食事会です
「──さて、これからどうしましょう」
私とウンディーネの報告は、無事に終わりました。
ですが、食事会まで絵はまだまだ時間があります。
……三時間くらいですか。うーん、暇ですねぇ。
となると、やることは一つです。
「寝ますか」
「息をするように寝ようとするな」
ミリアさんからツッコミが飛んで来ました。
「あなただって、さっきまで寝ていたでしょう?」
「余は疲れていたのだ。仕方がないだろう」
「では、私も疲れています。何処かの誰かが適当に招待を受けたせいで、私が裏で手を回すことになりました。とても疲れました」
「おまっ、それを引き合いに出すのはズルくないか!?」
「ズルくないですー、上司だからって不条理を押し付けて来る方がズルいんですー。やーい、ブラックー、忘れん坊ー、寝坊助ー、ばーか、子供ー」
「何だとう!? 子供なのは関係ないし、寝坊助だけはお前に言われたくないぞ!」
ミリアさんは顔を真っ赤にして、私を指差します。
「…………へっ」
「上等だ! 表出ろ!」
「ああ、いいですよ? あなたが私に勝てるのなら、やってやりますよ? その代わり、負けたらお尻ペンペン30分ですからね」
「それだけは許してくれ! 頼むからそれ以外に……!」
「嫌ですー」
「……う、うわぁああん! アカネぇええええええ!」
魔王のくせに、配下に泣きつくのはどうなのでしょうか?
「おーよしよし。……リーフィア、こいつをいじめるのも、それくらいにしてやってくれ」
「……別に、いじめているつもりはありませんよ。ただまぁ……アカネさんがそう言うのであれば、仕方ないです」
「ああ、すまな──」
「その代わりに、ミリアさんを少しお借りします」
「──っ! な、何ぶあ!?」
ミリアさんをヒョイと持ち上げ、一緒にベッドへダイブします。
「うーん、相変わらず抱き心地が良いですねぇ……」
「おいコラ! 余を抱き枕にするな!」
「すやぁ……」
「聞けーーーー!!」
ミリアさんが何かを喚いていますが、それを無視します。
小さいし体の凹凸もないし、結構抱き心地が良いんですよねぇ。
最高級の抱き枕です。
「魔王を抱き枕にするとは羨ま──じゃなくて、根性があるのぉ」
「……アカネさんも、来ますか? 川の字でも私は構いませんよー」
アカネさんはアカネさんで、良い匂いがしそうです。
きっと、安眠出来るでしょう。
「いや、誰かが来て、全員が並んで眠っていたら変じゃろう。そちらに行きたいのは山々じゃが、妾は我慢するとしよう」
「そうですかぁ……残念、です……ミリアさんも──って、もう寝ていますねぇ」
最初はずっと喚いていたミリアさんでしたが、いつの間にかスヤスヤと静かな寝息を立てていました。
とても安心したような表情です。
なんかこう……母性というものを擽られますね。
「ふふっ……ミリアさんも、口ではああ言っていましたけど、素直ではな……ですねぇ」
私も眠気が限界になって来ました。
呂律も、上手く回りません。
「ふ、ぁあ……アカネさん、後はよろしくお願いします」
そうして私は、突如襲って来た浮遊感に身を委ねたのでした。
◆◇◆
夕刻になり、食事会が行われました。
それまで思い思いに過ごしていた私達を呼びに来たのは、古谷さんだったらしいです。
いくつもの料理が並ぶ、10メートル以上はありそうなテーブルがある大広間に、お二人のことを古谷さんが案内してくれたみたいですね。
……え、どうしてえそんなに曖昧なのか、ですか?
だって、何も知らなかったんですもの。
寝て起きたら、私はいつの間にか大広間に居たんですよ。
最初は全く意味がわかりませんでした。
ベッドで気持ち良く眠っていたと思ったら、何故か目の前に豪華な食事が並んでいました。
一瞬、まだ夢の中なのかと、私は再び寝ようとしましたが、それはアカネさんに止められました。
私を運んだ──というか引きずったのはミリアさんらしいです。
引きずるくらいなら起こして欲しいと思ったのですが、どうやら何度起こそうとしても、無駄だったようです。
…………うん、それなら仕方ないですね。
並んでいる料理の数々はどれも美味しそうで、見ているだけでお腹が空きます。
まだ寝足りないのを、目を擦ってどうにか耐えながら、私達は席に座りました。
国王とミリアさんは対になるように座り、その横にそれぞれの陣営が座ります。
ミリアさんの左右には、私とアカネさんが。
国王の左右には、側近の皆さんと古谷さんが。
「改めて、良くぞ遠い地より来てくれた、魔王ミリア殿」
全員が落ち着いたのを見計らって、国王が重々しく口を開きました。
「招待に感謝するぞ、えっと……」
「…………ミスロウト・ボルゴースです」
「おお、そうだ。ミスロウト殿!」
私が耳打ちしなければ、国王を変な名前で呼んでいたでしょう。
それで空気を悪くするのは、避けたいところでした。
私達の後ろには、何人もの兵士が控えています。
失礼なことをすれば即座に、その剣を突きつけられるのは確実。
沸点の低いミリアさんが我慢出来る筈がありません。
「……全く、相手の主要人物くらいは覚えてください」
「仕方がないだろう……余は名前を覚えるのが苦手なのだ……」
「ただ興味がないだけでしょう」
「うぐっ……そうとも言うな」
コソコソと声を抑えながら会話しますが、あちらは特に怪しんでいる様子はありません。
王様は全員のグラスに飲み物が注がれたのを見て、ゆっくりと立ち上がりました。
ようやく、食事会が始まるようです。
「そろそろ、全員に飲み物が行き届いたか? それでは、かんぱ──」
「あ、ちょっと待ってください」
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