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いざ、お祭りへ


 約束していた出発の日になりました。

 朝から我らのお子様がワクワクしていて、うるさかったです。


「リーフィア! 早く! 早く行くぞ!」


 訂正します。

 現在進行形でうるさいです。


「はいはい。今行きますよ、っと……」


 魔王城の前には、すでに馬車が用意されていました。

 もう見慣れた黒いやつです。


 見た目が完全にアウトだと思ったのですが、そこはアカネさんが妖術で幻覚を見せるらしく、第三者からは何の変哲もない一般人が使うような馬車に見えるのだとか。


「ミリア様……あっちに行っても、まだ仕事が残っていることを忘れないでくださいね?」

「うぐっ! そ、それは……!」

「もし逃げたら、二度と外出は許しませんから。そのつもりで」


 半泣きになりかけたミリアさんが、こちらを見つめてきます。

 もちろん、巻き込まれたくない私はサッと視線を逸らしました。


 …………危ない危ない。


「おしテメェら! 俺達がいない間はお前らが頼りだ。何があっても城を死守しろよ!」

『はいっ!!!』


 と、後方で暑苦しいやり取りをしているのは、魔王軍兵士の面々。

 やる気があるのは良いことですが、ちょっと気合いを入れすぎでは? ……まぁ、あの様子だと余程のことがない限り大丈夫でしょう。


「忘れ物はないか? シルフィードの力ですぐに戻ることはできるが、しっかりと確認しておくのじゃぞ。」


 お母さ──んんっ、アカネさんは入念な荷物確認をしていました。

 今回持って行く物の管理は彼女に任せているので、こちらも余程のことがない限りは問題ないと思います。


 ですが、それをぶっ壊す残念体質なのが我らの魔王様です。

 大丈夫だと油断することなく、しっかりと最後まで荷物チェックするアカネさんは分かっていますね。


『うーんっ、絶好のお祭り日和ね!』

『みんなとお祭り……楽しみ』


 精霊の二人も気分が上がっているようです。

 彼女達の周りにいる微精霊も、楽しそうにふわふわと動き回っています。


「二人とも、今からはしゃいでいると体力が持ちませんよ? 祭り自体は明日ですから、今日と同じ天気だとは限りませんし……」

『問題ないわ! その時は私の力を使って晴れにするから!』


 うーっわ、能力の無駄遣い。

 どれだけ祭りを楽しみにしていたんですか、この人……。


「ミリア様、良いですか? 人間の街では我々の正体はバレてはいけません。街に入ったら絶対にフードを取らないでくださいね? 面倒ごとを起こす前に我々の誰かを探すこと。そして一人で出歩かないこと。これだけは絶対に約束してください」

「うむ!」

「いざという時は無理をしてでも救い出すが、いくら妾達であっても国を相手にするのはちと骨が折れる。ヴィエラの言ったことを常に心がけるつもりでな」

「わかった!」


 ………………本当にわかっているんですかね、あれ。


 私の目には、楽しみすぎて他の話が入っていないように見えるのですが……ああほら、お二人が溜め息を吐いてしまいました。あれは半分以上諦めていますね。なむなむ。


「…………いざという時は」

「…………ああ、うちの旦那に任せよう」


 って、なぜ二人してこちらを見るのですか。

 嫌ですよ、人間の国に行ってまで子供のお守りをしなきゃならないなんて。


 私はウンディーネやアカネさんと一緒に歩くんです。お祭りデートです。子供に邪魔されるとか勘弁してください。


「…………最もミリアの扱いに長けているのはリフィ。お主じゃ」

「…………リーフィア。向こうでは君だけが頼りだ」


 やめてくださいって。

 二人して私の肩に手を置かないでください。嫌ですってば。


「ほら早く! 早く行くぞ!」


 と、待ちきれないのかミリアさんはすでに馬車に乗り込んでいました。

 準備が終わった面々が馬車に乗り込み、私はマジックボックスから空飛ぶ絨毯を取り出し、その上に寝転がります。絨毯は勝手に馬車を追従してくれるので、私は目的地までずっと眠っていられるってわけですね。


「よぉし! 出発だー!」


 ミリアさんの号令で馬車は動き出しました。

 こうして、私達はお祭りに参加するために人間の国へ行くことになったのです。


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