合流できました
時は、一時間前くらい戻ります。
ミリアさん捜索のために行動を開始した私は、ウンディーネと協力しながら広い範囲を探し始めました。
しかし、いくら探してもミリアさんは見つからず。
もしかして存在ごと消えた……? と心配になるくらい一切の影すら見つけることができず、どうしようかなーと悩んだところで、私は画期的な方法を思いついたのです。
──兵士に探してもらえばよくない?
見知らぬ土地を無作為に探すより、この土地のことを知り尽くしている兵士を訪ね、子供が行きやすい場所をしらみつぶしに探してもらったほうが効率がいいだろう。私はそう気づいたのです。
なので、私は一番近くにいる兵士を呼び止めました。
「すいません。迷子を探しているのですが」
「迷子? それは大変だ。どのような容姿だったか教えてくれるか?」
その兵士はとても親切な方でした。
迷子になった子供がいると言えば、すぐに協力を申し出てくれました。その上、この国の兵士が共有している連絡手段を用いて、ちょうど暇している兵士にも協力を仰いでくれたのです。
「身長は私の横腹くらいの女の子です。白髪で、活発な子でして……」
「ふむ。他に活用できそうな情報はあるか?」
「口調は偉そうです。あと、とにかく声が大きいですね。服装は黒いワンピースを着ていました」
「……なるほど、な。大体わかった。こちらでも捜索を開始しよう」
「ありがとうございます。何かありましたら近くの広場に。では」
これで、ミリアさんをもっと探しやすくなりました。
四人だけでは探し出せなかったところも、地形を理解している────ガシャン────彼らならば探してくれることでしょう。
………………ん? ガシャン???
不意に感じた、手首の締め付け。
視線を下に。なんだろうと見てみると、なんと私の右手首に鉄の輪っかが付いているではありませんか。
私、これを見たことがあります。
多少違うものではあると思いますが、これは警察の方々がよく使っている手錠にそっくりです。
……はて? そんなものがなぜ、私に?
「兵士さん?」
「捕まえたぞ魔王の手先め! 大人しくしろ!」
「はぁ?」
態度が急変した兵士さんは、敵意丸出しで私を睨みつけます。
「その腕輪には魔力を封じる力がある。抵抗しても無駄だ!」
何が何やら、というやつです。
私は迷子になったミリアさんの容姿を伝え、捜索をお願いしただけなのに。
…………いや、待ってください。
どうして私が、魔王の手先の者だとわかったのか。
どうして魔王が、この国にいるとわかっているのか。
その疑問を浮かべ、私は一つの答えに辿り着きます。
──あの魔王、やりやがったな。
さて、そうとわかれば話は簡単です。
おそらく、ミリアさんは下手なことをやらかして身バレし、私に付いているような腕輪を付けられ、今頃どこかの牢獄辺りに囚われているのでしょう。
なるほど。
だから、いくら探しても見つからないわけですね。
魔王だとバレて捕まっているとは、夢にも思っていませんでした。
他の三人も同じでしょう。ウンディーネも牢獄までは探しに行っていないはずなので、私たちはずっと、無駄なことをしていたのですね。
「ミリアさん……あ〜、魔王様はどちらに?」
「すでに身柄を拘束し、地下牢獄に捕らえてある。奴にも魔族殺しがあるからな。抵抗は不可能だろう」
「名前物騒すぎません?」
はて、おかしいですね。
ミリアさんは馬鹿ですが、魔力だけは魔王の名に恥じぬ量を保有してあるはずです。
この程度の封印で力が出せなくなるわけがないと思うのですが…………さてはあの人、お腹が空いて力が出なくなってますね?
『どうするリーフィア。殺す?』
『……いいえ。今はわざと捕まったふりをして合流するので、ウンディーネは皆さんに連絡をお願いします』
『わかった。……何かあったら、すぐに呼んでね』
さて、これで三人への連絡は大丈夫でしょう。
あとは無事に合流できるといいのですが……。
「ああ、体の力が抜けていく〜。これでは本来の力が出せないぃ〜」
「魔王の力すらも封印した腕輪だ。手下如きが抗えるわけないだろう!」
いや、これが驚くことに、これっぽっちも効果が無いんですけどね。
ミリアさん以上の魔力量と、状態異常耐性カンストをナメるなってやつです。
「ほら歩け! 貴様も牢獄送りにしてやる!」
「あー、力が抜けて歩けないぃぃぃ…………ばたんきゅー」
「このっ、手間がかかる奴だな!? ……まぁいい。どうせ動けないんだ。さっさと運んじまうか」
そうして私は魔王軍の疑いで捕まり、牢獄に来たのです。
「いやぁ酷い目に逢いました。でもこれで無事合流できたので安心安心。……それじゃ、歩き回って疲れたのでおやすみなさい」
異空間からベッドを取り出し、その上に寝そべります。
皆さん、私は囚われの身になってしまいました。あとは頼みましたよ……スヤァ…………。
「寝るなぁぁぁぁぁッ!!!!!」
魔族なんちゃらの腕輪のせいで身動きが取れなくなったため、早々に諦めて目を閉じた、その瞬間────牢獄全体にミリアさんの怒号が鳴り響いたのでした。




