最後の記憶 平和な日常への第一歩
バババババババ
一機のオスプレイがJRセントラルタワーズに回転翼航空機モードで向かってくる。
「早く来て!」
「ナニヲマッテルノカナァ?」
特殊変異した男性がゆっくりと気絶している頼斗を引きずりながら逃げる亜理砂に向かっていた。
パンパンパンパンパン
オフィス側のビルから銃声が聞こえるが特殊変異した男性は気にせずに亜理砂に歩み寄ってくる。
「バイバイ」
特殊変異した男性は触手を伸ばそうとする。
(間に合わない!)
ベキャゴキャ
一機のオスプレイが左のプロペラで特殊変異した男性に突っ込み特殊変異した男性の肉片や血液が周りに飛び散る。
そのままオスプレイはJRセントラルタワーズから少し離れたところでホバリングの体制にはいる。
「はぁ~」
亜理砂はその場で座り込む。
すると、ヘリポートに続々と避難民が入ってくる。
その中には自衛隊員の姿も確認できた。
「君、怪我は?」
「私は大丈夫ですけど頼斗さんが・・・」
「やられたのは足と手首か・・・これなら命に別状はないだろ」
「本当ですか!?」
「でも、中国地方でちゃんと君も、その少年もきちんとした処置を受けるんだぞ。傷口が膿んだら大変だからな」
上空ではオスプレイとチーヌクが着陸体制に入っていた。
「ここは着陸の邪魔だ。少年は私が運ぶからヘリポートから出なさい」
「分かりました」
頼斗は自衛隊員が持ってきた担架で一旦はヘリポートから降ろされる。
オスプレイがゆっくりと着陸して、後ろのハッチが開くと数人の自衛隊が出てくる。
「ここの避難所の人数は何人だ?」
「自衛隊員や警察官も合わせると120名前後です」
「それなら怪我人は何人ほどいるか分かるか?」
「少年が一人重症です」
「それなら自衛隊員や警察官は後回しだ。先にその怪我をしている少年と女性や子供を乗せていく」
「分かりました」
自衛隊員が担架で頼斗を運んでくる。
自衛隊員は頼斗の状態を見て無線を取り出す。
「防府北基地応答せよ」
『どうした?』
「一人重症患者がいる。救急車を一台基地のヘリポートに待機させといてくれ」
『分かりました。近くの山口県総合病院に話を入れときます』
自衛隊員は頼斗をオスプレイの中に運び込む。
そのあとに続いて亜理砂がオスプレイに乗り込む。
避難民がそのあとにゾロゾロと入ってくると一気にオスプレイの中は一杯になった。
「離陸してください」
自衛隊員の声と共にハッチが閉まるとゆっくりとオスプレイは上昇していく。
そして、オスプレイはある程度高度を上げると回転翼航空機モードに移行する。
そのままオスプレイは地獄と化した名古屋を後にした。
「・・・ん?」
頼斗が目を覚ますと真っ白な天井が見えた。
「ここは何処だろ・・・」
頼斗が周りを見ると亜理砂が携帯電話を操作していた。
「あ、起きた?」
「見れば分かるだろ」
亜理砂はナースコールを押す。
『どうしました?』
「頼斗さんが目を覚ましました」
しばらくすると男性の医者がやって来て頼斗の目をライトで照らしたりして簡単な検査を行う。
「うん。これならもう大丈夫だ。あとは骨が治るまで大人しくしてるんだぞ」
医者はそのまま部屋を出ていく。
「ここは何処なんだ?」
「山口県総合病院。」
「あいつはどうなったんだ?」
「木っ端微塵に吹き飛んだ」
「上田さんは?」
「少年院に送られた」
亜理砂はテーブルに置いてあったリンゴ丸々一個を頼斗の口に押し当てる。
「ちょ、自分で食う」
頼斗は亜理砂から折れてない方の手でリンゴを奪うと丸かじりする。
「あ、そう言えば俺のドラグノフは?」
「さぁ?優香里さんが使ってるのは名古屋で見ましたよ」
「まぁ、良いか・・・」
頼斗は外を見ると雲一つも無い青空が広がっていた。
「終わったんだな・・・」
「何が終わったんですか?」
「生きるか死ぬかのサバイバルの日々が」
「そうですね・・・四国と東北の一部は封鎖したお陰で感染は無いみたいですから」
「また高校行かなきゃならないのか・・・めんどくせぇな」
頼斗はリンゴをかじった。
今まで読んでくれた皆さんありがとうございました!
お陰さまで最終回を無事に迎えることができました。




