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精霊からのお誘いです




 火を司る原初の精霊【イフリート】。

 その方の来訪があって魔王城の一部は騒然としていましたが、少し経てば落ち着きを取り戻し、徐々に平常運転に戻っていきました。


 私も愛しのベッドちゃんを解凍し、シルフィードに手伝ってもらいながら乾燥させたことで、ようやく落ち着いてそこに腰を下ろすことができました。……ふぅ。やっぱり私の居場所はここ以外にありえませんねぇ。


「…………そういえば」


 シルフィードに声を掛けます。

 彼女は部屋の中をプカプカと自由気ままに浮かんでいました。あれのどこが楽しいのかわかりませんが、暇つぶしに何処かへ行く様子はありません。

 精霊曰く、私の近くにいると居心地が良いのだとか。

 おそらく私が持つ何らかのスキルが関係しているのでしょう。まぁ睡眠の邪魔をしなければ良いやと放ったらかしにしていますが、よくよく思えば原初の精霊が二人いるって凄い状況ですよね。


 とまぁ、それはさておき。


「シルフィは私に何か用があったのではありませんか?」


 イフリートさんの話を遮って部屋の侵入して来た彼女は、何かを伝えに来た様子でした。

 色々とあって忘れていましたが、今ようやく思い出しました。


『あー! あれね、私も忘れていたわ。危ない危ない。ここに来た意味が無くなるところだったわ』


 本人も忘れてたんかい。と、内心ツッコミます。


『クレリース王国は知っているかしら? そこで年に一度、大きなお祭りがあるのよ。良ければみんな一緒に行きたいなと思ったのだけれど……どうかしら?』


 クレリース王国……はて、聞いたことがありませんね。


「オルリス大陸北部にある国じゃな。祭りは『精霊祭』のことか?」

『そうそう! その祭りのことよ! 流石はアカネ。博識ね!』


 と、私の横で休憩中のアカネさんが教えてくれました。


 精霊祭。

 いかにもシルフィードが興味を持ちそうな名前ですね。


「どういったお祭りなのですか? 精霊に関係するお祭りというのは分かりますが……」

「精霊の祝福に感謝の意を捧げると共に、今年も豊穣を願う祭りじゃな。国を挙げての行事じゃ。興味を持った精霊が多く集まり、それを一目見ようと各国から人がやって来るらしい」


 精霊を見たくて、わざわざ他国まで……。


「一応言っておくが、精霊とは本来、滅多に人前に出てこないのじゃ。もちろん人の土地にも精霊は存在しているが、普段は姿を隠している。生きているうちに一度でもその姿を見れたら、運が良いほうなのではないか? 常に精霊に囲まれているリーフィアが特別なのじゃよ」

「へぇー、そうなんですか。では、ウンディーネは私にとっての幸運ですね。いつも側にいてくれますし、こんなに尽くしてくれるのですから」

『……えへへ。うちも、リーフィアと居られるのは、幸せだよ?』

「可愛いことを言ってくれますね」


 お返しに頬を突ついてやれば、きゃーと可愛い悲鳴をあげながらウンディーネは布団に潜りました。


「…………むぅ……」


 その様子を、面白くなさそうに見つめるアカネさん。

 あらら、嫉妬しちゃったみたいですね。


「っ、違うぞ! 四六時中イチャイチャして、節操が無いなと思っただけじゃ!」

「へぇー?」

「な、なんじゃ……その目は」

「いや別にぃ? アカネはイチャイチャがお嫌いなようですし、これからは夜の方も控えめにしたほうが」

「すまぬ! 羨ましいと思っていただけじゃ! 謝るから、それだけはやめてくれ!」


 ついには半泣きになるアカネさん。

 ……そんなに嫌でしたか。


「嘘ですよ。少し意地悪をしただけです。本意ではありません」


 両手を広げると、恥ずかしそうにしながら抱き返してくれました。

 まだこの関係に慣れていないアカネさんを見るのは、ウブな乙女を見ているような感覚になってしまい、自然と顔が綻んでしまいます。


 ────っと、随分と本題から脱線してしまいましたね。


 置いてけぼりになったシルフィードの頬が膨れて、すごく面白いことになっています。これ以上は破裂しそうなので、そろそろ話を戻すとしましょう。


「それで、シルフィードはその精霊祭とやらに行きたいのですか?」

『そうなのよ! 久しぶりに会いたい子もいるし、どうせならリーフィアもどうかなと思って。その時だけ、世界中の精霊が集まるのよ?』


 世界中の精霊が。

 それは面白そうですね。


『精霊たちもリーフィアのことを気に入ると思うわ。私たちがそうなんですもの。きっと、力になってくれるはずよ!』


 精霊たちに囲まれる図を想像して、思わず顔が引きつりました。

 ウンディーネやシルフィードのような形を保っている精霊は珍しいです。ほとんどは光の球体のような形をしていて、周囲を浮かんでいるだけです。それに囲まれた私は……そう。まるで発光体ですね。


 まぁ、そもそもが他の人に見えない精霊なので、恥ずかしいのは私だけですけれど……。


『リーフィアは、渡さないもん……』


 ぎゅっと裾を掴まれました。

 あなたの眷属にまで嫉妬してどうする……と呆れつつ、可愛いやつめと頭を撫でます。


「安心してください。私が契約するのはウンディーネだけです。他の精霊には協力してもらうかもしれませんが、契約は絶対にしませんよ」


 本音を言えば、ウンディーネだけを頼りにしたいのですが、それでは彼女への負担が問題になってしまいます。大丈夫だと言ってくれそうですが、私がそれを許せません。

 なので、少しでもウンディーネが楽になるのであれば、私は他の精霊との協力を惜しみません。


『リーフィア……っ、うん!』


 と、いうわけでウンディーネからはお許しをもらえました。


「後はアカネと……ミリアさんですかね。勝手に行ったら怒られそうです」

「妾も構わないぞ。今は特別仕事も忙しくないからな。祭りに行く程度なら問題ない」


 アカネさんも乗り気です。

 であれば明日、お祭りのことを皆さんに相談しに行きましょう。


 ……まぁ、あの人なら二つ返事で「行く!」と言いそうですけどね。




お知らせ。

近々、新作を投稿したいなと思っています。


お楽しみに、です!

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