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予想通りでした




「祭り!? 行く!!!」

「ほら見たことか」


 我らが魔王こと、ミリアさんにお祭りのことを話しに行って、返ってきたのは予想通りの反応でした。

 そんな主人の自由さに呆れ、ため息を吐く人物が一人。


「ミリア様……まだお仕事が山ほどあります。ただでさえ和の国で遊んできたのですから、少しはこちらにも専念してもらわなければ……。ミリア様の確認が無ければ出来ないことだってあるのですよ」

「……………………」


 無言で助けを求められても困ります。

 私は面倒事に巻き込まれないよう、ミリアさんから視線を外し……その先のソファーで寛いでいたディアスさんの対面に座ります。


「よぉ、また面倒なことになりそうだな」

「今回はただの観光ですよ。シルフィが満足したら、すぐに帰ってくる予定です」


 世間話をしながら、テーブルの上に置いてあるお菓子をつまみます。

 …………あ、美味しいですね。食べたことがない物ですが、程よい甘さがあって好みな味です。


 初めて見た珍しい物ですが、ディアスさんが出張先で買ってきたお土産なのだとか。道理で知らないお菓子なわけです。気に入ったならまた買ってきてやると言われたので、遠慮せずにお願いしておきました。


 案外、こういう気遣いが出来る人なんですよね、ディアスさんって。


「お前が行く先々では、必ず何かが起こりそうなんだよなぁ」

「人を問題児みたいに言うのやめてくれます? 問題を起こす気はありませんし、そんなことになる前に今回は逃げますよ」

「……そう言って、いつも巻き込まれている気がするのは、俺の気のせいか?」


 その問いに、無言で答えます。

 図星ってやつです。


「俺の勘って、結構当たるんだぜ?」


 まさかの追撃。

 もう、そんな予感しかしません。


 こうなったら自室に引きこもって何事もなく夢の世界に旅立ちたくなりますが、折角のお誘いですし、ウンディーネもアカネも楽しみにしています。急に「やっぱり行かない」と言うのは、流石に申し訳ないですよね。


「今回は本気で気をつけますよ。…………本当に」


 最近ちょっと忙しすぎやしないか? と思うところはあります。

 王国の勇者に拉致られたり、エルフにちょっかいを掛けられて魔女の問題に巻き込まれたり、和の国では結婚云々どころか変な奴に絡まれたり。考えてみると頭が痛くなります。


 なので、今回は安全第一で頑張ることにします。

 ディアスさんの勘なんて、この私がぶち壊してやりますよ。


 と、意気込んだのはいいですけど、何故でしょう。

 そう口にすればするほど、ドツボにハマって行くような気がしてなりません。……気のせいでしょうか?


「にしても、祭りか……最後に行ったのは地元の神社でやってた小さいもんだったな」


 懐かしむように、ディアスさんは遠い目をしました。

『地元』というのは、きっと日本でのことを言っているのでしょう。


「普通の祭りに比べたら屋台の数が少なくてな。かき氷やチョコバナナ、あとは焼きそばとか……くじ屋もあったな」

「お祭りと言ったらこれ、というものばかりですね」

「ああ、その時は物足りないと思っていたが……こうして思い出してみると、また行きたくなるぜ」


 行きたいと思っても、もう『あっち』には戻れません。

 それを理解しているから、ディアスさんも当時のことを懐かしんでいるのでしょう。


「良ければ、ディアスさんもお祭りに行きますか? 向こうのものとは別物だと思いますが、お祭りの雰囲気は同じだと思いますよ?」

「お気遣いどーも。その誘いは嬉しいが、リーフィアやアカネが城を空けるからな。うちの魔王様も行きそうだし、俺が城を守らねぇとな。ヴィエラも同じだろう」


 祭りと言っても、数日空ける程度です。

 それなら城に仕えている他の人達に任せてもいいんじゃないかと思うのですが、楽観視しすぎなのでしょうか?




「よし! では、全員で行くぞ!」




「「ん?」」


 執務室に響いた魔王の声。

 私とディアスさんは、顔を見合わせて首を傾げます。


 今、ミリアさんは……なんて?


 何がどうしてそうなったのかと説明を求めると、ヴィエラさんは困ったように苦笑を浮かべました。


「ミリア様が居なくなると仕事が滞る。共に居た方が効率も良いと言ったら、『だったら一緒に行きながら仕事をすればいいだろう』って……困った人だよ」

「かなりの暴論ですね」


 一人で行くのがダメなら、みんなで行っちゃえばいい。

 そこで仕事を……というのはただの口実でしょう。


「いいのではないか?」


 それまで黙って事を見守っていたアカネが、重々しい口を開きました。


「折角の機会じゃ。妾たちが居なくとも城は機能する。たまには羽目を外しても良いのではないか?」


 ヴィエラさんは、言うなれば仕事魔人です。

 常に仕事のことを考えて、休むこと自体が珍しいと周りから心配されるほどの社畜です。

 ……まぁ、この場合は自ら望んで社畜になっているので、過去の私とは少し違うのでしょうが。それでも元社畜としては「うわぁ」と思う場面を見かけます。


 アカネの言う通り、たまには休んでいいと思います。


「でも、急な問題対処のためにも」

「こちらにはシルフィードがいます。力を借りれば一瞬で城に戻ることも可能ですよ」

「……この書類の山を持って行くのは」

「私の【マジックボックス】を使っていいですよ。この100倍は持っていけます」

「…………馬車に全員乗らないだろう?」

「ウンディーネとシルフィードは馬車に乗らなくても大丈夫です。私は後ろから空飛ぶ絨毯で付いていくので、他の四人が乗ってください」



 あれ? 私ってば万能?

 …………はい。調子に乗りました。




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