むかしむかし……
『精霊祝福記』
それが今回、私たちが見ることになった劇の題名です。
物語の主役は一人の青年と、その少年と契約した上位精霊。
青年は辺境の田舎村に住んでいる、ごく普通の平民でした。
そんな彼は特別な力を持っていました。時折聞こえてくる囁き声。それは彼にしか聞こえず、周囲の村人は皆、彼の言うことに首をかしげるだけだった。
しかし、彼には確かに聞こえていた。
それは彼に様々な幸運をもたらした。
だが、村人はそんな青年を気味悪がり始める。
普通では絶対に予知することのできないことを次々と言い当てる異常な力。ごく普通の世界でその力は不自然すぎるほどに目立ってしまい、青年は徐々に──村人から恐れられるようになった。
色々あり、青年は村を飛び出す。
自分の力は一体何なのか。時折聞こえるこの声の正体は何なのか。それを知る旅に出る。
ついに青年は声の正体を突き止める。
それは精霊だった。
まだ歴史が浅いその時代では、精霊の存在はお伽話の中だけのものだと思われており、実際に精霊が存在すること、精霊が今まで自分を導いてくれていたこと、どんな時でも支えになってくれていたことに青年はひどく驚き、そして感謝をする。
精霊と契約したことで、青年は今まで以上に精霊との交流を深めることができるようになる。
そこからは…………えっと……精霊と力を合わせて困難に立ち向かったり、さらに沢山の精霊と契約したり、いつの間にか英雄らしいものに祭り挙げられたりと、波乱万丈な人生を歩み────最後は精霊と人間とが共存できる国を作り、幸せな最後を迎える。
そんなお話でした。
そして、主人公の青年が建国したのがクレリース王国。
────そう、この国のことです。
まぁそんなことだろうとは思いましたが、そのような経緯があって今のこの国があるんだなぁと考えると少し感慨深いものがありますね。
物語になっているのですから、多少話は大袈裟に描かれているのでしょう。
しかし、過去にも私と同じように精霊に愛された人がいることには、ちょっとした親近感的なものを覚えますね。
『え? その青年のことを覚えているかって? うーん、残念ながらあまり知らないのよねぇ。眷属の子達から、面白そうな人間がいるとは聞いていたけれど……直接話したことはないわ』
『……う、うちも……リーフィアと会うまではずっと、あの森の中にいたから……よく知らない』
当時のことを知っているであろう人物がちょうど真横にいたので、彼がどんな人だったのかを聞こうと思ったのですが…………うん、予想通りと言うか何と言うか……。
『今はこうしてリーフィアの前にいるけれど、私達に出会える人はいないの。上位精霊に気に入られるだけでも十分すごいことなのよ。あなたが特別なの』
『うん、うんっ……!』
と、いうことらしいです。
上位精霊に出会い、契約しただけで英雄扱いされるのですから、原初の精霊──その一体と契約した私は英雄以上の扱いを受けるのでしょう。…………うわぁ考えただけで面倒くさい。
「そういえば私って、まだ上位精霊と会ったことがないんですよね……」
微精霊は何度か見かけましたが、上位精霊なるものは一度もお目にかかったことがありません。
逆に珍しいのでは? と思って話してみたのですが、ウンディーネとシルフィードからは「なに当然のことを言ってんの?」と言いたげな表情が返ってきました。
『そりゃあ私達がいるんですもの。普通なら気を遣って出てこないわよ。知性を持つ精霊なら尚更ね』
『リーフィアには、うちだけで十分だもん……!』
上位精霊は今も私達の近くにいるとか。
私と仲良くなりたい精霊は沢山いますが、そのすぐ側には自分達にとっての神様のような最上位の存在がいる。だからお喋りしたくてもできない……という状況らしいです。
『さっきの劇でもあったけれど、ここは人間と精霊との共存を願ってできた国。そのおかげか他の場所よりも精霊の数は多いけれど、気配は感じないでしょう?』
「それは確かに……そうですね」
精霊との親和性が高いからでしょうか。
ここはとても空気がいい。ここは住みやすいなぁ、と初めてきた場所なのに不思議とそう思ってしまいます。
そういうわけで精霊も多く住んでいるのでしょう。
しかし、ここに来て一度も精霊の姿を見ていない。……どうやら、その原因は私の可愛い契約精霊にあったようです。
でも、それなら仕方ないですよね。
もっと他の精霊のことを知りたい気持ちはありますが、そのことでウンディーネが嫉妬するのは望みません。だったら私はウンディーネだけでいい。当然のことです。
ああ、でも────。
ウンディーネの嫉妬した姿はちょっと……見たいかもです。




