記憶24 コンテナトレーラー
うみほたる中央総合病院の地下駐車場では避難民や自衛隊員が集まっていた。
「ここから早く逃げないと不味いな・・・」
利之が呟く。
地下駐車場から病院の地下1階に出るドアはバンバンとゾンビが扉を叩いていた。
「今から車で逃げます。それぞれ車に乗り込んで私たち自衛隊の装甲車の後をついてきてください。人の車でも構いません」
避難民がざわめきながら車に乗り込む。
中にはガラスを割って乗り込む人もいた。
「良いんですか?」
頼斗は病院に来るときに乗ってきたワンボックスカーに乗りながら聞く。
「緊急事態だから良いの。でも、壊した車の持ち主から後で修理費を請求されるかもしれないけどね」
「緊急事態って凄いですね」
「まぁ何でもできるって訳じゃないけどね」
「分かってますよ」
和花が車の運転席に乗り込むと、差しっぱなしの鍵を回す。
ドルゥン
車のエンジンがかかる。
他の車も準備が出来ているらしく、全部で装甲車も含めた5台で病院を脱出することにした。
自衛隊員が地下駐車場のシャッターになにかを仕掛けている。
ドォン
爆発と共にシャッターが外れる。
外れたところからは数体のゾンビが侵入してくる。
タタタタタ
自衛隊員が素早く入ってきたゾンビを89式小銃で片付けた。
自衛隊員が装甲車に乗り込むと、すぐに装甲車は進みだして地下駐車場から出た。そのあとに続いて他の車も地下駐車場から出た。
和花が運転するワンボックスカーは車列の一番後ろになった。
車列は道の真ん中を一列になって進む。
道の端にはゾンビが数体うろついている。
「よく考えたよね」
「何をだ?」
「この車列」
「どういう意味だ?」
「まだわかんないの?この車列は先頭の装甲車が道を歩いているゾンビを轢いて後ろの乗用車にダメージを与えないようにしてるってこと」
「あー、なるほど」
車列は南エリアの高層ビルが立ち並ぶエリアに入る。
後ろでは亜理砂と頼斗がぐっすり眠っていた。
外はうっすらと明るくなり始めていた。
「何処に向かってるんですかね?」
「さぁね。多分中央管理棟じゃないの?」
中央管理棟は役所に色んな物を詰め込んだ建物で、電気配給の管理や、水道、ガスも管理しており、さらには交通網(信号機や東京湾アクアライン、島営バス)まで管理している。
「まぁ、そこまでいけば後は救助を待つだけになるでしょうけどね」
「それだけなら良いんだけどな」
車内は頼斗と亜理砂の寝息、が聞こえるだけの静かな空間になった。
「あ、もうすぐ俺の働いてる新聞社だ」
外を眺めていた利之が呟く。
「え?どこですか?」
優衣も外をキョロキョロと見る。
しかし、外には路肩に止められた車と歩道や、車道を歩くゾンビが見えるだけだった。
「ちょっと、ガソリンが少ないからクーラー消すわよ」
和花がエアコンを消して窓を開ける。
窓を開けると、外から大量の生ぬるい風が入ってくる。
「こうして窓を開けると、外の音がよく聞こえますね」
優衣が言う。
その言葉で利之も外に耳を傾ける。
外からは、前を走る車のエンジン音と、時々そばを通り過ぎるゾンビの「あ~、う~」しか聞こえない。
グォォォ
「今何か聞こえなかったか?」
「何がです?」
「いや・・・何かトレーラーのような音ってか・・・そんな感じの音」
「聞こえませんでしたよ」
「聞こえなかったわよ」
「気のせいかな?」
車列は少し大きめの交差点に出ようとしていた。
すると、突然コンテナトレーラーが横から出てきて装甲車に衝突する。
ガシャン
装甲車は横に何回もゴロゴロ転がり、路肩に止められた車に激突してひっくり返った状態で止まる。
コンテナトレーラーは交差点で道を塞ぐようにして停車する。
キキーーー
装甲車の後ろを走っていた車が急ブレーキをかけるが間に合わずトレーラーの後ろの長いコンテナに衝突する。
ガシャン
その後ろを走っていた車も衝突する。
ガシャン
それより後ろの車はなんとかぶつかるギリギリのところで止まることができた。
「何なんだよ!」
「バックしてください!」
「分かってる!」
和花は車をバックさせる。
今度は路地から引っ越し業者のトラックが2台出てきて道を塞ぐようにして停車する。
「嘘でしょ!?」
ガシャン
和花はブレーキを踏むのが遅れてしまい、トラックにぶつかる。




