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お留守番です


 お祭りの様子を一通り見回った私たちは、広場で休憩することになりました。

 人混みの中を歩き回るのは意外と疲れるものですね。このまま眠れば最高に気持ちよく夢の中へ旅立てるのですが、ベンチで爆睡する変な人認定はされたくないので我慢します。


 ウンディーネとシルフィードは、他の精霊とお話ししてくると言ってどこかへ行きました。

 ディアスさんとヴィエラさんは、小腹が空いたと唐突にわがままを言いだした魔王のため、買い出し中でこの場にはいません。


 その魔王は広場の子供たちに混ざって遊んでいます。

 ……どこかで見た風景に似ていますが、やはり子供は子供らしく遊ぶのが一番ですね。


 アカネさんは魔王の見張りです。

 とは言っても、広場から出ないようにと約束をしたため、そう遠くへは行かないだろうと判断したのか、彼女も私の隣で座っています。


「人間の国に行くとなった時はどうなることかと思ったが、案外普通に馴染んでいるな」

「魔法で認識阻害を掛けていますから、下手なことをしなければ大丈夫でしょう」


 角があったら流石にバレますが、魔法で認識阻害を掛けてしまえば見た目はただの子供です。

 ただ気持ちが昂ぶったり阻害を打ち消すほどの魔力を使ったりすれば、魔法は消えてしまうので注意です。……と言っても余程のことがない限りは大丈夫だと思いますけれど。


 その他にも関係性や呼び方の設定もしていましたが…………それに関してはすでに破綻していると言ってもいいでしょう。

 だって、ミリアさんったら普通に名前で呼んでくるんですもん。

 最初に教えた設定なんてとっくの昔に記憶から「さよならばいばい」しているんじゃないですかね?


 なので、私も諦めて普通に名前で呼ぶことにしました。

 こう言ってはおしまいですが、こっちの方が楽なんですもん。


 ──大丈夫。

 誰も名前なんて気にしないですよ。

 悪名高い魔王軍幹部の名前が勢ぞろいしていても、すぐ気がつく人はいないでしょう。多分。


「それにしても、お祭りか……懐かしいな」

「和の国では毎年のようにお祭りが開催されていたんですよね。故郷を思い出しますか?」

「ああ、そうじゃな。……まぁ雰囲気は全く別じゃが、久しぶりのお祭りというのもいいものだ。……そ、それに……こ、こここ」

「恋人と一緒だから尚更、ですか?」

「〜〜〜〜っ! なぜお主は、そういうことを恥ずかしげもなく! この、このっ……!」

「あはは、痛いですってば」


 肩をぽかぽかと殴られます。

 でも、いつものお叱りグーパンチと違い、衝撃は軽くてほとんど痛みは感じません。つまりはただ戯れているだけです。──イチャイチャしておりますが何か?


『……………………』


 と、その時、広場にある噴水が一瞬だけ不自然な動きを見せました。

 おそらくウンディーネの仕業でしょう。彼女は今精霊とお話し中のはずですが、その最中でもしっかりと私のことも見ているのですね。さすがは水の最高位精霊です。


「そういえば。明日はどこに行きましょう。今日一通り見て回って、アカネさんの行きたい場所とか見つかりました?」

「……そうじゃな、お主とならば何処へでもと言いたいところじゃが、望みを言うなら景色を堪能したいな。そこでゆっくりと時間を過ごしたい」

「いいですねぇ、それ」


 今日はとにかく歩いたし、だいたいのお店を見ることができました。

 なので、明日はゆっくりできる場所でのんびりとした時間を過ごしたいです。


 ──噴水が元気に噴き上がりました。

 ウンディーネもその案に賛成みたいですね。


「今日のうちに、街を見渡せるおすすめの場所でも聞いておきましょうか。その教えていただいた場所に行ってみましょう」

「うむ! エスコートは任せたぞ、旦那様」

「もちろんです。愛する二人の妻をしっかりとお連れいたしますよ」


 これで明日の予定は決まりましたね。

 私たちはゆっくりする予定ですが、ミリアさんたちはどうするのでしょうか。


 ……あの体力無尽蔵な魔王のことですから、今日と同じようにお店を見て回るんですかね?

 ディアスさんも魔王と同じで、体力だけは有り余っている様子だったので大丈夫だと思いますが、そんな彼らに付き合わされるヴィエラさんが少し可哀想ですね。


 最近はどこぞの上司のせいで椅子に座りっぱなしで、全く運動していないから体力が落ちてしまったと嘆いていたヴィエラさん。

 ちょうどいい運動にはなると思いますが、それでも不憫に思えて仕方ありません。


「おーい、戻ったぞー!」

「待たせてすまない。少し店が混んでいて……」


 と、噂をすればなんとやら。

 買い出しに行っていた二人が帰ってきました。

 両手には大きな袋。見た感じ、全て屋台で買ってきた食べ物のようです。


「おかえりなさい。買い出しお疲れ様です」

「随分と大量じゃな。妾たちの分まで買ってきてくれたのか?」

「買い食いしていたとは言え、ちゃんと食ったわけじゃないからな。どうせなら全員分をと思って買ってきたんだよ」

「それはありがたい。小腹は空いていたので何か入れたいと思っていたところです」


 見た目によらず気遣いができる男、それがディアスさんです。

 これで呆れるほどの脳筋でなければ完璧なんですけどね。


「でも、ここで広げて食べるのは無理そうですね……。お祭りは大体回れたと思うので、今日のところは宿屋に戻って、そこで食べましょうか」

「そうじゃな。他の者の邪魔になることは避けるべきだろう。さすがは旦那様じゃな」

「えへへ、そんなに褒めたって愛の言葉しか出ませんよ?」

「むしろそれが聞きたくて褒めているのじゃよ?」

「んー、可愛い嫁さんですね」

「リフィがカッコよすぎるのじゃ」

「──そこ! 隙あらばイチャイチャしない!」


 怒られてしまいました。

 あらぁヴィエラさんってば嫉妬ですか────あ、ごめんなさい。冗談だから睨まないで。ついでに武器を出そうとしないでください。


「ったく、それでミリア様はどこに?」

「彼女ならあそこで子供たちと一緒に…………一緒、に……?」


 視線を移し、首をかしげます。

 そこに子供たちの姿はありませんでした。


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