記憶52 命乞いの結末
少しですが性的描写があります。
バキッ
ガシャン
優香里が降り下ろした角材は無情にも新矢の横の机の上に置いてあったパソコンのディスプレイを割り、折れる。
「下手くそなんだよ」
新矢は一気に優香里を力でねじ伏せる。
「離して!このっ!」
優香里が暴れるが新矢はまったく動じない。
新矢は優香里を仰向けにして両腕を押さえて馬乗りになる。
「所詮、男と女だ」
新矢は素早くズボンのベルトを外すと優香里の両手を縛り、机の足に縛り付ける。
優香里にはこれから何をされるかははっきりと分かっていた。
「いや!やめて!」
「うるせぇ!黙れ!」
ドゴッ
優香里は腹を殴られて呼吸が一瞬止まる。
「うげぇ・・・」
優香里はぐったりとする。
新矢は優香里の服を手で裂くと顔を優香里の顔に近づけて頬を舐める。
「どうせどんなに叫んだって助けなんか来ないんだ。じっくりと楽しませてもらうぜ」
新矢は優香里のスカートに手をかけると優香里は抵抗し始める。
「うおっ!往生際が悪いぞ!」
すると、ベルトが耐えきれずに千切れて優香里の手が自由になる。
優香里は折れた角材を掴んで新矢に刺す。
「ぎゃああああ!いてぇ!」
角材は新矢の横腹に刺さり、横腹からは血が滴り落ちていた。
新矢は痛みのあまりにその場にうずくまってしまった。
優香里はすぐに立ち上がると台所に向かい、包丁を手に取り新矢の所にゆっくりと向かう。
「わ・・・悪かった!俺が悪かった!だから許してくれ!もう二度とお前の前に姿を表さない!金も渡す!」
新矢は財布の中の一万円札を痛みを堪えながら出す。
「死んで詫びて」
優香里は包丁を振り上げて降り下ろす。
ズパッ
「うぎゃぁあああ!」
包丁は新矢の肩から手の甲にかけて深さ3センチほどの傷を作った。
新矢は床を転げ回る。
「や・・・やめてくれ・・・死にたくない・・・お願いだ・・・」
新矢の目からは涙が流れている。
「ごめんね。オトウサン」
優香里は包丁を何度も新矢に刺した。
新矢からは大量の血が流れ出ているがそれでもなお包丁を何度も何度も降り下ろす。
優香里の服に、手に血がつく。
ファンファンファン
遠くからパトカーのサイレン音が聞こえてくる。
「はっ!?」
優香里は我に帰る。
「何これ・・・私がやったの・・・?」
優香里は自分が持っている血が大量についた包丁を見る。
「いや・・・そんなの嘘よ・・・」
優香里は風呂に向かうと服を脱いでシャワーを浴びて血を念入りに落とす。
そして、風呂から上がったあとは、部屋にある服を拝借してそれを着ることにした。
「この服貰います」
そう言って優香里がリビングの方を見ると新矢が倒れたまま動かずに、床に血の湖を作っていた。
優香里はリビングに向かうと大学の参考書を手に取ると台所に向かい、ガスコンロの火をつけて参考書を燃やす。
「あちっ!あちち!」
優香里はそのまま燃えている参考書をリビングのソファーに投げ捨てる。
燃えている参考書の火がソファーに燃え移り、炎がリビングを包む。
優香里はその光景を静かにしばらくの間見つめると、玄関に向かい、ドアチェーンと鍵を開けて外に出てドアを閉める。
そして、優香里はマンションの前の通りの小鹿通りに出る。
小鹿通りにはゾンビが数体彷徨いていた。
そのうちの一体が優香里に気が付いてヨロヨロと寄ってくる。
「けっ・・・化け物のクセに」
優香里はゾンビに素早く駆け寄ると頭に包丁を突き刺す。
ドサッ
ゾンビはその場に糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。
優香里はゾンビの頭から包丁を抜く。
すると、後ろの方から車のエンジン音が聞こえてくる。
優香里は素早く倒れているゾンビの服を破いて包丁をくるむとズボンの腰の部分に刺し、その上から上着を被せて隠す。
キキッ
「大丈夫か!?」
車ではなくバスが優香里の後ろで停車する。
バスが停車するのと同時に警察官が降りてきて優香里に駆け寄ってくる。
「はい。大丈夫です」
「どこも噛まれてないな?」
「はい。どこも噛まれてませんよ」
警察官は優香里をバスに乗せると、バスの運転手に合図を送る。
バスはゆっくりと走り出した。
「優香里さん!起きてください!」
「ん?・・・私寝てたの・・・?」
「そうですよ。よだれを垂らして爆睡でしたよ」
「え!?」
優香里は口元を服で拭く。
「もうすぐで名古屋につきますよ」
「え?でも、確か中国地方に向かってるんじゃ・・・」
「警察の人の無線で名古屋駅周辺のビルに生存者が集まってるらしいです。さらに、そこに自衛隊が救助に来てくれるんです!」
亜理砂は嬉しそうに優香里に話す。
バスは豊田ジャンクションに差し掛かろうとしていた。




