記憶31 恩人への恨み
ヘリポートでは信じられないことが起こっていた。
「どんな冗談だよ・・・」
「う・・・うそ・・・」
和花が放った銃弾は白衣を着た女性の元まで届かずにその手前でピタリと止まり地面に落ちた。
カラン
「テメェは何なんだ!」
「何なんだ?私はこのα(アルファ)ウィルスを作った最上 千秋(さいじょう ちあき)だけど?」
「・・・ってことは環境保護団体グリーンガードの親玉って訳?」
「正解!でも、このバイオハザードは部下が勝手にやったんだけどね」
「ん・・・?最上って手配書にあったような・・・」
優衣がM2013を片手で向けながらもう片方の手で警察官に支給されているスマートフォンを操作する。
「・・・全世界指名手配犯になってる」
「へぇ~、そこまで凄いことになってるんだ」
千秋は他人事のように言っている。
「何でその指名手配犯がうみほたる島にいるんだ?」
「そりゃ人を探しにだよ。まぁ、見つかったから良いんだけどね」
「亜理砂ちゃんのことね・・・」
「せっかく命の恩人に合えたはずなのに逃げられたらたまったもんじゃないね~」
突然優衣がM2013の引き金を引いた。
パン
しかし、弾は千秋には届かず手前で止まると地面に落ちた。
「無駄だって。学習能力なし?」
「命の恩人って言ったな。それはどういう意味だ?」
「2年前の先沢村封鎖・壊滅事件で助けたのよ」
「2年前?」
「まぁ、普通の人は村の事すら知らないだろうから良いけど」
すると、ヘリポートに利之と亜理砂がやって来る。
「お!戻ってきた!」
千秋が頼斗達の後ろを指差す。
頼斗達はその指につられて後ろを見た。
パシッ
「へ?」
後ろを振り向いた瞬間に頼斗達が構えていた銃が千秋に捕られる。
「まったく・・・いつまでも向けちゃって・・・」
千秋は両手にM2013を持って肩にはドラグノフを背負っている。
「くそっ!返せ!」
頼斗は無謀にも千秋に突っ込む。
ガァン
「グガッ・・・!」
頼斗が頭を突然鉄パイプで殴られる。
しかも、その鉄パイプは空中に浮いていた。
「お~、気絶しないとは良い頭持ってんだね」
千秋はパチパチと拍手をしている。
「斎藤くん!大丈夫!?」
「思ったよりは大丈夫です・・・」
パン
また、銃声がヘリポートに響き渡った。
銃を撃ったのは亜理砂だった。
亜理砂は利之の腰にささっていたグロック18を抜いて千秋に向けて撃っていたのだった。
しかし、弾はやはり千秋の元には届いてなかった。
「それはないよ~。命の恩人に向かって銃を撃つなんて」
「私にはあなたを殺す理由があります。それは・・・あなたの開発したウィルスで私のお父さんとお母さんが死んだことです!」
「・・・」
千秋は急に無言になる。
「そう・・・それはごめんね・・・」
「ごめんねですんだら銃なんて撃ってませんよ!」
「・・・良いわ。殺しても良いわよ」
「!?」
先程まで銃弾を止めていた人が急に殺しても良いよと言い出したのだから頼斗達は驚いた。
「でも、ただでは殺されないわよ。この周辺はゾンビは居ないみたいだし、中央管理棟の正面広場で待ってるから殺したくなったら何時でも来なさいよ」
千秋はヘリポートの縁まで歩いていくと飛び降りた。
和花は慌てて下を見るがしたの方で千秋が手を降っているのが小さくだが見えた。
「大丈夫そうね・・・」
「銃・・・持っていかれましたね・・・」
「今はそれより自衛隊員を下に運びましょう」
自衛隊員に近づくと自衛隊員はスースー寝息をたてていた。
「気絶してそのまま寝たんですね・・・」
「銃声でよく起きなかったわね・・・」
利之が自衛隊員を背負うと頼斗達はエレベーターホールに向かった。
下の階に降りると自衛隊員や警察官が待ち構えていた。
「何があった?」
「いや・・・そんなことよりこいつを何とかしてくれ」
利之が背負っている自衛隊員を見せる。
自衛隊員が担架を持ってきて気持ち良さそうに寝ている自衛隊員を運んでいった。
周りには避難民の野次馬が集まっていた。
「場所を変えて話そうか」
頼斗達は近くの法律事務所の中に連れていかれた。
ゾンビどこに行った?
(゜Д゜≡゜Д゜)?
感想待ってます。




