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第15-2話:僕の小説には人気がない!

ショッピングモールで助手とのデート中に助手のクラスメイトと思われる女の子達に囲まれてしまった。


デートの相手が僕だと分かると、助手の株を下げてしまうのではないかと思い、僕は知らない人を装う考えも浮かんだ。それでも、それはそれで助手に失礼だと思い直して女の子達に声をかけようとした瞬間だった。


「やあ! こんにちは! きみ達!」


「「「え?」」」


 そこに立っていたのは、姉嵜先輩だった。トレードマークのポニーテールではなく、ストレートヘアーだったけど間違いなく姉嵜先輩がそこに立っていた。


 お忍びのお嬢様と言う様な夏コーデ。薄くブラウンがかったブラウスに襟は緩やかにアールがかっていて、レースがあしらわれている。袖は袖口にギャザーがあり、ふわっと広がるビショップスリーブ。


 モスグリーンのロングスカートにもリボンがあしらわれていて、とても女の子だった。


「会長⁉」

「え⁉ 姉嵜生徒会長⁉」

「まじ!?」


 そうだった、奇行が気になる姉嵜先輩だったけど、学校内では生徒会長も務めていたんだった。そして、学校内では人気なんだった!


「きみたちは1年生だな⁉ 休みの日にこんなところで同じ学校の生徒に会えるなんて嬉しいな! よーし、お茶をご馳走しようじゃないか! さあ! 行こう!」


「え? え? え?」

「姉嵜会長とお茶⁉ それはすごい!」

「わぁ! いいんですか⁉ ぜひ!」


 姉嵜先輩は、あっという間に数人の女の子達を連れてお茶を飲みに行ってしまった。


 そして、僕と助手だけが取り残された。


「「……」」


 僕達は何が起こったのか、まだ理解できないでいた。


「とっ、とりあえず、何か食べようか……」


「はい……」


 改めてフードコートを見渡す。壁一面に色々なお店が建ち並んでいる。カフェ、お好み焼き、ラーメン、定食、そば、ステーキ、ドーナツ、ハンバーガー……。


 各カウンターで注文して、その後空いているテーブルに持って来て食べるようになっている。


 お客さんが多いことから、僕達は先に席を確保して何を食べるか相談することにした。


「なにがいいかな……」


 僕は座ったままそれぞれの店を見渡した。


「先輩は……なににするんですか?」


「うーん……ステーキとか?」


 一応、お小遣いは多めに持って来ている。今日なら少々高いものでも食べることができる。


「初デートの時、男の子と同じものを食べたいけど、女の子は食べられないものがいっぱいあるんです」


「え? そうなの? 例えばどんなの?」


「ハンバーガーとかは……口を大きく開けないと食べられないから……」


「ああ……なるほど」


 実に女の子らしい! ちょっと目から鱗だった。女の子は僕よりも数段いろいろ気を使っているらしい。


「じゃあ、ステーキは?」


「油がはねるし、にんにくのにおいが付きそうで……」


「たしかに!」


 助手はすごくおしゃれだ。ステーキの油が飛んだら大変だ。


 その考え方で行くと、お好み焼きはソースが付きそうだし、青のりが歯に付くのを気にするだろう。


 ラーメンやそばはスープがはねて、ダメそうだ。


「そうだ。定食は? 油淋鶏とか」


「ゆーりんちー?」


「知らない? 唐揚げみたいなやつ」


「……知らないです」


「じゃあ、それ食べよう! 一緒に!」


「……うん」


 初デートで油淋鶏を食べるのが正解かどうかは分からないけど、僕は助手と一緒にテーブル向かい合わせで油淋鶏定食を食べた。


 そして、改めて思ったのは、僕は人気者の姉嵜先輩や助手とは違うということ。


 先日、KDPでamazon出版したのに買われたのがたった4冊だった……。


「先輩、どうしたんですか?」


「いや、急に嫌なことを思い出して」


「今ですか? デート中に⁉」


「ご、ごめん」


「ふふふ……先輩らしい。どんな嫌なことを思い出したんですか?」


「amazonの出版だけど、4冊しか売れなくて……。さっきの姉嵜先輩と助手の人気をみたら、大手の本と僕の個人の本の差みたいだなって」


「……先輩は努力しましたか?」


「え?」


「人気が出るために努力しましたか? おねえ……姉嵜先輩は生徒会長になるためにすごく頑張ってました」


「そっか……僕は……」


 僕は、なにか頑張って来ただろうか……。ラノベ作家になりたいという気持ちだけは持ち続けてきた。レベルは全然だけど、気持ちだけはあった。


 でも、その程度だ。そう考えると努力してきた姉嵜先輩と僕を比べるのは恥ずかしくなってきた。


「でも……先輩の本も4冊売れたのならその分は頑張りが認められたってことじゃないでしょうか」


「あ……」


 助手に言われて、はっとした。そうか……ゼロじゃない。ボクだって、ゼロじゃないんだ。


「大手の新人作家が初版1万部だとしたら、僕は4冊……圧倒的な差だけどね」


 ちょっと自虐的に言った。


「大手の新人作家はその人だけの力じゃありません。出版社のプロモーションがあります」


「プロモーション……」


「宣伝ですね」


「そっか」


「大手が出した本はとりあえず買うっていう読者もいるし、コンテスト優勝作品だから買うって人もいるし、本屋に並んでたから買うって人もいます」


「そっか……」


 大手のプロモーションが大事だと分かった。1万対4……。圧倒的な差だ。出版社の凄さが分かる。


 それでも、助手が僕のことを元気づけてくれている。デート中だし、元気を出さないと。


「さっきの話だと、姉嵜先輩の人気は努力の上に築かれたものってことだったけど、じゃあ助手は? クラスの女の子に人気だったろ?」


「私も……私は……」


 助手がなにかを言い始めたけど、言い淀んでいる。


「私は……元々可愛いですから」


 助手がいつもの半眼ジト目でこちらを睨んできた。ただ、顔が赤いので全然怖くない。目つきのきつさが強がりみたいで、なんだか可愛い。


「先輩?」


「ん?」


「油淋鶏おいしいですね」


「そうだね。おいしいね」


 助手はお箸の持ち方がきれいで姿勢もいいから食べている所作がきれいだ。油淋鶏のからあげは大きめだったけど、助手は小さい口で実に上手に食べていく。


「……先輩?」


「え? あ、はい?」


 助手の食べている姿に見とれてしまっていた。


「女の子が食べている姿を注目していると、目玉をくり抜きますよ?」


「……はい、気を付けます」


 助手はいつもの様に助手だった。


 □ その他


 そこには帰宅した姉嵜亜美の姿があった。


「あら、亜美ちゃんお帰りなさい。おめかしして行ったのに、複雑な顔をしてるわね。なにかあったの?」


「あ、お義姉さん、来てたんですか」


「休みの日だから、夕飯作るのサボっちゃおうと思ってお邪魔しちゃった。ごめんね、休みの日まで」


「いえいえ、全然!」


「それよりどうだったの? デートだったんでしょ?」


「はい、まあ……」


「あ、その顔は二人を応援してきた感じ? よかったの?」


「……まあ」


「ふふふ、その気持ちが伝わったらいいわね。私は誰を応援したらいいのかしらね?」


「そこは、私にしておいてください!」


「ふふふふふ」


 この日、姉嵜亜美がどのような意図で二人のデートの尾行をしていたのか、それはまだ本人にしか分からない。


「さてと、もうひと仕事……」


姉嵜亜美は、そういうと部屋に戻り、部屋着に着替えておもむろにパソコンの電源を入れるのだった。


 □ 九十九渉 帰宅後


 僕は、家に帰るとぐったりした。全身の力が抜けるみたいになってしまった。デートって消費するエネルギーがすごい!


 でも、助手……かわいかった。ただ、自慢する相手がいないので、「AAA」に言うことにした。


 彼にはこれまでも色々な話をしてきた。自分の好みなんかもそうだ。


 今日は、助手のことが気になると「AAA」に話をした。そして、その気になる女の子とデートしてきたのだから、これは自慢していいはずだ。


 ―――

 WATARU:助手が気になるんだ

 AAA:あー、これでWATARUも彼女もちかぁー

 WATARU:いや、僕は一度助手にふられてるから

 AAA:そうなの⁉ 初耳だけど!

 WATARU:ああ、ちょっとね……。言う暇がなかった……

 ―――


 そうだった。僕は助手に既にふられているんだった。益々 力が抜けたのか、その日の夜はベッドに沈む様な感覚と共に深い眠りに落ちていくのだった。



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