記憶63 受け入れることのできない死
頼斗が725号室に戻った頃、4階では自衛隊員がゾンビを食い止めていた。
「いいか!?上には上がらせるな!」
「数が多すぎます!」
パンパンパンパンパン
自衛隊員は89式小銃をセミオートで撃っているが、徐々に上へとゾンビが上がってきていた。
「12階のバリケードはどうなってる!?」
「今確認します!」
一人の自衛隊員は無線で12階でバリケードを作っている隊員と連絡を取り始める。
「ある程度出来たようです!」
「11階までの取り残された生存者はいないか確認はできてるか!?」
「10階まで確認完了してます!」
「5階に退却だ!」
89式小銃を撃っていた自衛隊員は引き金を引くのをやめてはセーフティをかけると、他の自衛隊員と5階に上る。
ゾンビはエスカレーターを上がり、4階に上がってくる。
5階に上がるエスカレーターの上では自衛隊員が数人89式小銃を構えて待ち構えている。
「撃て!」
タタタタタタタ
銃弾を喰らったゾンビはエスカレーターを他のゾンビを巻き込みながら落ちていく。
しかし、すぐに他のゾンビがエスカレーターを上がってくる。
「生存者は確認できたのか!?」
「はい!11階まで生存者はいませんでした!」
「それなら私の合図で射撃を止めて12階まで一気に上がる!」
「はい!」
「射撃・・・止め!」
エスカレーターで射撃をしていた自衛隊員は射撃を止める。
「急げ!」
自衛隊員達は一気に12階までかけ上がる。
12階には警察官や、一般市民が作ったバリケードが待ち構えていた。
自衛隊員達が上がってくるとバリケードに一部を退けて人が通れるようにする。
最後の自衛隊員が通りすぎると警察官や一般市民が必要以上に商品棚や、事務机を積み重ねてロープで縛ったり、釘で打ち付けたりする。
しばらくするとゾンビが12階まで上がってくると、バリケードを引っ掻いたり体当たりを繰り返すが、バリケードはびくともしない。
「これである程度時間は稼げるな・・・」
自衛隊員や警察官、一般市民は数人の自衛隊員を残してエスカレーターを上っていく。
頼斗は部屋を出てスカイストリートに向かっていた。
エレベーターホールには男性が一人エレベーターを待っていた。
チン
エレベーターの扉が開くと、男性と頼斗はエレベーターに乗り込む。
「15階で良いですか?」
「あ、はい」
男性が15のボタンを押す。
「それにしても大変だったみたいですね」
「何のことですか?」
「うみほたるの事ですよ」
「何で知ってるんですか?」
「だって・・・うみほたる島にいたからな!」
男性は懐に隠していた9㎜拳銃を取り出すと頼斗に向かって発砲する。
パン
ビシッ
頼斗の後ろの鏡が割れる。
「クソッ!」
頼斗は男性に向かって体当たりをする。
男性は頼斗の思いもしなかった攻撃に耐えれずエレベーターの壁に後頭部をぶつける。
「うげっ」
男性は後頭部を押さえてうずくまる。
頼斗はエレベーターの15階から上のボタンを全て押すとすぐにエレベーターが16階に止まり、ドアが開く。
頼斗はすぐにエレベーターを降りるとフロアの奥に逃げる。
16階は宴会会場で様々な宴会や、葬式が開くことができるようになっていた。
頼斗はそのうちの一つに逃げ込むと、葬式の準備がされたまま放置された会場だった。
9㎜拳銃を持った男性もそのあとに続いて入ってくる。
「自分で葬式場を選ぶなんて洒落てるな」
「どっちの葬式かな?」
パンパン
「うわっ!」
男性が突然撃ち、木魚を破壊する。
「何で俺を狙うんだよ」
「簡単な話だ。お前が俺の彼女を殺したからだ!」
男性は片手で持っていた9㎜拳銃を両手でしっかりと握る。
「待て!俺は感染者は倒したが感染してない人間は殺してないぞ!」
「お前は噛まれた俺の彼女を撃った!スナイパーライフルで撃ったんだ!」
「それって完全にゾンビになってたんじゃねぇのか!?」
「違う!そんなわけない!」
パンパンパン
男性は9㎜拳銃を撃つが3発の銃弾は頼斗に当たらずパイプ椅子や壁に当たる。
(あいつ、彼女の死を受け入れてねぇな)
ガチャッ
宴会場の扉が開く。
扉から自衛隊員が一人入ってくる。
「おい。銃声が聞こえたが・・・?」
男性は9㎜拳銃を自衛隊員に向けると引き金を引いた。
パンパン
「うぎゃああぁぁああぁあ!」
自衛隊員は腕と膝に銃弾を受けて倒れる。
その頃、12階のバリケードではゾンビがバリケードをバンバン叩いている。
バキッ
バリケードの一部が壊れるが、誰も気づかない。
その壊れたバリケードから小さな女の子のゾンビが入り込んでくる。




