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飛ばされた最強の魔法騎士 とっても自分の星に帰りたいのだが……  作者: 季山水晶
第一章 飛ばされた最強の魔法騎士

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1.ここは何処だ

本編の始まりです

 追放魔法で放り出され気を失っていた俺は、見知らぬ土地で意識を取り戻した。拘束魔法の解除が寸前だった俺に焦った帝国軍の奴らは、場所を指定する余裕もなく、無作為に俺を見知らぬところへ飛ばしたのだ。ここには敵味方関係なく、それらしい奴らは誰も居ない。今の所、やすやすと俺の居場所を特定することは出来ないだろが、俺も何処に居るのか判らない。


 辺りを見渡すと、ここは無造作に木々や草が生えている場所で、木々の間から日が差し込み地面に円形の明りを作っている。自然っていいものだな、なんて呑気な事を言っている場合ではない。ここは何処だ?一体俺は何処に飛ばされたのだ?


 宇宙空間で生存の出来る万能スーツを装着していないのに生きているという事は、幸いにも、ここには俺が生きる為の酸素があるという事だ。草木が生えているのだから酸素があって当たり前だろうって思うのかもしれないが、そうは問屋が……である。草木が生えていても極端に酸素が少ない場合もあるし、他に身体にとって有毒なガスが充満している星もある。だからこれはラッキーとしか言いようがない。無限と言えるほどの数がある惑星であっても酸素のある星は少なく、その中でも動物が生きていく条件が整っている星に出会う事は恐ろしい程の低確率なのだ。


 それ以上に悪い事は飛ばされた先が恒星だったり衛星だったりしたなら、その時点で人生の終わりを迎えるわけだ。いくら俺が最強の魔術騎士ウィザードナイトだとしても生きることは極めて難しいのである。帝国軍の奴らもそれを狙ったのだろうが、俺の強運を舐めて貰っては困る。


 それにほら見てみろ、周りには様々な樹木や草が生え茂っている、生命を維持できる素材は山ほど有る。俺はここで生きていける、そしてさっさと帰る方法を見つけて、帝国軍に目見ものを見せてやるのさ。


 一安心したところで、グェン城に残された部下たちの事がふと頭に浮かんだ。


 俺の部下たちはどうなっただろうか。俺みたいに飛ばされたのか、それとも惑星サージアを落とすことが出来たのだろうか。帝国軍は俺さえ居なければ何とかなるとでも思っていたのだろうが、俺以外にも優秀な魔術騎士ウィザードナイトは沢山いる。俺が居なくともあの惑星を発見することが出来ているのだから力の差は歴然、陥落することは間違いないだろう。うん、俺は先ずは惑星イメルダに戻る事を最優先に考えよう。


 何故こんな事をふと考えてしまったのかというと、俺の様に飛ばされた仲間がいたなら、この星の何処かに居るかもしれないという甘い期待が頭をよぎったからだ。


 だめだ、ここが何処かもわからないのに、そんな根拠のない事柄に期待をしても物事の解決にはつながらぬ。先ずは自分の位置をはっきり確認するところから始めないと。この星で生きていくことは出来そうなのだが、つまり、ここが安全かどうかという話だ。


 俺は状況を把握する為、現在地から半径50キロメートルの範囲にあるものを調べるため、空間認識魔法を施行した。これが使えなければ、この世界では魔法が使えないという事だ。一応、魔法は俺の生命線だ。ここの生命体がどのようなものか判らない状態で、魔法が使えなければ腕力勝負となる。腕力も弱い方ではないが、敵の強さによっては命の危機もありうる。だが、懸念だったな。


「空間認識は可能だ」


 あ、つい嬉しくてうっかり声が漏れてしまった。この様な見知らぬ場所で声を漏らすのは相当危険な行為である。いくら俺が最強の魔術騎士ウィザードナイトといえども、動揺してしまったのだ、面目ない。馬鹿か誰に謝っている。だが、魔法が使えるとなると、俺には怖いものはない。なんせ最強の魔術騎士ウィザードナイトだからな、鬼でも蛇でも連れて来い、いくらでも相手になってやろう。


 空間認識魔法で判別すると、今居る場所はいわゆる山だな。そして、ここを下ると文明がある事が確認できた。以前、低文明惑星調査で訪れた「地球」という星に似ている。住居があり、生命体の動きも認識できる。住居も多く密集しているのでそこは街なのだろう。生命体はほぼ俺と同じ体格なのも居る。文明の程度はまだ分からないが、灯りが点いている所からすれば然程さほど原始的ではない。上手くいけば惑星イメルダに帰れる手段があるかもしれないが、それはかなり期待薄。仮にここが地球だとすれば、その事に関しては絶望的だ。あの星の文明は星間を移動できる程の文明を持っていなかったことを俺は知っている。


 取り敢えず、直ぐに生命の危険を回避する必要性は無いと判断した。次に考える事はというと……


 この星の文明と接触するにあたり、警戒しなければならない事が沢山ある。この星が帝国軍と繋がりがあるかどうかだ。この様な文明の低い星を奴らは植民星として幾つも支配していた。だからここも植民星の可能性は有り得るのだ。実は俺にとって、繋がりがある方がラッキーだ。少々危険は伴うが、そちらの方が惑星イメルダに戻れる可能性が高くなる、なんせ、帝国軍の宇宙船を奪うことが出来るからな。関係がないとすれば、この星の住民が異星人の存在を認識しているかどうかを調べなくてはならないな。


 きちんとした言語は有るのか?言語によるコミュニケーションを取っているかも調べねばならぬ。あれば魔法の自動翻訳機能で何とかなりそうだが、無ければそれをどうやって取るかも考えねばなるまい。それと、この星の生命体の強さはどうだ?今までの経験からして、俺よりも強い異星人に出会ったことは無いが、油断は大敵だ。


 俺は現状把握をする為辺りに目をやった。この星の重力は小さい。試しにほんの軽くジャンプをすると2,30メートルは平気で飛ぶことが可能であった。次に周りにある物資を調べた。地面に落ちている鉱物、つまり石だ。なんの変哲もない普通の石、検知魔法を使い強度を調べると、強度は135。もろい、少し握るとバラバラに崩れる。目の前の樹木も強度は80、指を突き立てれば平気で幹の中に埋まる。これももろい。


 このもろさはなんだ、このような素材で作られたものなど、直ぐに崩壊してしまうのではないか?


 ふと考え込んでいると背中の方から何やら奇妙な唸り声が聞こえた。


 なんだあれは、野生の魔物か。牙をむき出しにして俺に敵意を向けているな。地球で見た犬に似ているが少し違う。犬はあれほどにも長い牙を持ってはいなかった。


 全身が灰色の毛で覆われた四つ足歩行の生き物、大きさは1.5メートル程。それなりにでかい。そいつは長い牙をむき出しにして涎を垂れ流し、今にも飛びかからんとする体制を取っていた。


 こいつの俺への敵意はなんだ。領土争いか?それとも食料と思われているのか?


 対処ができないとは思えないが、敵意を向けられている為、すぐさま生命力を検知した。生命力は120。生命力の高さは戦闘力の高さにほぼ匹敵する。よって生命力が判れば、だいたいの戦闘力の目安が付くのだ。


 な、なんだと、三桁とは……低すぎる。生命力120で俺に威嚇をしてくるとは、自分より強い相手を認識できないのか、こいつは。だが、こいつはこの星で一番弱い生き物かもしれない、油断は大敵だ。こいつとの戦いに関して言えば、俺の生命力は七桁なので全く問題はないのだが……


 少し様子を見る為、潜在的エネルギー(オーラ)を開放させてみたがそいつはひるまず、威嚇いかくを続けた。


 やはり相手の強さが認識できないのか。尻尾を巻いて逃げれば良いものを、弱いくせに威嚇しやがって……ムカ付いて来た。俺は地面に転がっていた石を手に取り、指ではじいた。その石は物の見事にその魔物に命中し、そいつは消滅した。脆い。そして、その跡には魔力の込められた石が落ちていた、お、これは魔石だ。


 この時点ではっきりと分かった、ここは地球ではない。地球なら生き物が死滅した際に、直ぐに消滅したりはしない。どちらかというと、調査で訪れた惑星ゴアに居た「魔物」という奴に近い。その証拠に消滅した後、惑星ゴアの魔物同様、魔石が落ちている。判り易いように、俺はそいつらを「魔物」と呼ぶことにした。


 ただ、ここは惑星ゴアではない。惑星ゴアはもっと文明が発達しており、こんな樹木が自然に生えている場所などなかったからな。


 ここが地球でも惑星ゴアでもないと分かった以上、次に取る手段はかなり原始的な方法でしかない。なんせ、他にこのような星は記憶にないからな。


 俺は宇宙空間を飛び回る騎士なので、常に宇宙空間位置認識装置を所持している。どういうものかというと、例えば我が母星、惑星イメルダの位置が中心と考えると横軸が0、縦軸が0、高さ軸が0となり0.0.0と表せる。地球の単位で換算して1光年ずれる毎に1もしくはー1となるので、例えば10光年分東へ、1光年分上の座標は10.0.1で表される。地球で言うと1光年は光の速さで1年かかるのだが、俺の星の技術では時空をゆがますことが出来る為、1光年の距離を進むのには1時間程度しかかからない。それどころじゃないんだぞ、距離が遠くても時空をゆがます範囲を広げればもっと早くに移動することも出来るのだ。


 とは言え、惑星イメルダを中心とした位置情報は分かっているのだが、座標を表すにも概ね範囲が決まっている。残念だが、現在記憶されている範疇はんちゅうにこの星は入っていない。よって、この星を中心として位置情報を書き換えていかなくてはならないのだ。


 こいつは厄介だぞ、ここを中心としての空間位置情報を徐々に広げ、惑星イメルダもしくは俺の知っている惑星を認識するまでその書き換えは続く。宇宙は恐ろしく広いのだ。人海戦術の様な物なので、何時になったら空間位置情報が掴めるかは全くの未知数。数年いや、数十年、それ以上にかかる可能性もある。俺にはどうすることも出来ない、人工頭脳に頑張ってもらうしかないのだ。


 取り敢えず、宇宙空間位置認識装置は常起動状態に置いておき、先ずはひとつひとつこの惑星の事を知っていかねば。俺はまず、山を下りて、住居のある方へ行ってみることにした。


読んで下さりありがとうございます。本日もう一本投稿します。

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