第10-3話:僕には小説を出版するお金がない!
姉嵜先輩の話を聞いて、基本的な事だけではあるけれど、少しだけ自費出版について情報を入れた。そのあと、再び自費出版の出版社に電話をしてみたのだ。気になることはあれだ。
「先輩、どうだったんですか?」
電話の後、助手が興味津々で訊いた。
「九十九くん、どうだったんだい?」
姉嵜先輩も興味津々みたいだ。
「……250ページで1000部、250万円でした」
「「あー……」」
出版社さんから言われたのは、通販を中心に販売って言ってた。二人とも残念そうな顔をしている。僕の思ってる「出版」とはちょっと違うかな……。
どちらにしても250万円もの大金は逆立ちしても出ないかなぁ……。
「ま、まあ。頑張っていたらまたチャンスは来るから……」
そう言うと、姉嵜先輩は文芸部に戻って行ってしまった。
「……」
助手は僕をいつもの半眼ジト目で見ていた。
「結局、助手はなにがそんなに気に入らなかったんだい?」
「みんなが先輩のラノベを読んでしまったら……私だけの先輩じゃなくなるのが少し気に入らないだけです」
「え?」
それって、やっぱり、助手は僕のことを……?
「先輩のポンコツラノベを読む被害者は私だけで十分って言っただけです」
助手がまた向こうを向いて顔を見せてくれない時間が始まってしまったのだった。
□ 今日の報告
「まあ、自費出版ってそんなにするの」
僕が職員室に今日の報告をしに行くと、いつもの様に西村綾香先生が感想を言ってくれた。
「はい、出版できるって少し舞い上がってしまいましたが、そんなお金はありませんでした」
「まあ、大人なら人によっては250万円なら出せるでしょうからねぇ」
そうなのか。大人はすごいな。
「あと、いくら自費出版でも、箸にも棒にも掛からない作品はその出版社も出版しようって言わないでしょうから、必要な文章の形ができて来たって事でもあるのかもね」
「……」
そんな考え方は微塵もなかった。そうか、100点じゃないけど、0点じゃない。僕の文章は赤点回避くらいには行っているってことか。僕は密かにやる気を取り戻した。さすが、ラノベ研究会顧問。
「まあ、それなら……」
先生が僕の提出した書類を見ながら、なにかをつぶやいていたけど、僕には聞こえなかった。
□ 帰宅後
いつもの様に「AAA」と少しチャットをしてから寝ることにした。
―――
AAA:そのアネザキ先輩がいてよかったな
WATARU:まーね。どっちにしても、そんなカネないから自費出版はできなかったけど
AAA:僕らはまだ学生だしそんなに慌てなくてもいいんじゃない?
WATARU:そうかも
―――
そうだ。僕はなぜこんなに慌てているんだっけ。僕がラノベ作家になりたい理由……。たしかにあったはず。そんなことを考えながら僕はベッドに入って眠りに落ちて行った。




