記憶43 本州完全閉鎖・首都圏殺菌作戦
今回はいつもより少し長めです。
和花と利之がバイクに乗って四本足のゾンビから逃げている頃、北海道の札幌市にある札幌市役所に急きょ作られたバイオハザード対策室では総理大臣が決断を迫られていた。
「総理!いい加減にご決断を!」
「しかし・・・まだ首都圏等には生存者が・・・」
「そんなことをいっている暇は無いのですよ!すでに静岡県にも感染者が広まっているのですよ!」
総理大臣である大倉の周りには官房長官や、各省のトップが集まっていた。
「総理!今すぐ本州完全閉鎖のご決断を!」
「・・・仕方がない・・・今をもって本州完全閉鎖を行う!」
大倉がその言葉を言うとバイオハザード対策室では慌ただしくなり、無線や電話で通達を始めた。
その数分後沖縄の普天間基地や、日本の自衛隊基地からFー35戦闘機やAHー1Sが飛び立った。
Fー35戦闘機は四国と本州を結ぶ橋に向かって飛ぶ。
そして、明石海峡大橋にロックを合わせて対戦車ミサイルを放った。
ドォォォン
明石海峡大橋に命中して、命中したところが崩れて瓦礫が海に落ちていく。
その他の本州と四国、九州を結ぶ橋が戦闘機によって落とされる。
北海道でも本州と北海道を結ぶ津軽海峡線も自衛隊によって爆破され、海底に沈み他の本州と結ぶ海底トンネルはすべて爆破され海底に沈んだ。
「総理、無事に本州を完全閉鎖することができたようです」
「そうか・・・では、最後に首都圏を殺菌する」
「それは・・・世界各国や、国民から批判が・・・」
「こうなれば仕方ないだろ・・・責任は私が全て取る」
「・・・本当に良いんですね」
大倉は無言で頷く。
利之が運転するバイクは優衣の運転するワンボックスカーの横にピッタリとくっついて走っていた。
コンコン
和花がワンボックスカーの窓を叩く。
すると、運転席のパワーウィンドウが開く。
「そっちに飛び移りたいから後ろのスライドドア開けて!」
優衣が頷く。
ガラッ
後ろのスライドドアが開く。
利之はギリギリまでバイクをワンボックスカーに寄せると、利之がワンボックスカーのドアを掴む。
「早く飛び移れ!」
「ちょっと待ってよ!・・・流石に恐いわよ!」
バイクとワンボックスカーは時速100㎞で東名高速道路を走り、後ろには四本足のゾンビが追いかけている。
「田原さん!」
亜理砂が手を差し伸べる。
和花は腹をくくってバイクからワンボックスカーに飛び移る。
「いてっ!」
無事になんとか和花はワンボックスカーに飛び移ることができた。
利之が運転するバイクは和花が飛び移った時に少しバランスを崩したがなんとか持ちこたえた。
「辻さん!」
亜利砂が手を差し伸べる。
しかし、利之も少し飛び移るのに戸惑っていた。
「行くぞ!」
「良いですよ!」
利之が遂に腹をくくってバイクから飛び移ろうとしたとき急に視界が真っ白になった。
「何だ!?」
「うわっ!」
「眩しい!」
視界が戻ると、優衣はバックミラーで首都圏の方にキノコ雲が見えた。
「嘘でしょ・・・」
亜理砂は手を伸ばしている。
「早く飛び移ってください!」
ゴォッ
すると、爆風が頼斗達を襲う。
亜理砂の目の前にいた利之が吹き飛ばされるのがしっかりと亜理砂は見ていた。
その直後にワンボックスカーも爆風により、紙みたいに飛ばされた。
「いってぇ・・・」
頼斗が目を覚ますとそこは高速道路のど真ん中だった。
「みんなは!?」
頼斗が周りを見渡すと頼斗が乗っていたワンボックスカーが先の方に横転していた。
頼斗は立ち上がると身体中の痛みをこらえながらワンボックスカーに向かう。
その途中で四本足のゾンビであろう肉塊が高速道路上に転がっていたが、気にも止めずにワンボックスカーに向かう。
ワンボックスカーにたどり着くと、亜理砂と優衣がワンボックスカーに寄りかかるようにして座っていた。
「大丈夫ですか!?」
「・・・なんとかね」
「こっちも大丈夫です」
「田原さんや、辻さんは・・・?」
「辻さんは見つけたわ・・・」
「何処ですか!?」
「車の後ろよ・・・」
頼斗は車の後ろに回り込む。
すると、利之が倒れていた。
「辻さん!」
頼斗は近寄り、利之を起こそうとするが、体は冷たくなっていた。
「え・・・?・・・嘘だろ・・・」
頼斗は利之の体を必死に揺らすが、利之の体はピクリとも動かない。
頼斗はゆっくりと立ち上がると車に戻る。
「・・・辻さん多分即死だったと思うよ」
「もう・・・良いです。田原さんは何処ですか?」
「・・・分かりません・・・探さないと・・・」
頼斗達三人は痛む体を無理矢理動かして和花を探す。
すると、高速道路でトラックが横転しており、荷台にあったであろう大量の角材が高速道路上に散らばっていた。
「まさか・・・この角材の下・・・」
「とにかく探してみましょう」
頼斗達は角材を退かしていき和花を探す。
亜利砂が小さめの角材を退かすと手が見えた。
「ひっ!」
亜理砂はその場で腰を抜かしてしまう。
「亜利砂ちゃん!どうしたの!?」
優衣も角材の中から出ている手を見る。
「とにかく角材を早くを退かしましょ」
角材を三人で退かしていくと、見覚えのある人だった。
「先輩・・・!」
ピクッ
角材に埋まっている和花の手が動く。
「!」
三人は急いで角材を退かすと、なんとか上半身は出すことができた。
しかし、下半身はかなり大きい角材がいくつも重なっており、人間の力では退かせそうになかった。
「引っ張ってみましょうよ!」
「そうだな。それが早いな」
優衣が和花の手をつかんで引っ張ると、上半身だけが角材の中から出てきた。
和花の上半身の断面は無理矢理ちぎれたような感じで、血が流れ出ていた。
「うわぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「いやぁぁぁぁ!」
優衣は掴んでいる和花の手を離すと、腰を抜かしてしまう。
「嫌だよ・・・もうこんなの嫌だよ・・・」
ガシッ
和花が突然動き、優衣の足を掴む。
「ひっ!?」
和花の口が微かに動く。
「お・・・ねがい・・・こ・・・ろ・・・して」
ゴブッ
和花の口から大量の血液が吐き出される。
「先輩・・・」
優衣はM2013を取り出すと、和花の頭に向ける。
「今までお世話になりました!」
優衣は涙を目に溜めながらM2013の引き金を引いた。
パン
乾いた銃声が静かになってしまった町に響き渡る。
まだ最終回ではないですよ。




