記憶48 マイクロバス
新東名高速道路の横から見える町からは煙が上がっていた。
高速道路上には事故車両が増えて、それを避けるために車は蛇行運転をしている。
「もうちょっと丁寧に運転してくださいよ」
「無理に決まってるでしょ!」
車は掛川パーキングエリア直前のトンネルに入ろうとしていた。
「なんかトンネルから煙出てませんか?」
優衣が車を止める。
「出てるわね」
「どうすんだよ。引き返すのか?」
「そんなわけ無いじゃない。ゆっくりと進めば事故らないでしょ」
「うわぁ・・・事故るフラグ建ててどうするんですか」
「そんなの知らないわよ」
優衣は車をゆっくりと進める。
トンネル内部は電気が消えており、真っ暗で車のヘッドライトだけが頼りだった。
「どこのホラーだよ・・・」
「斎藤さん怖いんですか?」
「ぜ、全然!」
トンネルの中間地点まで来たところでルームランプがついている車が止まっていた。
ルームランプがついている車のボンネットからは黒い煙が上がっていた。
「素通りしましょうよ」
「言われなくてもそうするわよ」
優衣が運転する車がルームランプがついている車の横を通りすぎるときに一体の火だるまのゾンビが車のボンネットに飛び付いてきた。
「ひっ!」
「わぁ!」
「きゃっ!」
優衣は慌ててアクセルを踏み込む。
グォォォ
車は急加速をする。
火だるまのゾンビはボンネットにしがみついている。
「しつこい奴は嫌いなのよ!」
優衣は急ブレーキをかける。
火だるまのゾンビはボンネットから車の前に投げ出された。
優衣はすかさずアクセルを踏み込む。
グシャッ ベキャッ
ゾンビを踏んだときに骨を砕く音や、頭を潰す音が聞こえた。
「いやっ!」
亜理砂はとっさに耳を塞いだ。
火だるまのゾンビはそのまま動かなくなり、道路上で寝転がっていた。
「早く行きましょうよ」
「暗くて運転しにくいのよ・・・」
車は再び暗いトンネル内をゆっくりと進んでいく。
すると、奥の方に出口が見える。
「出口ですよ!」
「放置車両は無いみたいだし急ぐわよ」
車は徐々にスピードをあげていく。
そして、トンネルから出る。
「眩しい!」
「無事に出られたー」
グォッ
突然優衣が車の速度をあげる。
「何なんですか!急に!」
優衣はバックミラーを見ている。
亜理砂と頼斗は後ろを見るとゾンビが数十体と車に向かっていた。
「もしトンネル内で車から降りてたら・・・」
「言わないでください・・・想像したくもないです」
頼斗達が乗る車が遠州森町パーキングエリアに差し掛かろうとしていたとき、浜松浜北料金所付近の浜松市立中瀬小学校では避難民が集まってマイクロバスで脱出しようとしていた。
マイクロバスの中には老若男女合わせて25名程が乗っていた。
それに合わせて噛まれた男性が一人だけ噛まれたことを隠してマイクロバスに乗っていた。
「おい!どこに逃げるんだ!」
血の付いたバットを持った男性がマイクロバスの運転手に質問を言う。
マイクロバスの運転手はバスのエンジンをかける。
「中国地方に逃げます!ラジオでは感染はないと伝えてました!」
マイクロバスの外では警察官がM2013をゾンビに向けて発砲していた。
「早く新東名高速道路から逃げてください!あとはあなた方だけです!」
警察官はM2013をリロードしながらマイクロバスの運転手に向かって言った。
「あんたはどうするんだ!?」
パンパンパン
警察官は迫ってくるゾンビに向けてM2013を発砲するが頭にはなかなか当たらずにいた。
「私は周辺に生存者がいないか確認してから避難しますので先に行ってください!」
「わかりました!」
マイクロバスの運転手は警察官に敬礼をしてバスを発進させた。
マイクロバスはゾンビが蠢く町を走り、浜松浜北料金所に向けて走る。
浜松浜北料金所のバーは降りていたがバーを折って料金所を突っ切った。
マイクロバスの後ろでは噛まれたことを隠していた男性が苦しそうに息を荒くしていた。
「大丈夫ですか?」
近くの女性が男性に声をかける。
周りの人も心配をしてくれている。
「大丈夫・・・です・・・ゴボォ」
男性が血を大量に吐いた。
「うわぁぁぁ!こいつ感染してやがる!」
「早くバスを止めろ!」
バスの中は叫び声や悲鳴で賑やかになっていた。
「どけ!」
バットを持った男性が血を吐いた男性に近寄るとバットを振り上げた。
「お前に恨みはないがごめんな」
男性がバットを降り下ろすが、先に男性が飛び掛かってきた。
「なんだ!?まさか!ゾンビに!?」
バットを持った男性が血を吐いた男性がゾンビになったことに気がついたがすでに遅かった。
ブシャァァ
バス内に鮮血が飛び散る。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁ!」
バスの中はゾンビと生存者が入り交じるパニック状態に陥った。
運転手はバスを止めればいいのかそのまま走らせれば良いのか分からずにいると、本線に合流してしまった。
すると、後ろからは乗用車が迫ってきていた。
「生存者!?」
マイクロバスの運転手がそう思った瞬間喉元にゾンビが噛みついてくる。
「うぎゃぁぁぁぁ!!」
マイクロバスの運転手は痛みに耐えきれずハンドルから手を離す。
マイクロバスは制御を失い、中央分離帯にぶつかりって道を塞ぐようにして横転した。
すぐ後ろの乗用車は急ブレーキをかけるが間に合わなかったのか横転したマイクロバスに激突した。
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