記憶29 消えた自衛隊員
「最初はどうなるかと思いましたよ」
「まぁ、何とか入れたから良かったじゃない」
そう言いながら優衣がコーヒー店のカウンター席に座る。
中央管理棟は5階までがいろんな商業施設が建ち並んでいるエリアでは、コンビニやレストラン、書店、洋服店と様々な店がある。
5階より上はこのうみほたる島を管理する施設の交通管理局や上下水道管理局等が最上階まで続いている。
そして、屋上にはヘリポートがある。
「それにしても救助はどうなってるんですかね?」
「さぁ?誰かに聞けばいいんじゃない?」
「・・・めんどくさいんで良いです」
「そう?聞いとけばいいのに」
「もしかして先輩が知りたいだけじゃないですか?」
「・・・バレた?」
「バレバレですよ」
和花はアイスコーヒーを飲む。
「服を変えたいですね・・・」
亜理砂が自分の返り血を少し浴びている服を見る。
「それには賛成だ」
「そうね・・・ここなら服にも困らないと思うからね」
「あ、俺金持ってませんよ?」
「出世払いにしときなさい」
「出世する気無いんですけどね」
頼斗達はコーヒー店から出ると4階のファッションコーナーに向かう。
ファッションコーナーはすでに服を何着か持っていかれている様子だった。
「・・・好きに選べますね」
「それじゃあ各自好きに服を選びましょ」
頼斗達はそれぞれ散らばっていった。
10分後解散した所に再び頼斗達は集まった。
「皆フツーだな」
「今時って感じですね」
「何か詰まんないな・・・」
「良いんじゃない?」
「それより警察の制服着てなくて良いんですか?」
「大丈夫!警察手帳ちゃんと私は持ってるから」
「・・・」
優衣はうつ向く。
優衣は中央管理棟に来るまでの途中のパーキングエリアで警察手帳を落としてしまっている。
「そ、それより避難してきた人たちは何処なんでしょうかね?」
優衣は無理矢理話を変える。
「さぁ?居るとしたら2階じゃない?」
「そうだろうな。2階は飯を食うところが充実してるからな」
頼斗達は2階に向かう階段に向かって歩き出した。
「待て!」
利之が突然頼斗達を止める。
「何なんですか?」
「佐々木と、斎藤は銃を隠しとけ」
「何でですか?」
「馬鹿!奪い合いにでもなったら人を撃つことになるんだぞ」
「・・・でも入ったときに見られてますよ」
「・・・それなら銃弾を隠しとけ。俺と婦警の銃は弾が空っぽだからな」
「わかりましたよ」
頼斗はマガジンを2個取り出すと近くの処分品セールのワゴンの中に隠す。
亜理砂も散弾を取り出すとレジスターの中に隠す。
「すげぇ所に隠すね・・・」
「へ?」
亜理砂は和花に言われても特に自覚はなかった。
頼斗達は2階に降りていった。
2階の家具売り場には人が何十人も集まっていた。
その中には89式小銃を持った自衛隊員もいた。
和花は一人の自衛隊員に情報を聞きに行った。
「うみほたる署交通科の田原 和花です。現在の状況を教えてください」
和花は警察手帳を自衛隊員に見せる。
「状況もなにも・・・見ての通りだよ。避難民が50人程度で自衛隊員、警察官が合わせて15人かな?」
「救助は来てないんですか?」
「5時間前の救助ヘリが来てからはぱったりと来なくなったよ」
「そうですか・・・」
和花は頼斗達のところに戻ると聞いたことをそのまま話した。
「もうすぐ来るでしょ」
「そうですよね。今は給油してるだけですよね」
「いや・・・そうとは限らないぞ」
「何でですか?」
「せいぜい65人位だろ?そんな人達のために救助をよこすと思うか?それに今外は晴れているんだぞ」
「まぁ・・・それはそうですけど・・・」
すると、一人の自衛隊員が寄ってくる。
「ちょっと良いかな?」
「何ですか?」
「頼み事があるんだが・・・」
「まさか見回りじゃないですよね?」
利之が聞く。
「え?どうしてわかったんだ?」
「いや・・・前にも頼まれてるんで・・・」
「それだったら話が早い。屋上で見張る奴が突然消息を絶ったんだよ。それで見てきてほしいんだ」
「それは良いですけど私、優衣、辻さんにマガジンを一つずつ下さい。あ、辻さんはグロック18です」
「ふ~、仕方ない・・・待ってろ」
自衛隊員は何処かに行くと、しっかりマガジンを持って帰ってきた。
「これでいいんだろ。エレベーターを使えば一気に屋上まで行けるからな」
自衛隊員は何処かに去っていった。
頼斗達はエレベーターホールに向かった。
感想待ってます。




