記憶42 スズキ・GSX1300Rハヤブサ
和花が運転するワンボックスカーは上野駅まで出てきていた。
路上には街灯に激突したままの車や、ドアが開けっぱなしの車が放置されており、その周りには車のエンジン音につられてきたのかゾンビが集まっていた。
その横をワンボックスカーは通り過ぎる。
「どこに逃げる気ですか?」
「四国かな?」
「でも、最悪の場合明石海峡大橋とか落としてそうだけどな」
「今更引き返すにも引き返すところが無いから進むしかないんだけどね」
車は世田谷通りを進む。
すると、一台の乗用車が路肩にハザードランプをつけて止まっていた。
「来るときあんな車止まってた?」
「止まってなかったと思いますけど・・・」
和花は車を止め、車を降りる。
「優衣、運転席に座っていつでも発進できるようにしときなさい」
「分かりました」
優衣が運転席に座る。
「俺も付いて行ってやるよ」
「別に良いのに」
利之も車から降りて和花についていく。
和花はハザードランプが付いたままの乗用車に近寄るとボンネットが何か大きいもので潰されたような形跡があった。
「車内には・・・死体だけね・・・」
「それよりこのボンネットはどうしたんだ?へこみかたが異常だぞ」
「・・・特に何も無さそうだから行く―――」
ゴシャァン
突然二人の前の乗用車が大きい何かに潰される。
「な!?」
「え!?」
二人はその大きい何かに見覚えがあった。
「俺たちを追いかけた四本足の化け物!」
「生きてたのね!」
「クソッタレ!」
利之はグロック18のマガジン一つ分の弾を四本足のゾンビに喰らわせる。
しかし、四本足のゾンビはびくともしない。
「優衣!逃げなさい!」
和花が優衣に向かって言うが車は動かない。
「早く逃げなさい!今、全員で逃げれば追いかけられて共倒れよ!」
そう言うと車は急発進をした。
「おいおい、俺達はどうするんだよ」
「あの子達が逃げる時間を稼ぐのよ」
「囮役かよ」
利之は空になったグロック18を捨てるとM2013を取り出す。
「田原、アイツが潰してる車から離れろ」
和花は利之から少し離れる。
パン
利之が撃った銃弾は潰された車から流れ出していたガソリンの溜まっているところに当たり、火花が一瞬飛び散る。
そして、気化していたガソリンに引火する。
ドォォォン
四本足のゾンビが潰している車が爆発する。
しかし、四本足のゾンビは炎の中から突進をしながら出てくる。
「うわっ!」
利之と和花はなんとか避けると四本足のゾンビは止まれずに通りに面している居酒屋に突っ込む。
ガシャン
四本足のゾンビは突っ込んだまま挟まって抜けずにいた。
「今のうちに逃げるぞ」
「どうやって!?」
「そうだな・・・」
周りを見渡すと少し先にトラックの荷台にバイクが何台も積んであるのが見えた。
「あのトラックまで走れ!」
「え!?トラックで逃げる気!?」
「バカか!その荷台のバイクだよ!」
二人はトラックまで走った。
トラックまでたどり着くと和花はトラックの荷台に乗る。
「鍵はついてる!」
「それじゃあエンジンをかけてトラックの荷台から降ろすぞ!」
和花はトラックからバイクを押して乱暴に降ろす。
ガシャン
「おい!ハヤブサが壊れるだろうが!」
「ゆっくり降ろしてる時間なんて無いわよ!」
利之がバイクを起こすとバイクに股がる。
「バイク運転できるの?」
「あぁ。免許は持ってるからな。・・・まさか念願のハヤブサに乗れるとはな」
「良いから出しなさい!」
「分かったよ」
その時、挟まっていた四本足のゾンビがようやく抜け出した。
抜け出すと二人が乗るバイクに向けて突進してくる。
フォォォォォ
利之はバイクを走らせる。
その後ろには四本足のゾンビも追いかけてきている。
バイクは環7通りに入るとひたすら走り続ける。
「おい!アイツらが高速に乗ったか電話で聞け!」
「でも・・・電波が・・・」
「良いからやってみろ!奇跡的に繋がるかもしれないだろ!」
和花は片手は利之を掴んだままもう片方の手で携帯で優衣に電話を掛けてみる。
すると、奇跡的に電話が繋がる。
「優衣!?」
『どうしたんですか先輩!?』
「今高速に乗ってる!?」
『はい。今用賀パーキングエリア付――』
プー、プー、プー
電話は突然切れてしまった。
和花が携帯を見ると圏外となっていた。
「今何処だって言ってた!?」
「用賀パーキングエリアだって言ってた!」
「それなら高速に乗るぞ!」
利之はさらにスピードを上げた。
それでもなお四本足のゾンビは追いかけてくる。
「しつけぇな!こっちは目が開けられなくなるからそこまでスピード出せねぇのに!」
環八東名入り口の交差点までバイクは来たが、四本足のゾンビはまだ追いかけている。
「このままじゃアイツらに追い付く!」
車は東名高速道路に入る。
東名高速道路を走るが、一向に四本足のゾンビは追いかけてくる。
すると、多摩川を渡った辺りで目の前に走行中のワンボックスカーが見える。
「追い付いちゃったじゃない!」
「それよりこっちの方がヤバイぞ・・・」
「何!?」
「ガソリンがもう尽きる・・・」
感想など待ってます。




