記憶19 男としての大切なこと
310号室では、和花と優衣が女子中学生から話を聞いていた。
「あなたの名前は?」
「野田 冬美(のだ ふゆみ)です」
「じゃぁ、冬美ちゃん。友達の名前は?」
「小津 朱鳥(おづ あすか)です」
「何処から居なくなったの?」
「第二病棟で、飲み物を取ってくるって言ってそれっきり・・・」
「・・・探すなら第二病棟ね」
「手分けして探すわよ」
「俺らもか!?」
「斎藤くんと、亜理砂ちゃんのペアで探して。私は優衣と探すから」
「俺は・・・?」
「辻さんはここで冬美ちゃんと待機してて。それと、拳銃を携帯してね。誘拐とかだったら危険だからね」
利之が亜理砂にグロック18を渡す。
「マガジンはそれが最後だから大事に使えよ」
「分かりました」
それぞれのペアは部屋から出る。
すると、男性が一人部屋の前に立っていた。
「どうかされました?」
優衣が聞くが、男性は無言のまま歩いていってしまった。
和花と優衣ペアは3階から上、頼斗と亜理砂のペアは2階までを担当することになった。
頼斗と亜理砂は2階を探していた。
頼斗は右手に9㎜拳銃、左手にLED懐中電灯を持っていた。
病院内は電気節約のために、誰もいないフロアである1階と2階は電気が消えている。
「夜の病院は怖いですね・・・」
亜理砂が頼斗に引っ付く。
「暑いから離れろよ」
「あ、すいません」
亜理砂は頼斗から離れる。
「このフロアは誰もいないな」
「そうですね。全部の病室に鍵がかかっていますからね」
「一階に降りるぞ」
二人は階段を使って1階に降りる。
「ここも真っ暗だな」
「そうですね」
一階は様々な科があり、それぞれの科の前には椅子が並んでいた。
「ここまで人がいないと不気味ですね」
「いつもは人で賑わってるんだからな」
ガシャン
「今の音・・・何?」
「さぁ・・・?内科からだな」
頼斗は銃を構えながら内科のドアを開ける。
「後方は任せるぞ」
「はい」
亜理砂もグロック18を構えている。
二人が内科の診察室に入ると、誰もいない。
「誰もいないですね」
「ん?奥で明かりがついてるな・・・」
診察室の奥に進むと、男性が一人本を読んでいた。
「誰です!?」
二人は銃を男性に向ける。
「そんな物騒なもん向けないでくれ」
男性がすごい量の汗をかきながらこちらを向いた。
「・・・ここで何してるんですか?」
「本を読んでいただけだけど?」
「・・・それってエロ本じゃないですか?」
「そうだけどなにか?」
亜理砂はゴミをみるような目で男性をみる。
「ちょっと!そんな顔するなよ!男にとって必要なことなんだ」
「そうなんですか?」
亜理砂は頼斗を見る。
「・・・まぁ必要かな」
亜理砂はゴミをみるような目で頼斗を見る。
「・・・まぁこの話は置いといて、あなたは誰です?」
「俺はな、様々な武勇伝を持つ男。中野 卓(なかの たく)だ」
「武勇伝ねぇ・・・」
「ほ、本当だぞ!外にいる化け物を100体は倒したんだぞ!」
「はいはい。分かりましたから一度ふれあい広場に戻りましょう」
ふれあい広場に戻る間もずっと卓は自分の武勇伝を話していた。
「俺はなぁ、高校の時は暴走族を相手にしたこともあったな・・・その時は大変だったよ。何せ援軍まで駆けつけるからな。まぁ、全員倒してやったけどな」
「・・・」
頼斗と、亜理砂は完全に無視をして階段に向かっている。
「おいおい!無視すんなよ。全部事実だぜ」
「・・・」
それでも二人は無視をし続ける。
「俺が本気になれば外にいる化け者共は楽勝だって」
「あのーひとつ良いですか?」
「どうした?お嬢ちゃん」
「黙っててもらえます?」
「・・・すいません」
三人は階段に無言のまま向かう。
バチチッ
「ぐぎゃ・・・」
突然後ろから声が聞こえた。
頼斗と亜理砂が後ろを見ると、卓が倒れていた。
バチチッ
「うぐっ・・・」
頼斗の横の亜理砂も倒れる。
頼斗は9㎜拳銃を取り出すと回りを見る。
「誰だ!」
すると、廊下に放置されていたベットの影から黒い人影が飛び出してくる。
「くっ!」
頼斗は引き金に指をかけるが、引き金を引くより先に黒い影は頼斗の懐に入っていた。
(早いっ!)
バチチッ
「あぎゃあああああ!」
頼斗もその場に倒れこんだ。
黒い影は手に持っているスタンガンを見ると、倒れている三人を見る。
「今夜はフルコースが楽しめそうだ」




