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第13-2話:僕の小説はルールが守れない!

「それは先輩の恥ずかしい部分なので、あまり触れないであげてください」


「助手! すごく誤解を生みそうだから言い方に気を付けて!」


「先輩の……恥部?」


「ひどくなった!」


「あなた達、面白いわね。いつもそんな漫才みたいなやり取りなの?」


「そ、そんなっ。いつもは……もっと……もうちょっと……」


 ひどいです。そこまでは言えなかった。恥ずかしすぎて。僕は恥ずかしくなって無意識に否定(?)してしまった。


 先生が僕の座っている席の隣の机にちょいとお尻をひっかけて座った。寄りかかったみたいな状態だ。


「私もあまり詳しくないけど、出版社の受付なんてアルバイトだから、ちょっとでも不手際を見つけたらすぐに『失格』にするわよ? だって、その分 仕事が減るんだもの」


「先生は、出版業界についてご存じなんですか?」


「まあ、知り合いがちょっと……ね」


「すごいですね」


「そう? そうかしら?」


 先生が少し自慢気だ。意外とかわいい人なのかもしれない。


「コンテストなんかやると出版社にはたくさんの作品が持ち込まれるの。だから、読む方も大変なの。大手の出版社のコンテストなんて1000とか2000とかが持ち込まれるのよ?」


 それだと編集者が何人いるか分からないけど、全部を読むのは難しいのでは?


「あ、九十九くん、全部読むのは難しいって顔をしたわね!」


 Oh……僕の表情は先生にも簡単に読み取られてしまうほど、分かりやすいらしい。そりゃあ、さっき考えただけで助手がツッコんでくるわけだ。


「その通りよ。10万字のものを早くて3時間で読んだとしても、いいとこ1人3作品しか読めないわ。それも付きっきりで。編集の人が10人いたとしても1カ月は丸々他の仕事ができなくなっちゃう。だからアルバイトさんなんかが仕分けしていくの」


「へー、そうなんですか」


「だから機械的ね」


「そっかぁ……分かり易くルールを守っているアピールとか必要なのかな……」


「ふふ、そうかもね。まあ、要するに物事には最低限のルールがあるってことよ」


「僕はその最低限のルールが守れなかったのか……」


 一段と落ち込む僕。


「そうねぇ。例えば、二人の女の子から告白されてどちらかと付き合うとするじゃない?」


「え? はい、そんな羨ましい状況はあんまり想像できないですけど……」


 西村綾香先生が少し違う話をした。たとえ話で理解しやすくするっていう流れかな?


「そして選んだのが、その二人からじゃなくて想像上のイマジナリー彼女だとしたら……」


「何したいんですかその人……」


 ついついツッコミを入れてしまうほど訳が分からない行動だ。僕がやってるのはそんなにひどいことなの?


「ほらね。そうなるのよ。一人はいじけるし、もう一人はきっと屋上で遠くを見てるわね」


 先生の話の中のヒロインは具体的だ。もう先生がラノベを書けばいい。


「僕だって失格は嫌だから、ちゃんとチェックしたんだけどなぁ……」


「じゃあ、失格にならない方法があるわよ。それも2つも」


 西村綾香先生が頼もしいことを言った。僕はそこに光明を見出した。


「1つは、評価シートをもらわないことね」


 それだと失格になっても、その連絡がこないだけでは……。解決になっていなくて全然ダメな方法だった……。もう一つもとんち問答みたいな回答が来るに違いない。


「もうひとつは、WEB小説のコンテストに応募することね」


「え? カクヨムとか小説家になろうとかですか?」


「そうです。縦×横で1ページ何文字みたいな制限はありません。全部の文字数はサイト内で確認できるから、違反になっているかは一目瞭然ですよね?」


「なるほど……」


「あ、一応、注意点としてはカクヨムの方はあとがき機能がありません」


「はい……」


 あとがきに注意点なんてあっただろうか。


「各話のあとにコメント的にあとがきを入れていると、それはストーリーなのかあとがきなのか、誰にも分からないからカウントが難しくなります」


 なるほど。たしかに、小説家になろうでは本文と他にあとがきの欄がある。そこは本文にカウントされない。


 でも、カクヨムの方はそれがないんだ。人によっては本文の最後にコメントを入れている人がいる。そこまで字数にカウントされるなら思ったより多かったり、少なかったりする可能性が出てくるってことか。


 でも、WEB投稿は先日始めている。そっちに軸足を移せば「失格」は避けられる!


「あと、応募に際してテンプレートを準備してくれている出版社があるから、それを積極的に使ったらいいんじゃないかしら」


 3つ目の方法が出てきた! 2つあるって言ってのまさかの3つ目! 西村綾香先生はボケの才能もお持ちだった。きっと先生なら4コマ漫画を描いても奇跡の5コマ目を描くに違いない。


「じゃあ、九十九くんはいつまでも落ち込んでないで、屋上に行ってみてね」


 そう言い残すと、西村綾香先生は教室を去って行ってしまった。


「なんだったんだ……」


「……」


 僕のつぶやきに助手は反応してくれず、スルーされてしまった。


 その後、僕は屋上に行った時に不思議な体験をした。


 西村綾香先生から屋上に姉嵜先輩がいるという話を聞いていたし、西村綾香先生が屋上に行けと言うので、僕は素直に屋上に来たのだ。


 屋上のドアを開けると、金網に手をかけて一人の女生徒が立っていた。彼女は割と背が低く、そしてとてもきれいなロングの銀髪をしていた。その銀髪が風に吹かれてキラキラ輝いていたのだ。


少女が遠くを見ている光景も相まって、とても幻想的で……、非現実的で、僕はすっかり目を奪われてしまっていた。


彼女も僕に気付いていない様子で、遠くを見つめたまま何かを考えているようだった。その顔は角度の具合と光の加減で残念ながら見ることができなかったけど、シルエットだけでも、もう美少女だと分かった。


 あの銀髪はコスプレなのか。日常の制服だというのに、髪の毛が銀色というだけでこうも非日常的な感じになるのか。


 本来、「銀髪」は「白髪」を言い換えたもの。白髪は老いを連想させるので、失礼にならない様に言い換える。しかし、目の前の少女の髪は、光を帯びて正に銀色だった。金髪が金色の髪の毛ならば、銀髪は銀色の髪の毛。


 光をまとって、風になびくさまは幻想的ですらあった。僕はこの場面をこころのストレージに保存したいと思っていた。ドキドキが止まらない。もしかしたら、これが恋なのでは……。


□ 帰宅後


―――

WATARU:今日、妖精に会った

AAA:ついにWATARUが壊れた!

WATARU:まあ、聞けって。少しの間だけ、異世界に迷い込んだんだって!

AAA:救急車こっちです! 急いでくださいーーー!

WATARU:僕は、恋に落ちた

AAA:突然どうした!?

WATARU:今日、放課後屋上に行ったんだよ。そしたら、銀髪の美少女がそこに立ってた

(10分間返信なし)

AAA:どうだった? その美少女?

WATARU:多分、僕は恋に落ちた

(10分間返信なし)

AAA:それは、付き合いたい的な?

WATARU:いや、もっと崇高な感じで……

AAA:いや、そこは付き合っとこうよ!

WATARU:いやいやいや、僕なんて

―――


この日、このようなどうでもいい話ですごく長くチャットした。AAAがやたら謎の銀髪美少女に食いついたからだ。きっと僕の話で興味が出たんだろう。


え!?ここにきて新キャラ登場!?

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