なんの話をしているのか
「ま、こんなもんですね。…………ん?」
先程までの騒ぎは何処へやら。
射的の参加者も、それを眺めていた観客も。みんなが手を止めてこちらを凝視していました。
「…………忘れていた。リーフィアが規格外だったことを」
「規格外とは失礼な。6本程度はまだまだ余裕ですよ。ちなみに私の名前はリフィです」
いい加減、名前くらい覚えてほしいですね。
──っと、それはさておき。
「店主、ルール通りこの景品はいただきます。よろしいですね?」
無言で頷く店主。
なぜか恐怖を抱かれているような……何か怖いことでもあったのでしょうか?
「ほら、約束のぬいぐるみですよ」
「あ、ああ……ありがとうなのだ…………なんだか、悪い事をしているみたいで申し訳ないな」
どの口が言うんですか、それ。
「とにかく目的は達成しました。他の出店に行きましょ──っと、この後も色々歩き回るのでしたら、ぬいぐるみは邪魔ですよね。一旦それを渡していただけますか?」
ぬいぐるみを持ったままでは両手が塞がってしまいます。
アイテムボックスに収納しておけば持ち運びが楽だし、途中で置き去りにしたり損傷したりする心配もありません。
しかし、
「ん!」
「……ぅん?」
ミリアさんはより一層ぬいぐるみを強く抱きしめ、私の手から逃れるように背を向けました。
「ミリ──お嬢様?」
「嫌なのだ。これは自分で持っていく!」
…………はい?
「いやいや、それでは歩きづらいでしょう? 出店で買い食いもするだろうし、途中で汚れちゃうかもしれませんよ?」
「その時はリフィの魔法で綺麗にすればいい」
「……おおぅ、まさかの他人任せですか」
魔力を消費しないのでそれでも別に構いませんが、本当に持って歩くのでしょうか?
絶対に収納しておいたほうがいいと思うのですが……。
「だって、リフィがくれた物だから……自分で持っておきたいのだ」
「うぐ──き、急にデレるじゃないですか……」
認めましょう。
先程の言葉だけは、あのミリアさんとは思えない暴力的な可愛さがありました。
ええ、思わず頷きそうになるほどに…………無意識でこれをやってくるのだから、彼女も中々にズルい人です。
「まぁいいんじゃないか? ぬいぐるみの置き忘れは私達が見張っておくから」
「ミリ──お嬢様がここまで言うのじゃ。あとは妾達がどうにかする故、リフィも多少のわがままは許してやってくれ」
と、まさかの助太刀が二人も。
「いや、別に反対ってわけじゃないのですが……本当にいいんですね?」
「…………(コクッ)」
どうやら、ミリアさんの意思は固いようです。
なら、私は彼女の意に従いましょう。
「それではお二人とも、お嬢様とぬいぐるみのことは頼みましたよ。私は再び後方に戻るので」
「うん。リフィもわざわざありがとう」
急なことで驚きましたが、ヴィエラさんとアカネさんが見張っているなら大丈夫でしょう。
よろしくお願いしますと一言だけ添えて、私はウンディーネ達の元へ戻ります。
「ただいま戻りました」
「おう、お疲れさん。相変わらずアンタはすげぇことを当然のようにやってくれるよな」
「大したことではありませんよ。あの程度ならダイアスさんでも力任せに射れば倒せるでしょう」
「……まぁな。だが、あれは素人が作った弓だ。俺が力任せに引っ張れば、力に耐えきれずにぶっ壊れていただろうよ。つまりはリフィのやり方が唯一の成功例だったってわけだ」
なるほど、弓の耐久性までは考えていませんでした。
素人製の弓でも魔法で強化すれば射てるとは思いますが、魔法によって何かしらの要素を加えるのはズルになります。
「にしてもお嬢様、かなり上機嫌だったな」
「……そうですか? 私にはそう見えませんでしたが、景品を手に入れられて嬉しかったのでしょうか?」
そんなにぬいぐるみが欲しかったんですかね。
いい加減大人になったかと思っていましたが、可愛らしいぬいぐるみを欲しがるあたり、まだまだ子供ですね。
「そういうわけではないと思うが……なんだ、ウンディーネ達も苦労するな」
『リフィは、ずっと……そういう人だから』
「なるほどな。元より鈍感だってことを理解しているからこそ、その対処法もバッチリと。……愛されてんなぁ」
「…………すいません。話がイマイチ読めないのですが?」
でもなんとなく、からかわれていることだけは理解しました。
「そろそろ気付いてやれってことだよ」
『ミリアちゃん、可哀想……』
なんです?
二人してなんの話をしているんです?
…………え?
活動報告のほうにお知らせがあります。
更新に関しての重要なことなので、読んでいただけると助かります。




