
「友達は居ないのか?」
「友達は皆救助されました」
「ご両親は?」
「車で逃げてるときに感染者に襲われて、車が横転して・・・」
「そうか・・・ごめん」
「・・・うん」
頼斗は亜理砂の横に座る。
「他にうみ高の奴はいるか?」
「うん、男子が3名、女子が5名ほど」
「そんなにいるのか・・・」
「あ、友達なら一人いました」
「そうか。」
すると、一人の女子がやって来る。
「ごめんごめん・・・って誰?」
「同じ委員会の斎藤さん」
「どうも。亜理砂の夫の美咲です」
「なに言ってんのよ!」
ポカ
亜理砂が美咲を殴る。
「すいません・・・亜理砂の友達の西川 美咲(にしかわ みさき)です」
「よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
「二人はこれからはどうするんだ?」
「救助を待ちます」
「そうか・・・」
すると、展望台に銃声が響き渡る。
タァァン
「きゃっ!」
「わっ!」
亜理砂と美咲が耳を塞ぐ。
「今のは・・・俺の銃!?」
「と、とにかく行ってみましょう!」
三人は銃声のした方に向かう。
銃声のしたところには人が集まっていた。
その場所は展望台のエレベーターホールだった。
そこには帯広が、女性にドラグノフを突き付けている。
「帯広さん!そんなことは止めてください!」
「そうです!銃をこちらに渡してください!」
「うるせぇ!どうせ救助なんて来ないんだろ!」
「そ・・・それは・・・」
和花は言葉を返せなかった。
「おい!オッサン!俺の銃返せよ!」
人の間を縫って出てきた頼斗が言う。
「黙れ!」
帯広は展望台のガラスに向かってドラグノフの引き金を引いた。
タァァン
ビシッ
強化ガラスに穴が開いて、その周りに蜘蛛の巣状のヒビが入る。
「次騒いだらお前を殺してこの女も殺す!」
帯広は銃口を女性の背中に当てる。
「くっ・・・」
「要求は何です?」
和花が言う。
「要求は簡単だよ。お前らが乗ってきた車を渡してもらう、それだけだ」
「そうすれば人質は解放するんですね」
優衣が恐る恐る聞く。
「当たり前だ!」
すると、美咲が頼斗に耳の近くで話しかけてきた。
「斎藤さん」
「どうした?」
「あと、あの銃は何発ありますか?」
「4発」
「それなら一か八かで突っ込みませんか?」
「何でだよ!?」
頼斗は思わず大きな声をあげてしまった。
帯広が頼斗を睨む。
「いえいえ・・・すいません」
帯広は和花、優衣達の方に向きなおした。
再び美咲が話しかけてきた。
「あの銃の銃身は長いですし懐に入れば・・・」
「そうだけど、リスクが高すぎる」
「やってみる価値はあると思います」
「止めても無駄か?」
「斎藤さんが行かないなら私一人で行きます」
「分かった。俺が先に突っ込むから西川はアイツが怯んだところをで銃を奪ってくれ」
「はい」
頼斗は集団の一歩前に出る。
帯広が頼斗を見る。
「おい!人質にするなら俺がなる」
「ほぉ~」
「斎藤くん!なに言ってんの!?」
和花がやめるように言う。
「そんなか弱いやつ人質にして楽しいか?」
「それがどうした!」
帯広は銃口を頼斗に向ける。
「俺を人質にしろよ!ビビってんのか?」
「それならお望みどうりにしてやる。来いよ」
頼斗は帯広の元へ歩きだした。
色々無理矢理な名前もありますが気にしないでください。
感想待ってます。




