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敵でした

 ストーカーに追われるという事件はあったものの、無事に魔王城に帰ってきた私達。


「……何やら、騒がしいですね」


『そう、かな?』


 いつもはもう少しおとなしいはずなのですが、どこか忙しないように思えます。

 私の耳は敏感にそれを聞き分けてくれています。厄介事に巻き込まれないために、私はウンディーネの手を引いてさっさと部屋に歩き出します。


「お帰りなのだ。リーフィア。ちょっと話があるからこっちに──」


 途中で何か聞こえた気がしましたが、そんなもの知らんと部屋に戻りました。


「ふぅ……無事に何事もなく帰ってこれましたね」


 私はホッと安堵の息を洩らすと同時に、部屋の扉が激しく叩かれました。


 …………子供襲来の合図です。


「おいリーフィア! どうしてさっき無視したのだ!」


 ドンドンッ! っと叩かれるドア。

 また壊されそうな予感がするので、ありったけの魔力を注いで耐久力を強化します。

 いくら魔王といえど、私が本気を出して強化した扉をぶち破ることは出来ないでしょう。


 これで一安心です。


『リーフィア……? ミリアちゃんが来たけど、出なくて良いの?』


「良いのです。どうせ厄介事しか持って来ませんから」


 知らなければ何も生まれません。

 それに私は現在休暇中です。仕事をするつもりは、これっぽっちもありません。


「はぁ……寝ましょう」


 まだドアは激しく叩かれています。うるさくて眠れないので耳栓を詰め、全てを拒絶するように目を閉じました。

 ウンディーネはどうしたら良いかとオロオロしていましたが、心優しい彼女はやはり無視することなんて出来ないのでしょう。扉の方に浮遊して行き、上半身だけを貫通させ、ミリアさんの話を私の代わりに聞いてくれました。


 そんなものは気にせず、夢の中へ旅に出ようかと思っていた私の肩を、話を聞いて戻って来たウンディーネがツンツンと突っついてきました。


「……なんです?」


『えっと、起こしちゃってごめんね?』


「……別に良いので、早く用件を」


『なんかね? また侵入者が潜り込んでいるかもしれないから、気を付けるようにって……』


「はぁ……? 侵入者、ですか?」


 また侵入者が来ているのですか?


 …………あ〜、そういえば人間側の国に警戒されていると、ちょっと前にミリアさんが言っていましたね。私がボルゴース王国を壊滅に導いたせいで、魔王軍の脅威は飛躍的に上がっているとも。


 そのせいで各国のスパイが偵察隊が潜り込んでいる、ということですかね?


「……はぁ〜〜〜〜ぁ……ったく、仕方ありませんね」


 私はむくりと起き上がり、のろのろと扉の方に歩きます。魔法で作った鍵を解錠し、扉を開けるとミリアさんがしょんぼりとした表情で扉の前に立っていました。


「……リーフィア?」


「話してください。手短にお願いします」


 パァァ! と、途端に明るい笑顔を浮かべるミリアさん。

 ……嬉しそうにしちゃって、本当に単純な人なのですから。


 私はミリアさんを部屋に招き入れました。

 一応客人なのでお茶を出し、中心にあるテーブルに三人向かい合って座ります。


「それで、侵入者とは?」


「うむ。まだ確かではないのだが──」


「お帰りください」


「ちょちょちょ! 待って、待って!?」


 風で椅子を回転させ、扉の前まで押し出そうとすれば、ミリアさんが慌てたように声を荒げました。


「お願いだから話を聞いて! 一応ちゃんと目撃情報はあるから!」


 …………ふむ、まぁこれくらいで許してあげましょう。

 風の出力を弱めると、ミリアさんはホッと安堵の溜め息を吐き、椅子と共に戻って来ました。


「──コホンッ。リーフィアも予想がついていると思うが、おそらく侵入者は人間側の者だ」


 人間だ。ではなく、人間側の者。

 そのような回りくどい言い方をするということは、侵入者は人間ではない可能性もあるということですね。


 人間に味方しているのは、何も人間だけではありません。

 私の種族であるエルフ族、職人として有名なドワーフ族、獣のような外見をした獣人族。纏めて『亜人』と呼ばれる人達も、数は少ないですが味方している人もいます。


「その侵入者の目撃情報は何処で?」


「…………この街だ」


「やばいじゃないですか」


「うむ、やばい」


 意外と落ち着いているように見えますが、状況はかなりやばいです。

 偵察だとしても、敵がこの魔王城の城下街に侵入しているのです。それなりの実力者達が集まっていると思って間違いはなさそうです。


「でも、目撃されているのですよね? 何か特徴はないのですか?」


「その者が言うには、揃ってマントを羽織っていたらしい。目元まで隠れる深いフードも付いていて、かなりぼろっちい見た目なのだとか」


 ──ん?


「しかも厄介なのが、そのマントには認識阻害の魔法が掛かっているらしく、何者かの判別が付かないと……」


 ──んん?


「怪しさ満点だが何者かの判断がつかない以上、下手に手出しは出来ない。しかも隠密行動に精通しているのだろうな。すぐに姿を見失ってしまったらしい」


 …………ふむ。


「それ、見ましたよ」


「城下街は広い。探すにしても見当が──って、はぁ!?」

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