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出張先は王国です

 私は勇者の提案を承諾しました。

 敵と味方全てが注目するエルフの秘術。それがどんなものなのか気になります。

 人間の国は、魔王軍よりも情報が集まりやすいでしょう。しばらくは仕事が舞い込まない環境に身を置きつつ、ついでに色々な情報を探ってみましょう。


 わかりやすく言うならスパイです。

 勿論、寝るのが95パーセントで、秘術の情報が5パーセントですけどね。

 ちなみにヴィエラさんの誠意を受けたから5パーセントです。なので、ミリアさん達はヴィエラさんに感謝した方がいいですよ。


 このことの報告は暇そうにしているウンディーネに頼みました。

 契約精霊との信頼が深まると、遠く離れていても自由に会話が可能になるらしいです。

 なんでうちが……とか文句を言っていましたが、報告に行くのとお尻ペンペンどっちがいいと聞いたら、快く承諾してくれました。やはり、持つべきは友ですね。




 ──ということで私は彼らの味方を演じることになりました。

 今は王国に戻るため、私達は馬車に揺られていました。微かな振動が眠気を誘います。


「俺の名前は古谷(こたに)幸樹(こうき)だ。よろしくな」


「リフィです。どうぞよろしくお願いします」


 はぁ……眠いですねぇ。お日様の光が馬車の窓から射し込んできて、ポカポカします。はぁ、温いです。

 と私が夢の世界に誘われようとしている時、勇者さんが私を凝視していることに気付きました。


「…………」


「どうしました? 私の顔に何か付いてます?」


「ああ、いや……そうじゃないんだ。ただ……そのやっぱりエルフって美人なんだなって思ってさ」


「はぁ、ありがとうございます」


 は? なんですか。口説いているのですか? 驚くほどときめきませんね。出直してください。


『……リーフィア、リーフィア』


 と、ウンディーネから念話が飛んできました。

 何か急いでいる様子はありません。報告が終わったという報告でしょうか?


『はいはい、何でしょうか?』


『……言われた通り、報告……してきたよ』


『そうですか。ありがとうございます。……皆さんは何と?』


『……えっと、ミリアちゃんは、遊び相手がいなくなったって、言っていたよ』


 あの人はいつも通りですか。

 でも、しばらくはミリアさんに振り回される日々から回避出来ます。帰った時が面倒臭そうですが……。今は考えないことにしておきましょう。

 というかウンディーネ。魔王をちゃん呼びですか。まぁ、何百年も生きている精霊から見たら、ミリアさんは子供なのでしょうね。実際子供ですし。


『……それと、ヴィエラさんが、すまない、ありがとうって…………』


『……いえ、気にしないでくださいと伝えてください』


『……わかった。リーフィアも、気をつけてね』


『はい、ウンディーネもお気をつけて。また何かあれば連絡します。それまで休んでいてください』


『……うん、じゃあね』


 ウンディーネとの念話が途切れました。

 ……意外とすんなり受け入れてくれてよかったです。人間達に寝返ったーとか言われては、後々面倒そうですからね。まぁ、あの人達は極度のお人好しなので、そんなこと考えないでしょうけれど。


「リフィさん……リフィさん?」


「あ、はい。何でしょうか?」


「いや、ボーッとしている様子だったから、大丈夫かなって……」


「外の景色が綺麗だったので、それを見ていただけですよ。後、色々と疲れているだけです」


「──っ、そうか。里を滅ぼされたんだもんな。……疲れているのも仕方ないか」


 いえ、別にそうではないのですが、否定するのも面倒なのでそういうことにしましょう。

 そう勘違いしてくれた方が、何か不審なことをしても大目に見てくれそうですし、疲れたという理由でずっと休むことも出来ます。


「──ああ、見えてきましたね」


 遥か遠くの方にそびえ立つ城と、周りを囲む大きな壁。

 あれが古谷さんが拠点とする王国なのでしょうね。魔王城と同じくらいでしょうか? ……領地という点を含めれば、魔王城の方が規模は大きいでしょうね。


「もう見えるのか? 俺にはまだ掠れてよく見えないが……」


「エルフは他よりも目がいいんですよ」


 勿論、適当を言いました。

 ですが、古谷さんは初めてエルフを見たようですし、それが真実なのかどうかは判別出来ないでしょう。小声で「そうなのか……エルフは凄いな」と言っていますし……この人は疑うことを知らないのですかね?


 それはそれで動かしやすいのでありがたいですが、これが人間側の勇者と考えると少し心配になります。

 ですが、ヴィエラさんを圧倒していたことから、実力だけは確かなのでしょう。厄介な相手です。


「古谷さんは──」


「幸樹って呼んでくれても構わないよ」


「遠慮します。それで、古谷さんはこの後どうするのですか?」


「俺か? 俺は国王に報告しに行く。……ああ、協力者としてリフィさんも連れて行くけど、それでいいかい?」


「ええ……面倒なのですが……」


「そう言わずに、協力者なんだから、報告くらいはしておかないと」


「はぁ……ま、仕方ないですね。それくらいは同行しましょう」


 眠りたいのは山々ですが、それを貫きすぎて相手側との雰囲気が悪くなるのは避けたいです。信頼を得られなければ、こちらも自由に動けませんからね。

 ……うん、ちゃんとスパイしています。凄い、仕事していますよ。流石私ですね。


「眠いですね……」


「眠い、のか?」


 あ、っと……つい独り言が出てしまいました。

 このまま無視して寝てしまおうかと思ったのですが、一応反応してあげましょうか。


「はい、眠いです。ずっと眠っていたい。そう思います」


「流石にずっと寝ているのは厳しいんじゃないか?」


「一週間は寝続けられますよ。その程度は楽勝です」


「そ、そうなのか……流石は異世界。凄いんだな」


 ……異世界、ですか。

 そんな安直に私は違う世界から来ましたよ。と暴露しているような言葉を言っていいのでしょうか?

 古谷さんくらいの年齢だと異世界転生……ああ、いや、彼らの場合、異世界転移ですね。それに憧れたり、衝撃を受けたりするのでしょう。だから、いちいち異世界のことに反応してしまう。


 ですが、果たしてこの世界の人々は、異世界人を普通の人として見てくれるのでしょうか?

 この世界には種族差別があります。そんな風に簡単に差別するような世界で、異世界人は異様に映るのではないでしょうか。


 信頼した方や、付き合いの長くなる方には明かしてもいいでしょう。私も、ウンディーネとミリアさん、その幹部の方々には私が異世界人だと明かしていますが、それ以外には秘密にしようと思っています。


 ……ま、古谷さんがどう思われていようと、私には関係のないことです。

 同郷というだけ。それだけの関係なのです。なので、異世界とどのように接して行くかは本人次第ということになります。


「でも、まだ寝ないでくれ。ほら、もう少しで王国に着く。その後すぐに王城に直行することになっているから、寝るのは国王と会ってからにしてくれ」


「はぁ……」


 予定を一気に言われると、本当に面倒ですね。

 いっそ、この場から飛び出して魔王城に帰ってやりましょうか。……そうしたらヴィエラさんに何か言われそうですね。はぁ、めんどくさ……。

悲報です。そろそろストックが無くなってきました。

とりあえず、キリの良いところまでは毎日投稿頑張ります。

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