記憶44 精神崩壊
頼斗達は爆風によって大きく変わってしまった町を歩く。
しかし、高速道路の高架橋は所々崩れてしまってはいるがほとんどのところは崩れてはいなかった。
「ここは何処だ・・・?」
「知りませんよ・・・でも、とにかく優衣さんは何処かで休ませた方が良いみたいですけど・・・」
優衣は和花の一件からずっと無言で歩いており、頼斗や亜利砂が話しかけても何も反応せずにいた。
すると、青葉警察署が見えてくる。
警察署の建物は窓ガラスは全て割れていたが、建物自体には特に何も損傷はなかった。
「あの中で休みましょうよ」
「そうだな」
警察署前に止まっている一台のパトカーは横転していた。
警察署内に入ると真っ暗だった。
「暗いな・・・」
「携帯のカメラのフラッシュでも・・・」
亜理砂は携帯のカメラ機能を起動させるとフラッシュをつける。
警察署内が少し明るくなると数体の警察服を着たゾンビが受付の奥でさ迷っていた。
パンパンパンパンパン
突然優衣がゾンビに向けてM2013を撃ち始める。
銃弾はゾンビや壁に当たり、ゾンビは倒れるが優衣はマガジンを使いきってしまった。
「何してるんですか!?」
「何って・・・殺してるだけだよ?」
「弾の節約してくださいよ!そんなに乱れ撃ちしていたら弾がいくつあっても足りませんよ!」
カチャッ
優衣がM2013の銃口を頼斗に向ける。
「え!?ちょ!?」
「私は生きてる人間だって楽勝で殺せるのよ」
頼斗が優衣の目を見ると生気を完全に失っていた。
「・・・とにかく、今はここで休みます」
「あ、そう。好きにしなさい」
優衣はそう言うと、警察署の奥へと進んでいった。
「くっそ!」
頼斗は受け付けにあるベンチに座る。
亜理砂も近くのベンチに座る。
「あれはまずいな・・・」
「専門家じゃない私でも分かりますよ。早くカウンセリングでもしてあげないと・・・」
「・・・とにかく小笠原さんを探すか・・・今の状態じゃ何するか分からないからな」
頼斗はドラグノフを持つと、警察署の奥に進む。
亜理砂もレミントンM870を持つと、頼斗についていく。
警察署の奥に進むと、階段が見えてきた。
パンパンパン
上の階から銃声が聞こえてくる。
「急ごう!」
頼斗と亜理砂は階段を上っていく。
すると、ゾンビが数体頭に銃弾を喰らって倒れていた。
ギィ
扉が開くおとが頼斗と亜理砂がいる4階から聞こえてくる。
「こっちだ!」
頼斗と亜理砂が音のした方向に進むと署長室の扉が少しだけ開いていた。
キィィ
頼斗がゆっくりと扉を開けると優衣がM2013を頭に突きつけて外を見ながら立っていた。
「優衣さん!?」
「・・・亜理砂ちゃん?」
「そうですよ!何してるんですか!?」
「見てわからないの?自殺しようとしてるのよ」
「何でそんなことするんですか!止めてくださいよ!」
「・・・もうね、訳がわかんないの」
「え・・・?」
「私は普通に警察官として過ごしたかったの・・・でも・・・現実は違ったの。周りではどんどん人が死んでいって遂には先輩も死んだ!普通に考えれば誰でも死にたくなるわよ!」
「落ち着いてください!死んでも良いことはありませんよ!」
頼斗はドラグノフを静かに握り締める。
「良いことがない?死ねばこんな現実から逃げれるのよ!」
「目の前のことから逃げないでくださいよ!優衣さんが死んだら私達はどうすればいいか分からなくなります!優衣さんが私達の道しるべになってください!」
「・・・でも・・・」
優衣は動揺し始めた。
そして、頭に当てていたM2013の銃口が少し頭から離れる。
頼斗はその時を見逃さなかった。
素早くドラグノフを構えるとスコープを覗いてM2013に標準を合わせて引き金を引いた。
タン
ガギィン
「うっ!」
優衣はM2013を弾き飛ばしてしまい、割れたガラスから銃が落ちていく。
「今だ!押さえるぞ!」
頼斗と亜理砂は持っていた銃をその場に捨てると優衣のところに走っていくと優衣を押さえる。
「離せ!」
「大人しくしてください!」
「うるさい!離せって言ってるでしょ!」
「いい加減大人しくしてください!」
優衣は頼斗に押さえられてもなお暴れている。
「離せ!」
パァン
亜利砂が優衣の頬を平手で叩いた。
「いい加減にしてください!そんなワガママ通じると思ってるんですか!?死にたくなくても死んだ人たちは山のようにいるんですよ!?」
優衣の目から涙が落ちる。
「・・・そうだよね・・・先輩も・・・」
「そうですよ。和花さんも優衣さんには死んでほしくないはずですよ」
優衣は涙をぬぐう。
「そうだよね。私がしっかりしなくちゃダメだよね」
優衣は立ち上がる。
亜理砂と頼斗も立ち上がる。
「これで大丈夫なのか?」
そして、頼斗達は青葉警察署を後にした。
感想待ってます。




